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セコいけれど、ちょっとトクをした話

 このところ、ツイていないことが多かった。

 胸に挿していた赤のボールペンからインクが大量に漏れて、シャツとジャケットが真っ赤になり、クリーニングに出しても使用不能と言われた! 先日買ったDVDレコーダーは、どうやら最初から故障していたようで、何度セッティングしても、得意な人にセッティングしてもらっても動かない! そして、なによりも、今年の年末の来日を機会に、私の企画でリサイタルをしてもらおうと狙い、実現の可能性の高かった驚異のヴァイオリニスト・ネマニャ・ラドゥロヴィチが来日しないことが決定した! 残念! 

 そんな中、ちょっとトクをすることがあった。

 昨日、いつものように大型店で数枚のCDを買った。そのなかに、2枚組みなのに、1枚分の値段のついた輸入盤CDがあった! 家に帰って気付いた。きっと値札をつけた人のミスだろう。われながら、セコいと思いながら、トクをした!と思った。

 これは、ズルではない。5000円札で1500円のものを買おうとしたら、8500円のお釣りがきたのとは違う。お店の人に申告する義務はない。年間365枚を越すほどの大量のCDを買っているし、ときどき二重買いをしているので、たまにはこのようなことがあってもバチはあたらないだろう。

 20年ほど前の事を思い出した。

 中古CD店でのことだ。CDの大安売りをしていた。EMIのシリーズに1枚1200円の値札が貼られており、「さらに1枚につき300円の値引き!」となっていた。そのなかに、バレンボイムがピアノを弾き、クレンペラーがフィルハーモニアを指揮したベートーヴェンのピアノ協奏曲集3枚組みCDがあった。

 ところが、今回と同じように、店員さんが値札をつけ間違えたらしく、2枚組みの値段、つまり2400円になっていた。

 ずっと気になっているCDだったので、喜んで買った。1枚300円引きで3枚なので900円の値引きになり、3枚組で1500円になった。「値札をつけ間違えているようなんですけど、いいですか」と店員さんに確認したが、「こちらのミスですから、かまいません」といっていた。

 当時、私には十分な小遣いがなかったので、とてもうれしかったのを覚えている。

 帰って、そのCDをさっそく聴いてみた。そして、協奏曲第4番の演奏を聴いて、あっと驚いた。

 私が中学生だったころ、夜中にラジオ(当時、まだ九州ではFM放送が行われず、一般のラジオでクラシック音楽が放送されていた)で初めてベートーヴェンのピアノ協奏曲第四番を聴いたのだった。第二楽章の出だしの圧倒的な迫力に息を呑んだ。「協奏曲第四番の第二楽章は迫力ある勇壮な曲」だと思った。当時、演奏家についてはあまり関心がなかったので、誰の演奏なのかは聞き漏らした。

 それからしばらくして、アラウがピアノを弾くこの曲のレコードを買った。ところが、第二楽章が少しも勇壮ではない。その後、FM放送でも気をつけて聴いたし、レコードも何枚か買った。だが、いずれもむしろ繊細で趣のある曲であって、勇壮な曲想ではない。「ラジオで聴いて勇壮だと思ったのは勘違いだったのかな。夜中だったので、寝ぼけていたのだろうか」と思い始めていた。そして、いつの間にか、勇壮なこの第二楽章を探すことも忘れ、繊細なこの楽章を愛するようになっていた。

 ところが、クレンペラーとバレンボイムの演奏を聴いてみると、まさしく郵送で巨大!これぞ、私が中学生のころに初めて聴いて、耳に刻み込んでいた演奏に間違いないと確信した。長い間、私が追い求めていた演奏にほかならなかった! 私は数十年間行方不明になっていた友に出会ったような気持ちになったのだった。

 先ほども書いたように、最近では年間365枚以上のCDを購入する。たくさん聴けば聞くほど、そのような運命的なCDとの出会いは少なくなった。CDを聴くのが日常的な行為になってしまっている。これでいいのだろうかと、ときどき思うことがある。

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コメント

今回は率直に感じたことをコメントします
先生は毎日を冒険してるみたいでうらやましいです
それも自分が好きな物事を追い求める探検家のように

投稿: T摩大学生徒 | 2009年7月 2日 (木) 20時18分

はじめてコメントさせていただきます。
昨年末、ネマニャさんのヴァイオリンに心奪われた者です。
検索でこちらのブログを発見し、こっそり拝読しておりました。
LFJ「4台のヴァイオリン」のプログラム変更・・・
教授のご推測、とても納得!で、もやもやがスッキリしました。

さて、年末の来日もなくなってしまったとのこと・・・とても残念です。
企画リサイタル、いつの日か実現することを祈っております。

投稿: 亜時 | 2009年7月 2日 (木) 21時28分

T摩大学生徒様
毎度コメントありがとう。
社会生活を送っている人間は、誰もが毎日、冒険を生きているのだと思います。活動の場を広げれば広げるほど、それが大きなものになってくるともいえるでしょうね。

投稿: 樋口裕一 | 2009年7月 3日 (金) 08時15分

亜時様
ネマニャ、本当に残念です。
私がネマニャのリサイタルを企画する機会は、もしかすると二度と訪れないかもしれませんが、ネマニャは、すぐまた来日すると思います。そのときを楽しみに待ちましょう!

投稿: 樋口裕一 | 2009年7月 3日 (金) 08時19分

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