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京都、そして武蔵野での『愛の妙薬』

 18日から19日にかけて、かなりあわただしく動いていた。とはいえ、あわただしかった理由の多くは楽しみのためだけど。

・18日は、朝から京都に行って、午後から京都産業大学で授業。今年度最後の授業だった。今年度は無理を言って、隔週に2コマ続けての授業という変則的な形にしてもらったが、思った以上に受講生が少なかった。秋学期は二人だけ。来年度は別の形にしてもらうことにした。

・授業を終えてからタクシーでノートルダム学院小学校に行って、白藍塾の塾長として、小学生の小論文指導についての研修を行った。実りある研修だったと信じている。

・その後、白藍塾責任者と二人で四条新町にある京料理の店「和ごころ泉」で夕食。ミシュランの星をもらった店。さすがにうまい。どれもうまかったが、オレンジで包んだ魚の白身がとりわけうまかった。繊細で、香りを大事にしている。容器もよいものだという。残念ながら、私はその方面にはきわめて疎いが。もてなしてくれた女将さん(といっても、かなり若くてきれいな女性)もとても感じがいい。また行きたくなった。

・その夜は京都に泊まり、19日は、朝から知人に薦められた方広寺と養源院を見ることにした。いずれも、京都の私の宿泊地からも近く、なじみの知積院からも近い。

 方広寺は京都国立博物館の裏にある。大坂の役の原因になった「国家安康」「君臣豊楽」の銘文のある鐘で有名な寺だ。もっと大きな銘文かと思っていたのだが、ぎっしり書かれた文字のほんの一部だった。これで「家康を冒涜」「豊臣を君主とみなす」というのは、「いちゃもん」でしかないというのが、よくわかる。

 客は私一人だったのに、受付にいた係りの方(かなり高齢の女性)が丁寧に案内してくれた。恥ずかしながら、私は日本史には疎く、ここにかつて奈良の東大寺の大仏よりも大きな大仏(木造のため、焼失)があることを知らなかった。かつての大仏の一部や大仏殿の縮図などを見せてもらった。

 その後、そこから5分ほどのところにある養源院に移動。関が原の戦いの少し前の伏見城の戦いで自害した鳥居元忠ら大勢の武将の血のしみこんだ廊下の板を天井にしたという「血天井」で有名。黙っていれば気づかないが、言われると不気味。

 ただ、私としては俵屋宗達作といわれる像や麒麟の絵のほうがおもしろかった。大胆な構図、今にも動き出しそうな表情。まるで漫画のようでいながら、リアリティがある。いわゆる「日本的」な構図ではないところがおもしろい。いや、むしろこれこそが日本的なのかもしれないと思った。

 知人に、客を怒鳴る不愉快な女性係員がいるので気をつけろといわれていたが、それどころか、たった一人の客である私に対して、むしろほかの観光地ではないほど丁寧で親切な対応をしてくれた。あまりに低姿勢なので、こちらが戸惑うほどだった。

・その後、いつもの通り新阪急ホテルの美濃吉で昼食をとろうと思っていたら、残念ながら、全館改修のために閉まっていた。伊勢丹の11階に行き、「松山閣」という湯葉の店で食べた。おいしかった。

・新幹線で移動。16時から、新宿でインタビューを受けた。ある出版社の出している会報に出るもの。作文・小論文指導のこと、音楽のことなど話した。

 写真も撮られたが、昼食時にビールを飲んで、新幹線でぐっすり眠っていたので、寝ぼけ顔だった。まあ、寝ぼけていてもいなくても、顔のレベルに大差はないと言えるが・・・。

・18時半から、ベルガモ・ドニゼッティ劇場の武蔵野市民文化会館での『愛の妙薬』の公演を見た。

 ステファノ・モンタナーリ指揮(配布された配役表にはスティファノ・モンタナーリとあった)。演出はフランチェスコ・ベロット。

 アディーナを歌うのはリンダ・カンパネッラ、ネモリーノはロベルト・イウリアーノ、ベルコーレはレオナルド・ガレアッツィ、ドゥルカマーレはマッテオ・ペイローネ。残念ながら、武蔵野の公演では、今回のツアーの目玉であるデジレ・カントーレは出演しなかった。

 若手中心のキャストだ。オケも一流ではない。難をいえば、きりがない。が、十分に楽しめた。はじめのうちは、聞きなれた超一流に比べてアラが多いのが気になったが、最後には「これでいいのだ!」と思った。

 歌手では、アディーナを歌ったカンパネッラがよかった。デジレ・カントーレには及ばないにしても、この公演では唯一の一流歌手といえるかも。声が透明。ほかの歌手は、がんばってはいるし、悪くないのだが、声が十分に伸びなかったり、音程が怪しくなったりする。が、みんなが芸達者で観客を楽しませるコツを知っている。だんだん盛り上がって、最後には劇場全体が一体感を持ってわきたった。

 演出については、かなりオーソドックス。指揮については、私は大いに感心した。

 メリハリをつけ、きびきびした指揮。ただ、最後の和音の前にタメを作るのは、ちょっとやりすぎ。風貌といい、音楽の作り方といい、井上道義さんを思い出した。かなり若い指揮者だと思うが、今後、注目したい。

 ともあれ、楽しい音楽がいつまでも耳に残って、気分よく家に帰った。何も超一流である必要はない。このくらいの公演であれば、心の底から楽しめる。ドニゼッティはまさしく気軽に聴くオペラとして最適。

 DVDなどで超一流の演奏ばかりを追いかけるのも、オペラを楽しむ方法としては間違いかもしれないと改めて思った。

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コメント

記事を楽しく拝見しました。
私もオペラ「愛の妙薬」鑑賞しに行きました。カラフルで楽しい舞台でしたね。
私もブログにオペラ「愛の妙薬」の感想を載せましたので是非読んでみてください。
http://desireart.exblog.jp/10479853/
よろしかったらブログの中に書き込みして下さい。
何でも気軽に書き込んでください。

投稿: dezire | 2010年4月27日 (火) 07時06分

dezire様
コメントありがとうございます。ブログ、楽しい拝見しました。
私はイタリアオペラよりもドイツ系のオペラのほうが圧倒的に好きなのですが、「愛の妙薬」は楽しくていいですね。あのあっけらかんとした楽しさはドイツ系の作曲家には真似できないところだと思います。
なお、私は、実はほかの方のブログに書き込みをしないことに決めています。私はかなりの本を書いていますので、ブログの中には私の本をほめてくれたり、ぼろくそにけなしていたりするものがあります。つい、お礼を言いたくなったり、抗議したくなったり、議論したくなったりします。それをし始めると、時間的にも精神的にも大変なことになりそうな気がします。
そうならないためには、一切書き込みはしないほうがよいだろうと思いました。
そのようなわけで、時々覗かせていただくだけにして、書き込みは控えさせていただくつもりです。ご容赦ください。

投稿: 樋口裕一 | 2010年4月28日 (水) 08時10分

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<テアトロ・ドニゼッティ・ディ・ベルガモ日本公演> 2010年1月5日(水)18:30/神戸文化ホール 指揮/ステファノ・モンタナーリ ベルガモ・ドニゼッティ劇場管弦楽団 ベルガモ・ドニゼッティ劇場合唱団 演出/フランチェスコ・ベロット 美術/アンジェロ・サーラ 照明/クラウディオ・シュミット 衣装/クリスティーナ・アチェティ アディーナ/デジレ・ランカトーレ ネモリーノ/ロベルト・イウリアーノ ベルコーレ/マリオ・カッシ ドゥルカマーラ/マッテオ・ペイローネ ジャンネッタ/ディアナ・ミアン ... [続きを読む]

受信: 2010年1月21日 (木) 21時29分

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