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マリア・カラスに導かれてイタリアオペラを聴く

 私はずっとイタリアオペラを避けてきた。

 高校生のころ(つまり、40年以上昔のこと!)には、多少聴いた。多感な少年だった私は、サンティ指揮、マリア・カラスの歌う『椿姫』全曲盤を涙を流しながら聴いていた。『セヴィリアの理髪師』も大好きだった。が、その後、『蝶々夫人』と『ラ・ボエーム』を聴いて、あまりのつまらなさにあきれた。その後、モーツァルト、ベートーヴェン、ワーグナー、リヒャルト・シュトラウス、ベルクなどのドイツオペラ、そして、チャイコフスキーやヤナーチェクやプロコフィエフなどのスラブ系のオペラをこよなく愛するようになったが、イタリアオペラは聴けなかった。

 愛だ恋だと大騒ぎするストーリーにまず辟易する。感情をこめて恋を歌うのも、うんざりする。そして、台本の不自然さ、オーケストレーションの下手くそさ! あまりに大袈裟な演技と歌は、見ていて恥ずかしくなる。そもそも、ドイツオペラのような思想性も観念性もない。薄っぺらな娯楽音楽と思っていた。

 ところが、最近、多少なりと音楽の仕事をするようになった。音楽関係の本を書いたり、コンサートを監修したり、CDを企画したり。オペラ歌手とも知り合うようになった。しかも、しばしば「オペラ通の樋口」と紹介される。それなのに、「イタリアオペラはまったく知りません」で通すわけにはいかない。仕方なく、イタリアオペラも聴くようになった。

 まだプッチーニは聴けない。マーラーほど嫌いではないが、情緒的な音楽にいらいらする。が、ヴェルディ、ロッシーニ、ベッリーニ、マスカーニ、レオンカヴァルロに関しては、ときに感動するようになった。まだまだドイツオペラほどの深い感動を覚えるわけではないが、音楽に酔っている自分を発見してしまう。ネトレプコやデセーやゲオルギュー(考えてみると、みんな美人ソプラノだ! 男たるもの、いくら歳を経ても、美人に弱い!)に導かれて、イタリアオペラに分け入るようになっている。私はかなり凝り性のほうなので、昔からのイタリアオペラ好きに負けないくらいの映像ソフトを見たのではないかと思う。

 このところ、マリア・カラスのCDを大量に入手して、少しずつ聴いている。さすがに凄い! ベッリーニの『清教徒』と『ノルマ』を聴いた。ストーリーの不自然さとベッリーニのオーケストレーションの拙さにはさすがに参るが、アリアの高貴さ、その美しい旋律にはぞっとするような感動を覚える瞬間がある。

 とりわけ、カラスが歌うとリアルになる。プロではないので、理由をきちんと分析できないが、カラスが登場した途端、舞台が張り詰め、それまで少し遠くに存在していたものが突如としてクローズアップされ、現実味を帯び、凛と張り詰めた空気が漂ってくる。そして、モノラルの貧弱な音なのに、まるで生身の人間が目の前にいるかのような錯覚にとらわれる。

 そうか、イタリアオペラが好きな人は、この感覚が好きだったのか! と納得。高校生のころ、プッチーニの聴き始めにカラスのレコードを買っていれば、もしかしたら、私の音楽の嗜好はまったく違った方向に進んだかもしれない。

 このところ、ずっと原稿を書いている。その合間に、出版社の方との打ち合わせ、大学の仕事などが入る。原稿が進んでいると、どうしてもブログに文章を書く時間は少なくなる。

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