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『リゴレット』DVDのヌッチの気迫が凄まじい!

 腰痛と肩凝りがひどくなって、原稿を書くのが辛くなると、マッサージ機に座ってDVDオペラを一幕ずつ見ている。そのおかげで、このところかなりのDVDを見ることができた。つまり、原稿もそれなりに進み、腰痛と肩凝りもひどいということにほかならない・・・

 DENONの廉価版オペラDVDのシリーズのヴェルディ作曲のオペラを3本。

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『イル・トロヴァトーレ』

 実は、かなり苦手なオペラ。カラヤン+ドミンゴ、ウィーン国立歌劇場の伝説的な名演だが、やはり私はオペラそのもののメチャクチャなストーリーに耐えられない。

 

 不自然な展開にいちいち突っ込みを入れたくなる。「敵の赤ん坊を殺そうとして、間違えて、自分の子どもを殺してしまっただって? いくらなんでもそりゃないだろ!」「息子とされている男に、そんなことを言えば、〈お前は私の息子でなく、敵の子供だ〉と告白しているに等しいはずなのに、なぜ、そんなことを言うのか? しかも、それを聞いた息子が、自分が敵の子だと気づかずにいるとは、一体、この二人はどういう頭の構造をしているのか!」と、どうしても思ってしまって、何度CDを聴いても、DVDを見ても、鑑賞するどころではなくなる。これでは、どんなに立派な演奏をされても、ドラマにリアリティを感じることができない。

 

 私がイタリア・オペラに長い間馴染めなかった理由が、ここに詰まっている。私がドイツ系のオペラを好むのは、音楽的な理由からだけでなく、文学的な理由もあるのだと、これを見ると納得する。

 とはいえ、壮麗で繊細で豊かな音楽の絨毯は見事。カラヤンとドミンゴはもちろん、アズチェーナを歌うコッソットも、フェランド役のヨセ・ファン・ダムも素晴らしい。ストーリーに対するわだかまりさえなければ、楽しめるはずなのだけど・・・

 

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『椿姫』 ドミンゴ指揮、ゼフィレッリ演出。アルトゥーロ・トスカニーニ財団管弦楽団・合唱団の上演。

 先日、このブログであまり演奏をけなしたくないと書いたばかりだが、このDVDについては、けなしたい衝動に駆られる。

 もちろん、よいところはある。同じゼフィレッリ演出のオペラ映画(ドミンゴがアルフレートを歌い、ストラータスがヴィオレッタを歌った)もよかったが、これも見事。オペラ全体を瀕死のヴィオレッタの回想とみなすという発想は素晴らしい。すべての場面が絵になっている。ステファニア・ボンファデッリも美しい。

 

 が、音楽的にはかなりお粗末。ボンファデッリは容姿こそネトレプコやゲオルギューに匹敵するが、歌唱に関しては、表現力も声もこの二人、そして、ゼフィレッリ演出の映画でヴィオレッタを歌っているストラータスよりもかなり劣る。細かい処理がザツだし、声も出ていない。

 

 ジョルジュを歌うベテランのブルゾンも声がかすれ気味で、音程が不安定になる。アルフレートを歌うスコット・パイパーにいたっては、なぜ抜擢されたのか理解に苦しむ。音程もあやしいし、表現も声も容姿も演技力も優れているとは思えない。そして、ドミンゴの指揮も、やはり歌手の素人芸の域を超えていない。音楽を引っ張っていない。逆説的ながら、イタリア・オペラでも指揮者は大事な存在なのだと再認識させられる。もっとも、ドミンゴはこのあと、指揮者としてキャリアを積んでいるはずなので、今ではもっとよい指揮者になっているだろうが。

 

 これは、演出を見せたいために、音楽面を軽視した上演と考えるべきだろう。音楽ファンとしては、これはかなり悲しい。

 

 

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『リゴレット』。ヴィオッティ指揮、シャルル・ルボー演出。アレーナ・ディ・ヴェローナ上演。

 ジルダを歌うインヴァ・ムーラも素晴らしい。可憐で美しい。高音も見事! マントヴァ公爵を歌うアキレス・マチャードも、ちょっとライヴならでは失敗もなくはないが、このくらい歌ってくれれば文句はない。ただ、この人、どう見ても色男の貴族の風貌でないのが辛いけれど。むしろ、「農夫 その3」といった役柄にふさわしい風貌だ。

 しかし、本当に凄いのは、リゴレットを歌うレオ・ヌッチ。ただただ圧倒されるのみ。声の威力、声の表現力もさることながら、存在感、そして演技力、気迫が凄まじい。リゴレットの怒りと憎しみと悔恨が乗り移ったかのようだ。ヌッチの力で、少々不自然なストーリーも気にならなくなる。芸達者というレベルを超えて凄まじい。指揮のヴィオッティも見事。「悪魔も、鬼め」のオーケストラの迫力には、ちょっと驚いた。

 このような上演を見ると、イタリア・オペラに酔うことの意味がよくわかる。アリアや二重唱のあとに拍手喝采をしたくなる。これを実演でみたら、病み付きになることだろう。

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