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シュミードルさんにはブラームスは向かない?

 現代を代表する大クラリネット奏者ペーター・シュミードルとは5年ほど前、話をしたことがある。

 札幌で夏に行われるPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)で講演をしたとき、演奏講師として日本人演奏家を教えておられたシュミードルさんと話す機会を与えてもらったのだった。

 とても気さくな方だった。音楽を愛し、クラリネットを愛し、教えることが大好きなおじさんという感じだった。私が「日本人演奏家はまだまだだ」といった趣旨のことをいうと、ムキになって日本人演奏家の力量の程を力説してくれた。そして、遠まわしながら、「日本人演奏家はダメだ」という先入観が、日本人演奏家の成長を阻んでいると指摘された。私は自分の不明を恥じたのだった。

 そのとき、「今度、モーツァルトの協奏曲を演奏する。そのコンサートに招待する」といわれたので、心から楽しみにしていた。だが、何の知らせもなく、招待状も届かず、こちらから催促するのも気が引けるので、そのままになった。

 それから、5年。昨日(7月30日)、トッパンホールでシュミードルのクラリネット、佐々木秋子のピアノによるデュオコンサートが開かれたので、大学で試験監督をした後、某出版社で新刊の打ち合わせをし、そのあと、心から楽しみに聴きに出かけた。

 ウェーバーのオペラ《シリヴァーナ》の主題による協奏的変奏曲と最後に演奏されたグランド・デュオ・コンチェルタンテは、とてもおもしろかった。そして、前半に演奏されたベールマンのアダージョもよかった。ベールマンは、ブラームスやウェーバーにクラリネットへの関心を持たせた当時の大クラリネット奏者だという。このアダージョ、初めて聴く曲だと思っていたら、よく知っている曲だった。だが、それにしても、どこで知ったのだったか? CDを持っている記憶はないのだが? プーランクのクラリネット・ソナタも、あまりフランス的ではなかったが、洒脱で楽しく、うきうきした。

 シュミードルのクラリネットの深く美しい音に何よりも感銘。改めてクラリネットの表現の多様性に驚く。技術は確か。自在のクラリネットを操り、精神の自由を感じる。

 が、実を言うと、シュミードルさんのブラームスの演奏にがっかりした。シュミードルさん、ごめんなさい。

 私の目当てはブラームスのクラリネット・ソナタ第1番だったのだが、ブラームス特有の陰鬱で孤独でロマンティックな世界が築かれなかった。あっけらかんと進んでいく。何をしたいのか、私には最後までわからなかった。もちろん、私の考えるブラームスを覆してくれるのなら、それもいい。が、独自の何かの世界が示されないまま終わったように、私には思えた。シュミードルさんにはブラームスは向かないのでは?と思った。

 

 ブラームスは大好きな作曲家だ。そうであるだけに、どうしても私の考えるブラームスを演奏してほしくなってしまう!

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