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月面着陸から40年後も家でオペラを楽しんでいる!

 アメリカのアームストロング船長の月面着陸から40年だという。

 40年前のあの日のことはよく覚えている。私は高校3年生だった。私の高校では、大学入試のための全国模試が行われていた(40年前にも模試があった。ただし、九州では、ほとんど一回だけ高校内で全員まとまって受験するのが当然だった)。受験体制に反抗し、しかも不勉強この上なかった私は、模試を受けるのが憂鬱だったので、理屈をつけてサボり、多少の後ろめたさを覚えながら家で月面着陸のテレビ中継を見た。

 そんなわけで、私の高校の同級生で月面着陸の映像をリアルタイムで見た人間は私以外にはほとんどいない。そして、私は一回きりの模試を受けずに受験したため(?)、数ヵ月後、予想以上に不合格の憂き目に会うことになる。

 月面着陸の日も、テレビを見終わった後、当時大好きだったフルトヴェングラー指揮、ウィーンフィルの『ワルキューレ』全曲をレコードで聴いた覚えがある。考えてみれば、40年前から、私はずっと同じような生活をしている!

 思い出話はそのくらいにして、連休を利用して、久しぶりにオペラのDVDを2本見た。いずれも見事な演奏だった。

020  まずは、ケルビーニ作曲の『メデア』。エヴェリーノ・ピド指揮、ウーゴ・デ・アナ演出によるトリノのレッジョ劇場の2008年の上演。メデアを歌うのは、しばらく前から話題のソプラノ、アンナ・カテリーナ・アントナッチ。

 シャゾーネを歌うジュゼッペ・フィリアノーティが演技、歌唱ともに硬いのを除けば、全体的に文句なし。容姿的にも満足できる。圧倒的なのは、やはりアントナッチ。最初に登場した時から、存在感が凄まじい。かつてメデアを持ち役にしていたマリア・カラスがこうだったのだろう。血まみれになって歌う幕切れも、大変な迫力。音程がしっかりして、声に芯がある。そして何よりも、メデアの狂気と色気を十分に出している。現代を代表するソプラノ歌手の一人だと思った。

 ただ、欲を言えば、少し可愛らしさが足りない。これでは、メデアが単に嫉妬にゆえに狂気に陥った猛女になってしまう。カラスにはかわいらしさがあり、それがいっそう不気味さを増していた。そうしたところがあるともっといいのだが・・・

 私は、指揮にも大いに感心した。エヴェリーノ・ピドという名前をはじめて聞いたが、ドラマティックに音楽を展開している。切れがよく、鳴らすべきときは鳴らす。メデアの心を音楽で余すところなく表現している。しかも、イタリアオペラをドラマティックに演奏すると、時として「臭く」なりがちだが、そうなっていない。

 メデアの物語には思い入れがある。ちょうど高校3年生の時だったと思うが、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の映画『王女メディア』を見て、人生が変わった。オペラを見ていても、どうしてもパゾリーニの映画と比べてしまう。ケルビーニのオペラもいいし、今回のDVDもよかったが、私にとっては、やはり映画のほうが衝撃は大きかった。

 

214  もっと感心したのは、セバスティアン・ヴァイグレ指揮、ウィリー・デッカー演出の、リセウ劇場の『ボリス・ゴドゥノフ』だ。ボリスを歌うのは、マッティ・サルミネン。2004年の上演だが、サルミネンがまったく衰えを感じさせない圧倒的な歌唱だ。体もひときわ大きいが、歌も大きい!

 サルミネンのボリスというのは意外だったが、よく歌っているのだろうか。スーツを着てネクタイを締めたボリスであって、オーソドックスな演出ではないが、それがサルミネンにふさわしい。きらびやかな皇帝の衣装を身につけていないだけに、ボリスの悲劇が身近に感じる。金色の巨大な椅子も、人間にとっての不条理な欲望を暗示して、考えさせる。

 ぐいぐいとドラマの世界に引き込まれた。シュスキーをラングリッジが歌っているが、これが芸達者で実にいい。ヴァイグレはバイロイトでも聴いたが、とてもいい指揮者だ。これからが楽しみだ。

 

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