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ティーレマン指揮の『ばらの騎士』のDVDに感動!

377  ティーレマン指揮、ミュンヘン・フィル、ヘルベルト・ヴェルニケ演出の『ばらの騎士』(20091月、バーデンバーデン祝祭劇場)のDVDを見た。『ばらの騎士』のDVDはこのところかなり発売されているが、これは最高レベル!

 オールスター・キャストだ。マルシャリンはルネ・フレミング、オクタヴィアンはソフィー・コッホ。そして、ゾフィーを歌うのはディアナ・ダムラウ。

 この三人が素晴らしい。容姿的にもこれだけあればまったく文句なし。フレミングの演技力たるや、シュヴァルツコップにも匹敵する。声の演技だけでなく、目の演技も見事。コッホもいい。この人、誰かに似ているとずっと前から思っていたが、このDVDを見てやっと思い当たった! イチロー選手によく似ているのだ。とりわけ目がそっくり(まあ、どうでもいいことだけど)!

 そして、何よりもダムラウの素晴らしさ! 透明で鋭く、しかも美しい声。可憐なだけでなく芯の強さを感じさせる。モーツァルトはこれまで映像でいくつか見て、その素晴らしさを知っていたが、ゾフィーもこれほど素晴らしいとは!

 第三幕の三重唱はまったくもって至福の時を味わった。三人の声がぴったりとあって、それはそれは最高のハーモニー。

 そのほかの歌手たちも最高! オックスを歌うのはフランツ・ハヴラータ。芸達者で、下人になりすぎないのがいい。ファニナルはフランツ・グルントヘーバー、アンニーナはジャーヌ・ヘンシェルが歌っている。そして何とテノール歌手をヨナス・カウフマン! まったくもって申し分ない!

 演出も、鏡を使った豪華絢爛でなおかつシャープなもので、これも見事。モハメッドを顔を黒くぬったピエロが演じ、最後、黒塗りの顔をハンカチで消そうとする。ヨーロッパの白人至上主義に対する揶揄なのだろうか。おもしろかったが、全体的にもう少し、しゃれた笑いの要素がほしいと思った。

 しゃれた笑いの不足については、ティーレマンの指揮についても感じる。ティーレマンの指揮はもちろん素晴らしい。びしっと音が合って、しかも流麗かつ力強い。繊細であり豊饒であり、ダイナミックでもある。私はこのオペラを中学生のころから、ずっとカラヤン+フィルハーモニアのレコードで聴いてきたが、そこでは聞こえなかった音がたくさん聞こえ、それが実に微妙にからみあっていることに気づいた。ただ、ないものねだりをすれば、もうちょっと卑俗で下卑たところがあってよいような気がする。それがこのオペラの魅力なのだ。ティーレマンはちょっと真面目すぎる。

 それにしても、45年近くもこのオペラを愛し続けると、自分自身の変化にも驚く。これをはじめて聴いたころ、私はオクタヴィアンに自己投影し、年上の女性との恋を夢見ていた。ところが、最近になって、下品で女好きで周囲の顰蹙を買うオックス男爵に自己投影している自分に気づいた! オックスを憎めない気になる。「結局、おれもオックスと同じようなもんだよなあ」と思う。きっとあと少したつと、娘を嫁に出すファニナルの立場に立つようになるのだろう。

 オペラを楽しむということのひとつに、このようなこともあるのかと改めて思う。

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