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フェリーニ、ワイダ、パゾリーニの映画DVDを見た

 正月をはさんで、このところずっと原稿を書いている。一日に400字詰め原稿用紙にして30枚ずつほど書き、夜、疲れてきたら、古い映画のDVDを毎日1本ずつ見る。そんな毎日だ。

 ここ数日のうちに見た映画について、簡単な感想を記しておく。

51jdd41rqll ●フェリーニ「8 1/2」

 この映画を最初に見たのは、40年以上前の高校生の時。たまたま見たのだが、まったく理解できなかった。なんとつまらない映画だと思った。

 2度目に見たのは、大学生のころ。すでに演劇科で映画を専攻していた。大好きな監督というわけではなかったが、フェリーニがどれほど偉大な監督か知っていたし、すでに「道」や「サテリコン」など、フェリーニの映画を何本か見ていた。そのときは大傑作だと思った。が、心の片隅に、ちょっと見栄を張ってわかったふりをしている自分が居た。

 そして、今、私は、フェリーニがこの映画を作った年齢よりもずっと年上になっている。人生体験も積んだ。芸術にもたくさん触れてきた。今見ると、これをどう思うか、かなり関心があった。そこで、DVDを購入して見た。

 まずまずだな・・・と思いながら見ていた。現実と夢想が交錯するというのは、よくあるパターンなので今となっては特に驚かないが、構図や人物の動きのうまさには圧倒される。ただ、あまりおもしろいわけではなかった。なんだ、たいしたことはないではないかと思っていた。

 ところが、最後の20分ほどになったら、なぜか深く感動している自分に気づいた。それどころか、ニーノ・ロータの明るい音楽にうきうきしながらも、涙が出てきた。まさしく映像の魔術師フェリーニ!

「語りたいが、語るものがない」。映画の中でも語られる台詞だが、まったくその通りの映画だと思う。サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』や『モロイ』などと同じ境地というべきか。『道』や『カビリアの夜』や『崖』などの起承転結のある名作を作ってきたあと、その欺瞞に気づき、映画で真実を描こうとしたところ、映画では真実を作れないことに気づいた、いや、そもそも映画でも小説でも詩でも音楽でも、真実を語ることなどできないことに気づいた。そして、捨て鉢になって、「人生はお祭りだ」という映画を作った。それがこの映画だと思う。

 私は『笑えるクラシック』(幻冬舎新書)で、「ベートーヴェンの第九はお笑いの音楽だ、捨て鉢になってドンちゃん騒ぎを始めた音楽だ」と書いた。この映画はそれに通じる。

 好きな映画ではない。が、これは途方もない名作だと思った。

●ワイダ 『世代』 

 以前、NHKで放送されたものを録画しておいたもの。とてもおもしろかった。たぶんこれを見たのは初めて。不良少年が自警団に入り、ドイツ軍と戦うレジスタンスになり、友人や恋人を失いながら成長していく様を戦争の残虐性とともに鋭く、そして美しく描いている。映像の美しさにも圧倒された。登場人物の一人が後の大監督のポランスキーだというのも驚いた。

●ワイダ 『地下水道』 

 これまでに何度も見ている。久しぶりに見たが、とてもよくできた映画。残酷でありながら、人類に対する愛情も感じられる。以前見たときにも、狂気に陥る音楽家(フランスの往年の名優ルイ・ジュヴェによく似た俳優が演じている)にもっとも感情移入してみたのを思い出した。かつて見た記憶だと、全編、地下の中だったような気がしていたが、実際には地下にもぐったのは映画の中ほどだったのに驚いた。

●パゾリーニ 『アッカトーネ』 

 学生のころ、何かの特別上映で一度、見て、かなりおもしろいと思った覚えがある。前もって、恩師である米川良夫先生の訳されたシナリオを読んでいた。が、実際に映画を見て、ローマの下層の人々の猥雑で暴力的な生活を描きながら、そこにバッハの『マタイ受難曲』が流れるのに非常に驚いた。今回、改めて、この曲の使い方に感心した。明らかな素人役者のヘタさ加減がはじめのうちは気になるが、後半になると、自然に思えてくるのも面白かった。

9f05a1909fa0736dbdc3f110l ●パゾリーニ 『アポロンの地獄』

 ソフォクレスの『オイディプス王』の映画化。前にもこのブログに書いたが、私の人生を変えた映画だ。改めて感動した。本当に素晴らしい! これまで5回以上見ているので、ほとんどはっきりと覚えていた。そして、当時の私がこの映像に対してどのような疑問を抱き、それについてどう解決し、そのように卒論に書いたのかも、かなり思い出した。

 しかし、それにしても、この驚くべき映像美! それまでの常識を破壊するギリシャの王たちの服、帽子、館、そして、説明の少ない映像。エネルギーに溢れ、独特の美学にはちきれんばかりだ。同じパゾリーニにお『王女メディア』と並んで、これまで私の見た映画の中でベスト1を争うと確信した。

 40年以上前に見た映画に、当時とまったく同じくらいに感動している自分がいた。そして、思うに、当時と同じように感動しているような気がする。自分でもちょっと驚いた。これがめでたいことなのか、悲しむべきことなのか、わからないが・・・。

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