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5月4日(2日目)ラ・フォル・ジュルネ報告

 今日は8つのコンサートを聴いた。昨日とあわせて、17ということになる。メモ代わりに感想を書いておく。

・カントロフ指揮、シンフォニア・ヴァルソヴィアでブランデンブルク3番。村冶佳織のギターが加わって、チェンバロ協奏曲2番と5番(そういえば、曲目変更があったような?)。

 実は私は鍵盤楽器をほとんど聴かないので、チェンバロ協奏曲も詳しくない。コープマンのCD4枚組みをかつて何度か聴いたくらい。ギターで演奏されると、別の曲に思える。速い楽章では物足りないが、第二楽章などの緩徐楽章は実にいい味が出る。が、そのくらいしかわからない。が、ともあれ、とても満足した。

・リチェルカール・コンソート、フィリップ・ピエルロの指揮で、ミサ曲ト短調とマニフィカート。本当にすばらしい! ナントでも聴いたが、改めて聴きたくなった。祈りの心にあふれている。柔らかい音、心の奥に染み入る音楽。歌手もみんないい。とりわけ、ソプラノのマリア・ジェオハネ、バスのステファン・マクラウドがすばらしい。最高の演奏だと思った! ピエルロは、さえないおじさんに見えるが、どうしてどうして、凄い人だ!しばらく感動に浸っていた。

・鈴木雅明指揮、バッハ・コレギウム・ジャパンで、カンタータ78「イエスよ、わが魂を」、30「喜べ、救われし群れよ」。ソプラノはミールズ。バスは前の回と同じマクラウド。これも大変よかった。バッハ・コレギウム・ジャパンの演奏は、コルボの演奏と同じで、オケと合唱はすばらしいが、しばしば独唱が弱い。が、今回の演奏は、独唱陣がしっかりしているので、安心して聴ける。歌手さえよければ、世界最高レベルの演奏をする団体だ。

・ピエール・アンタイの指揮、ル・コンセール・フランセでカンタータ33番「ただ汝一人に、主イエス・キリストよ」と93番「ただ愛する神の摂理に任せ」。キャサリン・フーグをはじめとする歌手も見事。全体的にとてもよい演奏。ただ、私の感銘度は高くない。音楽的には見事だが、祈りの心がない。カンタータは、もっと祈りの心がほしい。その点、リチェルカール・コンソートのほうがずっと感動する。

 ところで、ル・コンセール・フランセとリチェルカール・コンソートのメンバーがダブっているのは、なぜだろう。東京公演のみの特別なことなのか? 非常に気になって、事情通の数人に聞いてみたが、わからないとの答えだった。

・ヘンドリックスのソプラノ。テンスタムのメゾソプラノ、ドロットニングホルム・バロック・アンサンブル。ペルゴレージの「スターバト・マーテル」。

 大喝采を浴びていたが、私はやや疑問符をつける。やはりこれも、リチェルカール・コンソートのCDなどと比べると、祈りの心に欠けている。それに、ヴィブラートの強いヘンドリクスの声に、私はかなり違和感を覚える。黒人霊歌にふさわしい声だ(もちろん、これは人種差別ではない)! ヘンドリクスはかなり前に声を失った。その後、「語り」調の歌唱法を身につけて乗り切ろうとしているように見える。シューベルトなどでは時々成功するが、ペルゴレージには無理があるように思える。 悪くはないが、心の底からは感動できなかった。オケも、もう少しペルゴレージの深いところを表現してほしいと思った。

・イド・バル=シャイのパルティータ1番と、フランス風序曲ロ短調。私の好きな演目がなく、ぶらぶらする場所もないので、大変失礼ながら、時間つぶしに聴いた。なかなかよかった。かなり自由に弾いている。こんなバッハもあっていい。あまり知らない曲なので(鍵盤曲は、実はほとんど知らない!)、むしろ自由に楽しめた。

・堤剛の無伴奏チェロ組曲1・4番。

 実は、先日出たCDを聴いて退屈だった。だから、本番でも退屈なのではないかと心配していた。が、ナマで聴くと、まったくそんなことはない。地味で、観客を唸らせるような工夫のまったくないチェロだが、それが実にいい。本当に魂の奥底から演奏している素直な音楽だということがよくわかる。まったく誇張がない。しかし、音楽に人生が反映しているのを感じる。聴いているうち、「ああ、この人は、若いころから脚光を浴びて順風満帆の人生に見えるけれど、それなりに苦しいことがあったんだなあ」と思った。人生の苦渋のようなものが聞えてきた。これもバッハの音楽に特有の現象だ。アンコールに無伴奏組曲6番のガヴォット。あまりに地味なコンサートにしたことを反省したのか、外面的な音楽をあえて作ってくれた。これもおもしろかった。

・鈴木雅明指揮、バッハ・コレギウム・ジャパンで「ヨハネ受難曲」。ひとことでいって、とてもよかった。オケと合唱がすばらしい。独唱は、ソプラノのドロテー・ミールズとバスの枕独活がすばらしいが、あとはちょっと弱い。が、これだけ歌ってくれれば、十分に感動する。昨日同様、満足してホテルに戻った。

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コメント

樋口先生こんにちは 
先生の2日目は合唱曲三昧でいらしたのですね。
自分は2つしか行ってないのですが、全て鍵盤曲でした。
自分はミサ曲は、全くと言っていい程聴いた事ありません。
本日、バッハ・コレギウム・ジャパンもしくはリチェルカール・コンソートのCDをバッハ市場でチェックしてみます (^^

投稿: しの | 2009年5月 5日 (火) 09時45分

前略、「読ませるブログ」を拝読させて頂きました、当方本年初めより主にバラに関するブログを開設し、その運用方法を迷っていましたが、新書を大いに参考とさせて頂きます、大変に参考となりました。ブログのシステム的解説本は巷にたくさんありますが、ブログをどのように運用するか、皆さんはどのように運営されているか等の本は見あたらず、手探り状態にあります、ご多忙と思いますが当方ブログも機会あれば是非お立ち寄り下さい http://kekesrose.exblog.jp/
目黒区駒場 原口武夫 54才

投稿: keke | 2009年5月 5日 (火) 20時19分

初めまして。3か月ぐらい前から、山尾敦史さんのページを経由してこのブログを読むようになりました。
この日(5月4日)、わたしもル・コンセール・フランセとリチェルカーレ・コンソートを聴いたのですが、まったく同感です。前者はなかなかいい演奏であったにもかかわらず、感銘を受けなかったし、後者には「祈りの心」が感じられました。わたしがおぼろげに思ったことを、樋口さんが言葉にしてくださっていたので、うれしくなって思わずコメントをお送りしてしまいました。

投稿: にいく | 2009年5月 6日 (水) 09時53分

しの様
先ほど、ラ・フォル・ジュルネ、そして三越での仕事から帰って、一息ついたところです。
リチェルカール・コンソート、是非お聴きになってください。バッハもすべていいのですが、ペルゴレージの「スターバト・マーテル」が特におすすめです。
私も鍵盤を聞こうと思っています。みんながシャオメイをほめていましたので、CDを買ってみようかと思っているところです。

投稿: 樋口裕一 | 2009年5月 6日 (水) 23時27分

原口武夫様・イソップ様

申し訳ありません。くたくたに疲れて帰ってきて、明日の準備もしなければなりません。ブログをじっくり見ている時間ができません。明日も、大学の授業のあと、打ち合わせをして、その後、新国立劇場でオペラを見ますので、時間を作れません。しばらくして、ブログを拝見します。少しお待ちください。

投稿: 樋口裕一 | 2009年5月 6日 (水) 23時31分

にいく様

コメントありがとうございます。
そういっていただけると、ブログを書いてよかったとつくづく思います。
実は、リチェルカールのCDを、何枚か買いました。どれも素晴らしくて、感動しています。ヴィヴァルディの「スターバト・マーテル」も、ブクステフーデのカンタータもとても良い演奏でした。私もバロック好きの仲間入りをしそうです。

投稿: 樋口裕一 | 2009年5月 6日 (水) 23時35分

樋口先生
リチェルカール・コンソートのおすすめの盤を教えていただき、ありがとうございました。
自分は5日、何を買うか迷いに迷って "LFJ2006"のタイトル付きのバッハとヘンデルのを試しに購入していました。
ペルゴレージの「スターバト・マーテル」、on-lineで見つけたので購入して聴いてみます。(「スターバト・マーテル」ってなんだろうと思ったら、Wikiに解説があって、すぐに検索できるとこはいい世の中だな〜と思いました。)

余談ですが、Rockの世界でもクリスチャンミュージックなるものがあるので、バロックの時代でも、今の時代でも、キリストに関する歌は作られ続けているんだなあと、思いました。

投稿: しの | 2009年5月 7日 (木) 21時59分

コレギウムジャパンのことを書かれていますが、ソプラノのドロティエ・ミールズさんは変更にならなかったのでしょうか!? 変更の案内が出ていたのでチケットを全日分、知らない人に上げてしまいました! その分コルボの当日券を買って聴き、全部満足したので良かったのですが、、。 
彼女は一時期、ヘンゲルブロックのバルタザール・ノイマンでハンス・イェルク・マンメルさんと一緒でした。カンタータBWV4でのデュエットの素晴らしさは今回のリチェルカール・コンソートにも譲れません。独立性の強い各声部が強力に調和するコーラスや男性アルトの温かい表情と謙虚な弦も魅力です。「バッハ力」とはこういうこと。なんて、、。
次のアルバムに入っていて、銀座山野楽器と秋葉原石丸ソフト館で1900円くらいです。

トーマス・ヘンゲルブロック指揮 バルタザール・ノイマン 《バッハの書庫から》2005ヘンスラー 

 (Aus der Notenbibliothek von J.S.Bach   SWR hänssler classic )

一度聴いてみていただきたいと、これは切にお願いします。リチェルカールのところで書いた「抑制」の意味を多少ご理解いただけると思います。
ご無礼をお許しください。


投稿: ミサ・ヴレヴィス | 2009年5月25日 (月) 00時29分

ミサ・ヴレヴィス様
(「ミサ.ブレヴィス」さんと同じ方ですよね?)
ごめんなさい。ソプラノ、変更になっていたんですか?
気づきませんでした。プログラムを見て、歌手の名前を書きましたので、私のミスだと思います。
お勧めのCD、さっそく購入します。

投稿: 樋口裕一 | 2009年5月26日 (火) 09時37分

せっかちなものですみません、ミサ・ブレヴィスと名乗るはずの者のでした。

お詫びのつもりで「チケットぴあ」を調べたところ、ソプラノは《 レイチェル・ニコルズ 》に変わっていました。
かなり直前の変更だったと思います。それにしても、演奏者とか曲目の変更はもう少し分かりやすくしてもらいたいものです。ピエール・アンタイ指揮のカンタータの時も、曲目変更を知らないで歌詞のプリントを探すそぶりの人が周りにいました。
となると樋口先生が気に入ったコレギウム・ジャパンのソプラノはドロティエ・ミールズさんではないのですが、機会がありましたらどうか聴いてみてください。

投稿: ミサ.ブレヴィス | 2009年5月26日 (火) 23時30分

ミサ.ブレヴィス 様
新しい情報、ありがとうございます。
私は、オペラ歌手はかなり追っかけていますが、とりわけバロック系の歌手には疎いもので、大変失礼しました。
昨日、お勧めいただいたCDは、さっそくインターネットで注文しました。
(ネットでの支払いができなかったので問い合わせたら、カードが不正使用されて使用制限がかかっていました。事なきを得ましたが、もし気づかずにいたら、外でカードを使用できずに大変なことになるところでした。これについても、ミサ.ブレヴィスさんに感謝!)

投稿: 樋口裕一 | 2009年5月27日 (水) 10時21分

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