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ロシア映画 『戦争と平和』、パゾリーニ『奇跡の丘』を見た

 ワイダの『カティンの森』を見て以来、妙に映画づいている。しばらく、オペラのDVDは見ないで、古い映画のDVDを見ている。

21yp8qf96al  セルゲイ・ボンダルチュク監督のロシア映画『戦争と平和』をDVDで見た。4作から成り、全部で6時間を超す大作。

 私が中学生から高校生のころ、日本で封切された。トルストイの原作をちょうど読んだばかりだった私は、この映画に衝撃を受けた。原作から抜け出したような登場人物たち。当時の映画の新しい手法。中学生だった私は、ナターシャを演じた清楚で美しいリュドミラ・サベーリエワに夢中になった。どういう経緯だったか覚えていないが、この映画の評を書いて、それが中学の学校新聞に載った記憶がある。

 自慢するわけではないが、私は当時、大分の田舎にいるわりには、めっぽうインテリの中学生だった。つまりは、浮いた存在だった!

 そんな思い出があったので、かなり前、DVDが出ているのを知って購入した。そのまま見る時間が取れずにいたが、正月を機会に見てみた。まず、かなりの部分を記憶しているのに驚いた。もしかしたら、大学生のころ二度か三度見たのかもしれない。

 しかし、それにしてもよくできた映画だ。貴族の館の豪華さ、舞踏会の華麗さ、そして戦場のスケールの大きさに驚く。まさしくホンモノ! ソ連が国家をあげて制作に協力しているので、スクリーン上に数百、数千の兵士が戦い、馬に乗って走り、倒れ、もんどりうち、爆破される様子がリアルに描かれる。人物たちの演技も、ボンダルチュク監督自身の演じるピエールを中心に実に見事。きめ細かく心の襞が描かれ、画面も工夫を凝らしているので、見ていて飽きない。このような大作にありがちな、大味なところがまったくない。

 しかも、生と死をめぐるトルストイの思想がうかびあがってくる。人間がドストエフスキー好きとトルストイ好きの二種類に分かれるとすると、私は間違いなくドストエフスキー好きだ。トルストイはかなり読んだが、実はあまり夢中にはなれなかった。そんなわけで、トルストイについてはまったく詳しくない。だが、人間の生と死を自然の中に捉えようという映画の中に現れる思想は、きっとトルストイのものなのだろう。しばしば映し出される空や雲や樫の木は、そうした思想を語っている。

 ともあれ、見終わったあと、深い充実感にひたった。

9f05a1909fa0736dbdc3f110l  パゾリーニの『奇跡の丘』のDVDを見た。これは、かつて何度か見て、とても好きな映画だった。『マタイによる福音書』の映画化で、聖母マリアの受胎からイエス・キリストの受難までを描く。

 聖書にかなり忠実な映画化だ。いや「かなり」というのは間違いかもしれない。映像に関しては「完璧に」忠実と言うべきだろう。妙にドラマ化せず、余計なものは付け加えず、若きイエスを描いていく。生に溢れ、戦闘的な宗教家としてのイエス。イエスを演じる男性が、実に凛々しく、まさしくイエスそのもの。弟子たちも、美男でなく、いかにも当時の人物らしいリアリティを持っている。

 何よりも、まるで当時そのままと思わせるような背景が素晴らしい。どこで撮影されたのか、かつて本で読んだ記憶があるが、忘れてしまった。それにしても、これほどリアルに迫ってくる場所があったとは。パリサイ人などの帽子も、実にリアル。

 ネオ・レアリスモによって描かれたイエス・キリストというべきか。そこが、ハリウッド製のイエスと異なる。成人したイエスが初めて洗礼者ヨハネの前に現れる場面と、磔の場面は身が震えるような感動を覚えた。

 老いたマリアを演じるパゾリーニの母スザンナ・パゾリーニの演技のうまさにも改めて驚いた。素人とは思えない。顔もパゾリーニによく似ている。

 忠実でないのは音楽だ。バッハの『マタイ受難曲』を中心に様々な音楽が鳴る。モーツァルトの曲(何の曲かわからなかった)や、民族音楽も聞こえた。だが、実に映像に合っている!

 私は、『奇跡の丘』『アポロンの地獄』『王女メディア』の三本がパゾリーニ映画の中で圧倒的に好きだった。次が『テオレマ』『アッカトーネ』。明日あたりから、かつてロードショーで見て少し失望した「生の三部作」を見ることにしよう。今、見ると、おもしろいと思うかもしれない・・・

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