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ワーグナー ガラ・コンサート

 飯守泰次郎指揮、東京フィルのワーグナー ガラ・コンサート(95日)に行ってきた。

 前半は『タンホイザー』序曲と『トリスタンとイゾルデ』の前奏曲と愛の死。意図的に抑え気味だったのか、あまりうねりもエロスも感じない演奏だった。今日は飯守さんが不調なのか、それともオケがいうことをきかないのか、それともオーチャードホールの私の席がよくないのかと疑った(2階の右前だったが、実際に音がもたれ気味だった。これでS席とは!)。

 が、後半、『ワルキューレ』第三幕(コンサート形式)になったら、突然、オケがうねり始め、まさしくワーグナーの音楽になっていった。まるで、それまで死んだふりをしていた動物が、むっくと起きだした感じ。オケもしっかりと指揮に答えている。

 目を疑ったが、どうも『ワルキューレ』第三幕全体を通して暗譜だったようだ。「さすが!」としか言いようがない。ふだんオーケストラピットの中で指揮しているので見る機会はないが、飯守さんはいつも暗譜なのだろうか。ほかの指揮者はどうなのだろう・・・

 ヴォータン役のアラン・タイトスが健康上の理由でキャンセル。私はかなり以前からタイトスを追いかけていた。だから彼が来ないのは残念。代役にラルフ・ルーカスが立った。この人はこれまでバイロイトでも聴いたことがある。なかなかよい歌手だと思った記憶がある。実際、なかなかの出来。タイトスの代役を十分に果たしている。低い声で歌うときに少し音程が怪しくなる傾向があるようだが、声量もあり、表現力もある。ブリュンヒルデを歌うキャスリン・フォスターも見事。もちろん、バイロイトでブリュンヒルデを歌うほどの声量はないし、ちょっと一本調子だが、このくらい歌ってくれれば、まったく不足はない。

 ジークリンデを歌った増田のり子も負けていない。二人の主役と並ぶと、まるで世界陸上の決勝の180センチを越す大女にまぎれこんだ小柄な日本人という雰囲気だが、声の美しさではキャスター以上だと思った。ほかのワルキューレたちも見事。

 しかし、私は何はともあれ飯守さんが素晴らしいと思った。1972年だったか、私は、若き飯守さんが二期会の『ワルキューレ』を振ったとき以来の飯守ファンだ。学生だった私は、頭を殴られたような衝撃を受けた。私は高校生のころから大のワーグナーファンで、とりわけ『トリスタンとイゾルデ』と『ワルキューレ』はレコードを繰り返し聴いていたが、ワーグナーの実演に接するのはそれが初めてだった。今回も、あのころと同じくらいの深い感動を覚えた。

 この『ワルキューレ』第三幕はワーグナーの全作品の中でも一、二を争う名場面だ。我が家に娘ができてからというもの、ヴォータンが愛する娘との告別を歌うこの場面を涙なしに見ることができなくなった。しかも、実に豊かな飯守の音楽! ワーグナーのよい演奏を聴くと、私は心の奥底から満足と生きる喜びを覚える。今日も、まさにそうだった。

 ああ、本当にワーグナーは素晴らしい!!

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