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ネマニャ・ラドゥロヴィチの「対話する」ヴァイオリンが圧倒的!

 いよいよ、明日からフォル・ジュルネ・オ・ジャポンが始まる。子どものようにわくわくしている。今晩ホテルに入って、泊り込んで、朝から夜中まで音楽三昧ということになる。今のところ、24のコンサートを予定している。

 私はこの音楽祭の「アンバサダー」ということになっているので、昨晩は前夜祭に出席。レセプションで、この音楽祭のおかげで知り合いになった音楽関係の方々と話をし、かなりおいしい食事をつついた後、スペシャルコンサートを聴いた。

 プログラムの前半は、これまでのラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンを振り返るということで、ベートーヴェンの「運命」の第一楽章、モーツァルトの協奏交響曲の第一楽章、ドヴォルザークの「新世界」の第四楽章、シューベルトの「未完成」の第二楽章を、すべて小泉和裕指揮の東京都交響楽団で。

 楽章ごとに少しずつというのは、演奏家にとっても気合が入らないだろう。残念ながら、名演奏といえるものではなかった。とりわけ、協奏交響曲はリハーサル不足がありあり。

 後半はカントロフの指揮するシンフォニア・ヴァルソヴィアの演奏で、今年の演目から2曲演奏された。前半と打って変わって、ぴしりとしまった演奏。指揮者としてのカントロフもなかなかのものだ。ネマニャやシュポルツルといった若手ヴァイオリニストと共演すると、ヴァイオリニストとして対抗心が生まれるのではないかと思うのだが、そうでもないのだろうか。

 まず、ネマニャ・ラドゥロヴィチのヴァイオリンによるヴァヴァルディの「四季」のなかの「春」と「夏」。圧倒的! 相変わらずの、ものすごい演奏! 感情の起伏の激しい、メリハリの激しい音楽なのだが、そのような演奏をするほかの演奏家たちと違って音楽の本質をぐさりと刺してくる。まさしく、観客と対話し、音楽と対話し、共演者と対話しながら、音楽を作っていくのがよくわかる。彼の場合、小ホールでも細かいニュアンスが伝わるが、大ホールでも大きな身振りの音楽が十分に伝わる。

 最後に、ヴァイオリストがシュポルツルに交代して、バッハのヴァイオリン協奏曲ホ長調。これも見事な演奏。ただ、彼は小ホール向きなのではないかと思った。ナントで聴いた時のような鋭くて細かいニュアンスが、5000人以上入る東京国際フォーラムのAホールでは伝わらない。大ホールで聴くと、当たり前の名演奏に聴こえる。3日からの本番では、小ホールでの演奏を聴きたい。

 ともあれ、後半の演奏は素晴らしいものだった。

 明日からの本番が楽しみだ。ナントで聴いて感動した演奏ももう一度聴きたい、ナントではコンサートが重なったために聴けなかった演奏も聴きたい、日本でしかやらないコンサートも聴きたい。マタイやヨハネやロ短調ミサなどの長大なものも聞き逃せないし、同じ時間帯に行われる小ホールのものにも気が引かれる。そう思うと、またまた今年も苦渋の選択の連続になってしまった。

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コメント

初めまして。
「ネマニャ」で検索をかけてこちらに伺いました。

私も昨晩、前夜祭コンサートを聞きました。
実を言うとシュポルツルと青いヴァイオリンが
お目当てだったのですが、
ネマニャの演奏にノックアウトされてしまいました。
あんなヴィヴァルディの「春・夏」は
今まで聞いたことがありません~!

…というよりも、クラシックは初心者なのです。
普段は中東やヨーロッパ系のロックばかり聞いているので…。

ネマニャが忘れられない一方、
期待していたシュポルツルの凄さが分からない自分が
悔しかったという想いもありました。
以前にCDで試聴した時は、感動したのに…。

でも、こちらのブログで妙に納得。
「当たり前の名演奏」という言葉にもホッ(?)
小ホールの公演のチケットが手に入れられなかったのが
返す返すも残念です。

ぜひ、シュポルツルの小ホールでの感想をお願い致します!
樋口さんの評価を伺いたいです♪

PS. 素人ながら生意気にも、昨夜の都響の演奏に対して
「こんなもんなの?」と思っていました。
こちらでの評価に、案外、自分の耳と感覚を
信じてもいいんだなと一安心(?)しちゃいました。

投稿: あずみ | 2009年5月 2日 (土) 17時23分

あずみさん
コメント、ありがとうございました。
シュポルツルは、ナントで聴きましたが、すばらしい演奏でした。1月末から2月はじめにかけてのナントの報告の中に書いています。ただ、正統派の演奏ですから、ネマニャの後ですと、どうしても地味に聞こえてしまいますね。
明日、すぐにネマニャとシュポルツルを立て続けにB7で聴きます。このブログで報告させていただきます。
あずみさんは、クラシック初心者といいながら、かなりの耳を持っておられるようですね。

投稿: 樋口裕一 | 2009年5月 3日 (日) 00時02分

樋口先生 はじめまして こんにちは

自分も友人誘って前夜祭行きました。
初めてネマニャの演奏を体験したのですが、彼の演奏にものすごく感動しました。
いままでウン十年生きてて、本当に数える程しかクラッシックコンサートを
聴きに行ったことはありませんが、こんなにも心揺さぶられたのは初めてでした。
彼のバイオリンとオケの音とのあの一体感はやみつきになります。
友人も同意見でした。

残念ながら自分は今年のラ・フォルのネマニャの公演のチケは手に入れる事が
できなかったので、先生のブログでのご報告をお待ちしております。

投稿: しの | 2009年5月 3日 (日) 13時38分

しの様
コメントありがとうございます。
ネマニャ、ものすごい演奏でした。
感動しました!
ブログに書きましたので、よかったらご覧になってください。
そして、今後、ぜひクラシックを聞いてください。すばらしい作曲家や演奏家がたくさんいます。必ず感動します!

投稿: 樋口裕一 | 2009年5月 4日 (月) 00時34分

熱狂の日アンバサダーの樋口先生へのお願い

年々、熱狂の日チケット争奪フィーヴァーは、たいへんなものになりつつあります。

わたしとしては、「当日フラッと出かけて聴けるコンサート」であってほしいのです。(というか、たしか最初の年あたりは、当日券購入に何回も並んでチケットをゲットできた記憶があります)。

前もって予定が組めない人たちのために、どのプログラムにも当日売りを1割とか残しておいていただくことは無理なのでしょうか?(もちろんホールAで1割残したらたいへんでしょうから、そのへんはケースバイケースで…)。

たまたま行った人が聴けるコンサートがない、というのはかなり残念だと思います。
無料のイヴェントについても、現状では半券があることが条件になっていますので、チケットを持っていない人はほとんど参加不可能な状況になっています。

ナントの状況をまったく知らずに書いていることをお許しください。


投稿: oedipa(エディパ) | 2009年5月 5日 (火) 01時48分

エディバ様

おっしゃるとおりだと思います。ナントでは、当日券が用意されています。それが、ラ・フォル・ジュルネのあるべき姿だと思います。東京でもそれを踏襲するはずだったのですが、きっと、あまりの売れ行きと、観客からの要求で、当日券の分まで前売りにまわしたのでしょう。
人口30万人くらい(だったかな?)のナントと大都市東京との違いをどうするべきか、大きな問題です。
いずれにせよ、反省材料として関係者の間で問題になると思います。私も機会があったら、話をしようと思います。

投稿: 樋口裕一 | 2009年5月 5日 (火) 08時34分

昨夜、コンサート会場からトイレへ行く道を探してキョロキョロしていたら、親切な方がテキパキと教えてくださったのですが、その方も一日8公演とか11公演とかおっしゃっていました。(トイレの位置にも熟知していらっしゃるはずですね)。

わたし自身もそこまでではありませんが、なんか常連の買い占め状態になっているようで、ちょっと気が引けてしまいますね。

多くの方が楽しめるようなあり方が本来の姿、と樋口先生がおっしゃるように、ぜひすべての公演に当日枠を設けていただけたらと思います。
ありがとうございました。

投稿: エディパ | 2009年5月 5日 (火) 09時05分

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