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アルミンクには厳しさが不足?

 すみだトリフォニーホールでのクリスティアン・アルミンク指揮、新日本フィルハーモニー9月演奏会を聴いた(919日)。ゲーテにまつわる曲を集めた演奏会。やや満足しながらも、少し欲求不満を抱いて帰ってきた。

 最初にメンデルスゾーンの序曲「海の静けさと幸ある航海」。

 メンデルスゾーンは、よく「恵まれたお金持ちのお坊ちゃん」といわれる。とんでもない誤解だ。何しろあの時代のユダヤ人だったのだから! メンデルスゾーンは、実は多感な心と豊かな才能に恵まれながら、激しい差別に苦しみ抜き、実に厳しい音楽を書いた作曲家だった。「スコットランド」やヴァイオリン協奏曲ホ短調などから、それがはっきり聴き取れる! ただ、メンデルスゾーンは若書きの曲が多く、自分の苦悩をこれ見よがしに見せ付けないので、上っ面だけに聞こえてしまう危険がある。

 この曲もその一つ。それに、アルミンクの指揮もあまり明晰ではなかった。曲想と曲想の違いをもっとはっきりさせて、その組み立てを明確にしたほうが、多感さが表現できると思った。ちょっと期待はずれ。アルミンクなら、メンデルスゾーンの感情をくまなく聞かせてくれるかもしれないと期待していたのだが。むしろ、厳しさのないお坊ちゃんのメンデルスゾーンになってしまっていた。残念。

 次にシュトラウスの「メタモルフォーゼン」。これはよかった! 美しい弦の響きがもつれ合い、悲痛でありながらも官能的な世界が展開していく。同じメロディが形を変えながら何度も繰り返し、悲痛な思いが増していく。そして、最後になって、このメロディ全体の背景にあったイメージがベートーヴェンの「エロイカ」の第二楽章の「葬送行進曲」にあったことが種明かしされる・・・そんな曲だ。美しき西洋の没落! 古きよき時代への挽歌! 自分自身と自分の生きてきた文化の破滅への深い悲しみ。そうしたものが、シュトラウスらしい感覚的な音響で迫ってきた。実は、これは私の大好きな曲の一つなのだが、涙が出そうになる瞬間がいくつかあった。

 アルミンクもオーケストラのメンバーも見事。楽譜にゲーテの詩をシュトラウスが書き込んでいたと言うが、ゲーテとの関連は薄いだろう。ほかにもゲーテにまつわる曲はたくさんあるだろうに。アルミンクがよほどこの曲を演奏したかったということか?

 後半は、劇音楽『エグモント』全曲。実はこれが目当てで聴きに来たのだった。『エグモント』序曲は大好きだ。「運命」や「第九」と同じくらい好きなほどだ。が、全曲の生演奏を聴いたことがなかった。

 初めて聴いて、やはり劇音楽としては中途半端だと思った。音楽は切れ切れ。まとまった楽曲があまりない。ソプラノの曲もあまりに短い。エグモントの心情を歌う曲がないのもものたりない。これでは、登場人物への共感もできない。

 演奏については、アルミンクは悪くはないが、もう少し迫力がほしい。命を落としてスペインの圧制と戦った英雄を描くには、ふくよかな音でありすぎる。ただ、オーケストラの機能は見事。また、ソプラノのサンドラ・トラットニックも声が美しく、音程、表現力もしっかりしていて、大変好感を持った。

 コンサート全体への疑問。最初の曲から舞台上に語り手が出てきて、気取った口調で話をする。はじめはゲーテに扮装しているのかと思ったが、そうでもなさそう。「エグモント」には語り手が必要だろう。そして、語りを担当した広瀬彰男はエグモントの語りとしてはよかった(ただ、耳で聞くと、わかりにくい表現が多すぎた。もう少しこなれた表現のほうがよいと思った)。だが、それをほかの曲にも付ける必要はなかろう。強い違和感を持った。

 それともう一つ、観客のマナーの悪さを感じた。私の後ろに座っていた二人の女性は、演奏中も低い声で話を交わしていた。隣の老夫婦は、演奏中に鈴のついたハンドバッグを動かしたり、途中で開けたり。それほど大きな音ではなかったので注意しなかったが、もう少し何とかならないか。今回は、空席が多い割りに(あるいは、空席が多いがゆえに?)全体的にざわつきと言うか、集中力の不足のような雰囲気があるのを感じた。

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昨日は、新日本フィルの定期演奏会へ。6月、7月の定演は諸般の事情で行けなかったので、久しぶりのすみだトリフォニーでした。 プログラムは、以下のとおり。最初はいったいどういう趣向があるかよくわかりませんでしたが、会場でアルミンクのプレトークを聞いてみると、ゲーテがその答えでした。(^^;)←事前にチラシなどほとんど見ない男 メンデルスゾーン:序曲「海の静けさと幸ある航海」 op.27 R・シュトラウス:メタモルフォーゼン ベートーヴェン:付随音楽「エグモント」 op.84 (全曲) 「エグモント... [続きを読む]

受信: 2009年9月20日 (日) 09時30分

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