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チョン・ミョンフンのブラームスはちょっと期待はずれだった!

 昨日(7月23日)、授業の後、多摩大学関係者と連れ立って銀座に出かけ、建学20周年式典について打ち合わせをした。その後、一人でオペラシティに行って、チョン・ミョンフン指揮、東フィルのブラームス・チクルスの第一回、交響曲第一番と第二番を聴いた。

 もちろん、とてもいい演奏だった。しばしば心を感動に震わせた。だが、実を言うと、私はもっともっと凄まじい演奏を期待していた。

 2002年から行われたチョンと東フィルのベートーヴェン・チクルスは凄まじかった。ひたすら燃えまくり、気迫にあふれていた。オケの身の入り方も凄まじかった。とりわけ、4番と5番と7番には魂が震えた。このチクルスをナマで聴いて、私はいっぺんにチョン・ミョンフン信者になった。だから、今度もそれと同じような燃えまくる演奏を期待していた。

 第一番は、ずっしりと厚い弦に乗って、しっかりとメロディが歌われる。構成がしっかりしている上に、ロマンティックに歌い上げるので、形が崩れない。出だしから第四楽章まで、実にしっかりした音楽を聞かせてくれた。

 が、ここぞと言うところで爆発しない。以前のチョンなら間違いなく聞かせどころを作ったところで、あっさりと進んでいく。第四楽章の後半はさすがに熱く盛り上がったが、私は、もっとなりふり構わぬ、人間の魂をわしづかみにするような激しい音楽を聴きたかった。ちょっと行儀がよすぎた。

 休憩後の第二番。第一楽章が始まった時には、おっと思った。オケがびしっと合っている。とりわけ、弦の流れが小気味よかった。推進力のある演奏と言うべきか。

 私は、第二番の交響曲を、よく言われるように「田園風」とは思っていない。ブラームスの交響曲の中でもっと非ロマティックで論理的。だから、のほほんと牧歌的に演奏するべきではなく、びしっと論理的に演奏してこそ、知的高揚を呼び起こし、この曲の魅力が発揮されると思っている。まさにそんな第一楽章だった。

 ところが、第二楽章以降、少しずつだが、論理的な高揚感が薄れていくのを感じた。さすがに終楽章後半は、第一番終楽章と同じように白熱した。全体的には第一番より、この第二番のほうが完成度が高いと思った。が、少し物足りなかった。仕事の雑念を完全には追い払えず、音楽に集中できないまま終わった。

 会場でかつての恩師・山本顕一先生とお会いした。先生は、ヴァイオリンやヴィオラを自分で弾かれる方で、音楽の面でもしばしば教えていただいている。山本先生も私と同じような感想を持っておられるようだった。

 もちろん、白熱すればいいというものではない。それはそれで、とても良い演奏だったと思う。だが、ベートーヴェン・チクルスの高揚に魂を奪われた者としては、もう一度あの興奮を味わいたくなる。 チクルスの後半の三番と四番の公演では、もう一度、興奮を味わわせてほしいものだ。

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コメント

調子が悪かったんですかね?
それとも以前とは違った導きをしたかったのか…
知りうるのは本人だけですね

投稿: T摩大学生徒 | 2009年7月25日 (土) 00時53分

縁あって、オペラシティとサントリーホールのゲネプロを聴かせていただきました。
オペラシティのときは、一番を中心に一時間半のゲネプロ。ですが、そのときもたしかに二番の演奏のほうがずっとよかったです。
サントリーのほうのゲネプロは、やはりチョンさんがオペラシティの一番の演奏に満足されなかったのか、一番にひじょうに細かい指示を出されていました。それで、どんどんよくなるのを感じ、熱く聴き入ってしまいました。
これはぜひ本番も聴かなくてはと思ったのですが、この日のコンサートは当日券完売御礼ということで、当日券を買うことはできませんでした。きっとさんとりーほーるの演奏は、樋口先生がお聴きになられたオペラシティより、ずっとすばらしい演奏だったと確信しております。

同じプロプラムで何回か公演がある場合、これは絶対あとのほうが演奏がよくなるのだと思わずにはいられない体験でした。

投稿: oedipa(エディパ) | 2009年7月25日 (土) 11時21分

T摩大学生徒様
いろいろな場合が考えられるでしょうね。指揮者とオケの考えの違い、指揮者の解釈の変化、オケの失敗、指揮者の計算違い、聴く側の体調などなど。次回のチクルスを聴けば、それがわかるかもしれないと思っています。

投稿: 樋口裕一 | 2009年7月25日 (土) 23時46分

oedipa様
そうですか、サントリーでのゲネプロの一番、そんなによかったですか。おっしゃるような演奏を、実は23日も求めていたのでした。
24日も行きたかったのですが、金曜日は仕事の関係で間に合いそうもありませんでした。残念!
そうですね。私も二期会のオペラ公演など、二度聴いて、二度目のほうが圧倒的に素晴らしかった経験が何度かあります。
特に日本のオケの場合、そうしたことが言えるかもしれません。これから、このことを頭に置いて演奏会を選ぶべきでしょうね。
それにしても、燃焼するチョンさんの演奏を、是非また聴きたいものです!

投稿: 樋口裕一 | 2009年7月25日 (土) 23時55分

たびたび失礼します。
思いかえしてみると、サントリーホールのゲネプロでは、イスに座って指揮をしていたチョンさんが、熱くなると、立ち上がってオケのほうに身を乗り出し、渾身の力で振られる場面が何回もありました。ゲネプロでの燃焼を本番まで持続されたと思うと、さぞすばらしい演奏だったのではないかと、聴けなかったことが悔やまれます。

オペラの場合、オケは初日はダメでだんだんよくなるけれど歌手は疲れが出てくるのであとのほうがいいとは限らない、という話も聞いたことがありますが、どうなのでしょう。

投稿: oedipa(エディパ) | 2009年7月26日 (日) 09時32分

oedipa様
そういえば、オペラシティの演奏では、渾身の力で振る様子は見られなかったように思います。
オペラの場合、日程によっては、そして歌手によっては、後になると疲れてくることが、確かにありますね。オケは間違いなく、だんだんとこなれてきますので、複数の日程の時は、いつ行くべいか悩ましい問題ではあります。ただ、現実には、行ける日に行くしかないわけですが。

投稿: 樋口裕一 | 2009年7月27日 (月) 08時00分

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