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ヤナーチェクのオペラ『ブロウチェク氏の旅行』日本初演はすばらしかった!

 サントリーホールで昨日(12月6日)、ヤナーチェクのオペラ『ブロウチェク氏の旅行』の日本初演を見た。すばらしい演奏! 東京交響楽団の定期公演による、いわゆるセミステージ形式。数年前から続いたヤナーチェクのオペラのセミステージのシリーズの最終回だ。

 指揮は飯森範親。東京交響楽団、大井剛史による東響コーラス。歌手陣としては、ヤン・ヴァツィーク、ヤロミール・ノヴォトニー、マリア・ハーン、ロマン・ヴォツェルといったチェコの超一流のメンバー(さきごろ出たビエロフラーヴェク指揮のCDのキャストとかなり重なっている!)。日本人の高橋 淳、羽山晃生、鵜木絵里、押見朋子もまったく遜色がない。とりわけ、ブロウチェク氏を歌ったヤン・ヴァツィークがいい。

 だが、もっと感動的だったのが飯森さんの指揮。この複雑で独特の音楽を手際よく整理しつつも、整理し切れないヤナーチェク特有のわかりにくさを無理やりわかりやすくしていない。美しい甘美な音、透明で冷徹な音、情熱的な音、そしてときに美しいとは言いがたい魂に衝撃を与える音を作り出してくれる。まぎれもなく、私の大好きなヤナーチェクの音楽だった。

 これが一回きりの演奏だというのは、あまりにもったいない。これはおそらく世界最高レベルの演奏だ。もっともっと演奏してほしい。ヤナーチェクのオペラのすばらしさをもっともっと多くの人に味わわせてほしい。

 私は、このオペラはこれまで昔の復刻CDと、先ごろ出たビエロフラーヴェク指揮のCDを聴いたが、実演はもちろん初めて。映像も見たことがなかった。それだけにとても感激した。それにしても、CDと比べても遜色がないと思われる公演だった。

 とはいえ、いつものことながら、ヤナーチェクのオペラの台本のわかりにくさに対しては途方にくれる。とりわけ、第一部のわかりにくいこと! ヤナーチェクのオペラ音楽はすべて最高! だが、ストーリーが比較的わかりやすいのは『イェヌーファ』と『カーチャ・カバノヴァ』だけ。『運命』『利口な女狐の物語』『マクロプロス事件』『死の家』などは、それぞれの台詞が何を言おうとしているのかも、それにどんな意味があるのかも、時には、一体今何が起こっているのかもわからないことがある。途方にくれつつ、美しくも鋭利な音楽に感動する。そして、繰り返し聴いているうち、その独特のわからなさまでもが魅力に思えてくる。

 それにしても、このわかりにくさは何に由来しているのだろう。どの台本作者と組んでも常に同じようなわかりにくさになるということは、単に台本がうまくできていないというだけでなく、ヤナーチェク自身の思想や傾向が反映しているのだろう。その秘密を解きたくなった。

 終演後、日本ヤナーチェク友の会のメンバー(私もメンバーの一人だ!)が10人ほど集まって、近くの店で交歓会(というか飲み会)が開かれた。ヤナーチェクのオペラ公演のたびに行われるので、約1年ぶりの飲み会だ。山根英之さん、青木勇人さん、赤堀春夫さんらの主要メンバーのほか、原子力学会会長でもおられる阪大名誉教授の住田健二先生も参加。会の顧問で、ヤナーチェクの台本の翻訳を精力的になさっている関根日出男先生も来られていたとのことだが、体調を崩したということで、終演後、すぐに帰られて、今回はお会いできなかった。残念。

 主要メンバーの献身的な働きには頭が下がる。解説本を売り、ヤナーチェクについてのHPを充実させ、会報を作っている。ヤナーチェクへの強い愛がなければできない。私も少し手伝いたいと思いながら、できそうもないので、申し訳ないと思いつつ、遠巻きにしながら感心してみているだけにしている。ごめんなさい。

 ともあれ、満足と感動の一日だった。

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