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気品と人間味に溢れるルイージの『英雄の生涯』

 私は、昨年のドレスデン歌劇場の『ばらの騎士』でいっぺんにファビオ・ルイージのファンになった。CDも何枚か買ったが、どれも気に入った。そこで、今回、サントリーホールで、ファビオ・ルイージ指揮、ドレスデン・シュターツカペレの『ドン・ファン』『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』『英雄の生涯』(アンコールに『オベロン』序曲)に出向いた。

『ばらの騎士』同様、素晴らしかった。

『ドン・ファン』は、ややもたれ気味。決まるべきところで決まらなかった。「やや不調かな」と思ったが、『ティル』以降は快調。『英雄の生涯』はひたすら感動! 完全にコントロールされながらも、音楽の自由さを失わない。

 ドレスデン・シュターツカペラがまず素晴らしい。チューニングのオーボエの音に、まず驚いた。何と潤いのある音であることか! そして、ルイージの指揮が、まさにドレスデン・シュターツカペレにぴったり。しなやかで、気品に溢れている。鳴らすべきところは十分に鳴らすが、決して下品に響かない。知的に抑制され、音楽の喜びに満ちている。ふくよかで、深い人間性がにじみ出る。

 かつてジェフリー・テイトのシュトラウスのCD(『アラベラ』と『町人貴族』)を聴いた時、同じような印象を受けた。育ちの良さ、品性の高貴さが音に表れている。(それにしても、テイトの噂をとんと聞かなくなったが、元気にしているのだろうか?)

 私は40年来のシュトラウス・ファンだが、実は交響詩はあまり好きではない。中学生のころから、『ばらの騎士』や『サロメ』や『四つの最後の歌』に夢中だったが、交響詩は底の浅さを感じてしまう。だが、ルイージの『英雄の生涯』を聴くと、人間的な深い感情にあふれていることを痛感する。

 ただ、シュトラウスはもう少し下品で卑俗なところがあっていいのではないかと思わないでもない。その点で、多少欲求不満が残る。ほんの少し、羽目をはずして下品になったら、もっと凄みが増すと思うのだが、そうならないのがルイージの持ち味なのだろう。

 同じことが、『オベロン』序曲にも言える。洗練された都会的なウェーバー! もう少しドイツの森を思わせるような田舎臭さがあってよいような気がするが、あくまでも古都ドレスデンを思わせる。

『英雄の生涯』は、静かに終わるバージョン。これはこれでよかったのだが、静かに終わっている時に大きな声で咳をする客がいて、雰囲気がぶち壊しになった。「ここで咳をするくらいなら、息を止めて死んでしまえ!」と数年前までの私なら思っただろうが、さすがに今の年齢になると、そうは思わなくなった。が、あの咳は我慢してほしかった!

 ともあれ、大きな感動を抱いて、帰った。

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