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私の人生を変えた映画『アポロンの地獄』

 インターネットであれこれ検索しているうち、パゾリーニの映画のほとんどが3000円台のDVDになっていることを知った。かなり前に調べたときには、発売されていないか、1万5千円を越したので、諦めていた。3000円台ならと思って、大量に買った。ついでに、先ごろ『カティンの森』で圧倒されたアンジェイ・ワイダ監督のVHS『悪霊』と『鷲の指輪』(ともにDVDは発売されていない)も買った。

Suzu6190img600x4621260695995onkwmo3   ワイダの『悪霊』だけ見た。ドストエフスキー原作の映画化で、ポーランド人のワイダが監督しているのだが、フランス映画だということで、スタヴローギンやキリーロフがフランス語で話す。ドストエフスキー特有の得体の知れなさが半減する気がする。

 映画としてはかなりレベルが高いと思うが、ドストエフスキーの映画化としては、ちょっと物足りない。ドストエフスキーのあの内容を2時間足らずにするのに、まず無理がある。テロリストたちのそれぞれの思想も、キリーロフのニヒリズムも中途半端。ストーリーを追うだけになってしまっている。

 イワン・プイリエフが監督した『カラマーゾフの兄弟』(高校生のころ見てかなり感動。先ごろDVDで見直して、改めて見事な映画化に驚いた)のほうがずっとドストエフスキーの映画化としては説得力を感じた。ただ、『悪霊』のストーリーの細かいところを忘れ去っている自分を発見。ドストエフスキーを再読する必要がありそう。

 NHK―BSで放送されたワイダの『夜の終わりに』も見た。アントニオーニの『太陽はひとりぼっち』を思い出した。目的を失った若者の多感でありながらもニヒルな行動。昔見てかなり共感した覚えがあるが、60歳近くなって見ると、むしろ映画のつくりのうまさのほうに目が行ってしまう。当時、心の底から感動した『灰とダイヤモンド』はゆっくりと時間のあるときに見よう。

9f05a1909fa0736dbdc3f110l  パゾリーニの『アポロンの地獄』(原作はギリシャ悲劇のソフォクレス作『オイディプス王』)のDVDを入手したが、考えてみると、これこそが私の人生を変えた1本の映画なのだった。

 高校3年生の時、大分市の映画館で見た。小学生の時、学校の音楽の時間に『ウィリアムテル』序曲を聞いてクラシック音楽に初めて開眼したときと同じくらい、感激し、興奮した。すぐにこの映画についての評論を書いて高校の雑誌に出したのを覚えている。高校生のくせに「最後の場面はニーチェの永劫回帰だ」などというような生意気なことを書いた。

 大学生になって、同じパゾリーニの『王女メディア』を見た。もっと感激した。『テオレマ』や『奇跡の丘』も見た。どれもとてもおもしろかった。そうこうするうち、パゾリーニが映画監督であるだけでなく、詩人としても小説家としても有名な存在であると知り、パゾリーニの小説を翻訳していた米川良夫先生を知り、お宅を訪ね、先生に懇意にしていただき、現在のような道を歩み始めた。しばらく前に、このブログで「映画評論新人賞」をもらったと書いたが、それもパゾリーニを扱ったものだった。

 DVDが届いた時、まっさきに『アポロンの地獄』を見たいと思った。が、昔の恋人に久しぶりに会うようで怖い。もちろん映画そのものは変わっていないはずだが、こちらが変わっている。この映画は、その後も何度も見たので、内容ははっきり覚えているが、最後に見てから20年以上がたっている。

 これから年末にかけて、パゾリーニ作品を少しずつ見ようと思っているが、さて『アポロンの地獄』を私はがどう感じるのだろうか。

 近況を少し。

 昨日、今年最後の京都産業大学に行ってきた。一晩泊まって、今朝、またまた知積院に行き、長谷川等伯の襖絵に再会。またしても感動! その後、いつもの新阪急ホテルの美濃吉で「鴨川」を食べた。先付の大根と蟹あんかけがまずうまい。えび芋も最高。そして、いつもの通り、白味噌仕立てもうまい。メインの鰤柚庵焼が感動的なほどおいしかった。ミシュランに出ている店よりも絶対うまい!

 そのまま東京に戻った。京都での行動がいつも同じパターンになってしまっているようだ!

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コメント

こんばんは。以前にもコメントした小径と言います。

今さらですが、「本当に使える!日本語練習ノート」読みましたよ。私は割と文章を書くのは好きなほうと自覚していたのですが、実際読ませていただいて、「日本語って難しいな」と改めて痛感しました。あちこち自分の文章力にアラがあることを知り、若干自信をなくしました。

私は福祉関係の仕事をしてますが、けっこう部下の文章をチェックする機会があります。そのたび偉そうに部下のあげた文章をチェックし、おかしいところを指摘しています。もし機会があれば、文章力のない若者の指導の仕方を、先生に本にしていただけたらなあ…なんて思っています。

カラマーゾフの映画の存在は知りませんでした。機会があったら見てみようかと思いました。

時々先生のブログをこっそりのぞいてます。クラシック関係の文章を興味深く読んでます。私もクラシックを聴くのは好きなのですが、知識などベースとなる下地が、先生とあまりに違うので、話についていけないことばかり^^;
まあ、楽しむための勉強と思い、またちょくちょくのぞかせていただきますね。

投稿: 小径 | 2009年12月16日 (水) 20時04分

小径様
暖かいコメントありがとうございます。
「日本語練習ノート」、出足は好調だったのですが、その後、あまり売れていないようで、残念に思っているところでした。役にたったと思ってくださる人が多いと、とても嬉しく思います。
「カラマーゾフの兄弟」のDVD、ご覧になることをお勧めします。原作を読んでいない人にはわかりにくいと思いますが、読んだ人には、とてもよい映画だと思います。
私は、最初に見たとき、まるで本から出てきたような人物たちだと思いました。同時に、背景になるロシアの様々の光景が想像とまったく異なるのにも驚きました。これらの光景は日本人は本だけでは想像できないものでした。
クラシック音楽につきましては、私は10歳のころからずっと聴いてきましたからね。ほかの人が受験勉強している時にも、青春をエンジョイしている時にも、バリバリ仕事をしてお金をかせいでいる時にも、私はずっと貧しい中でレコードを買い、演奏会に行き、関連する本を読んでいました。少しは、蓄積されていないと、自分の人生が無駄になってしまいます。
久しぶりにブログを拝見しました。写真が効果的に使われているブログですね。私も見習いたいと思い増した。でも、写真を貼るのが面倒ですね。ITに弱いので時間がかかってしまいます。
ともあれ、ありがとうございました。

投稿: 樋口裕一 | 2009年12月17日 (木) 07時36分

オイディプス王カワイソス(´・ω・` )

投稿: 福井県民 | 2014年7月24日 (木) 21時22分

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