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藤原歌劇団の『カルメル会修道女の対話』にちょっとがっかり

 2月6日の藤原歌劇団の『カルメル会修道女の対話』公演を見てきた。一言でいって、ちょっとがっかり。

 指揮はアラン・ギンガル(フランス語読みすると、ガンガルのはずなのだけど・・・)、演出は松本重孝。管弦楽は東京フィル。

 昨年、新国立劇場の研修生によるこのオペラの公演を見て大いに感動したのだったが、今回は、それほどの感動を覚えなかった。

 歌手たちはもちろん頑張っている。ブランシュを歌った出口正子、コンスタンスの佐藤美枝子をはじめ修道女たちは頑張っている。男声陣も決して声楽的に劣るわけではないと思う。最後のギロチンの場面では、十分に感動した。が、いかんせん、全員のフランス語がまったくのカタカナ読み。

 『ペレアスとメリザンド』や、この『カルメル会修道女の対話』は、何よりもフランス語の発音が大きな意味を持つ。極論すれば、名歌手が美声を張り上げて歌うよりは、中堅の歌手が美しい発音のフランス語で丁寧に歌うほうがずっと感銘を与えるのではないか。これこそ、まさしく「対話」をそのまま発展させたようなオペラなのだ。これを、カタカナ読みのフランス語で歌っても、感銘は与えられない。今回、改めて、オペラというのは、あるいは音楽そのものも、その民族の言語を昇華させたものにほかならないのではないかという思いを強くした。

 指揮も、精妙なプーランクの音を出せずにいた。ちょっと聴いただけではまったく劇的でなく、むしろ日常的に聞こえるが、その実、とても奥深くて精妙な味わい、それがプーランクの音だと思うのだが、今日のオケは無機質であったり感情過多であったりした。

 このオペラは大劇場でなく、中劇場で見たい。昨年の公演がすばらしかったのは、関係者の努力とともに、中劇場で行われ、フランス語の指導が徹底的になされていたためでもあるだろう。今さらながら、昨年の公演のレベルの高さを再認識した。

 実は今日、オペラにいく前、大学での会議に出席しようと思っていた。が、肩が凝って体中に激しい疲労感を覚える。このところ、家にいる間はずっと原稿を書いているので、そのせいだろう。今日の会議は出席が義務付けられていなかったので、会議をサボって、オペラを優先した。オペラから帰って、まだ激しい疲労を覚える。帰りに、行きつけの店でマッサージしてもらおうと思ったら、かかりつけのマッサージ師さんがあいていなかった。残念。マッサージは明日にしよう! オペラの後、知人数人と食事をしてから、帰った。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

「全員のフランス語がまったくのカタカナ読み」
というのはまとめすぎでは?
少なくとも1人は歌唱フランス語としてはほぼ完璧、イタリア語なまりが5人、カタカナ2人、何語としてもめちゃくちゃがあと数人、ではなかったでしょうか?
「名歌手が美声を張り上げて歌うよりは、中堅の歌手が美しい発音のフランス語で丁寧に歌うほうがずっと感銘を与えるのではないか」
というのも乱暴では?
名歌手は全員フランス語ができず、中堅に美声はいないのでしょうか?

投稿: | 2010年2月 7日 (日) 10時34分

コメントをくださった名前のない方へ
「全員のフランス語がまったくのカタカナ読み」というのは、雑すぎる言い方だったかもしれません。
ただ、私のわかる限りでは、完璧な人はいなかったように思ったのですが。一人、ほかよりもフランス語らしい人はいたようにおもいましたが。残念ながら、私には、イタリア語なまりを聞き分けられませんので、それも「カタカナ」と表現しました。性格にはおっしゃる通りかもしれません。
「名歌手が美声を・・・」は、ちょっと大袈裟なレトリックとしてご理解ください。その意味で、「極論すれば」という断りを入れたのでした。誤解を与えたのでしたら、訂正します。おっしゃるとおりです。

投稿: 樋口裕一 | 2010年2月 7日 (日) 20時36分

僕も6日見に行きました。このオペラ、始めは3日公演のはずが、2日間になってしまったとのこと。オペラ興行は大変なのかな、残念。でもよくお客さん入っていましたね!
僕はあまり仏語に詳しくありませんが、なかでも仏語が上手だった方って誰ですか??僕は司祭役の人が良かったように思ったのですが。声は決して強くないけど美声ですし。皆さんいかがですか?

投稿: まさる | 2010年2月 8日 (月) 01時55分

まさる 様
コメント、ありがとうございます。
実は、とても恥ずかしいのですが、私は実は「カルメル会修道女の対話」というオペラにあまり詳しくないのです。数回しか見たことがありません。素晴らしいオペラだと気づいたのは、昨年の新国立の中劇場での公演の際でした。そのことは、以前このブログに書いたとおりです。
つまり、多くの方がそうだったのではないかと思うのですが、私もまた修道女たちの区別がつかないまま見たのでした。なにしろ、全員が同じ修道女の格好をして、しかも体型のわかりにくい服ですからね。出口さんの演じたヒロインのブランシュさえもしばしば見分けがつかないほどでした。
そんなわけで、一人フランス語らしい発音をしている修道女がいるのに気づきましたし、たぶんマリーを演じた方だと思うのですが、あまり自信を持っていえません。間違っていたら、ごめんなさい。そして、「みんながカタカナのフランス語」とひとまとめにしてしまったこと、ここでも改めてお詫びします。きちんと歌った方には大変失礼な言い方をしてしまいました。
男性では、おっしゃるとおり司祭役の方がよかったと思います。少なくとも、私は、フランス語の発音に違和感を覚えませんでした。

投稿: 樋口裕一 | 2010年2月 8日 (月) 08時32分

そうですね。
僕もマリー役の方、上手だったと思います。かなり仏語に長けた方なのでしょう。それにしても、人物を見分けるのが大変でしたね!

投稿: まさる | 2010年2月 9日 (火) 18時59分

6日の公演、フランス語と日本語が母国語の音楽関係の方と一緒に見ました。
やはりマリーさんだけ格段にレベルが高く(フランス人より上手い、って)、あとは司祭さんが良かったと言っていました(フランス人くらい、って)!

投稿: あきこ | 2010年2月10日 (水) 15時26分

私は7日の公演を観ました。久し振りの文化会館でしたがやはりここは音がデッドでフランス音楽にはちょっとしんどいですね。でも東フィルも頑張ってたし、この曲はケントナガノのCDを聞いてきれいなオペラだと思ってましたがやはりアベマリアと最後のサルベレジーナには感動しました。あとコンスタンス修道女の大貫さんがとてもチャーミングで全編暗いムードのなかでとてもよかったです。

投稿: モーリス・ラベル | 2010年2月11日 (木) 10時54分

実は今までプーランクといえば二つのピアノ協奏曲と田園協奏曲とクラリネットソナタとチェロソナタとかおしゃれなメロデイーを作る作曲家(一台のピアノ競争曲の出だしのメロデイーなんか歌謡曲みたいですもんねえ)とのイメージでしたが7日のこのオペラを聴いてもうびっくりしてしまいました、本当。 今日勤務先の会社が制作に関係している山田洋次の新作映画おとうとを観に行きましたが7日のカルメル会のオペラの方が100倍感動しました。(比較が悪いけど)

投稿: アレクシス・ワイセンベルク | 2010年2月11日 (木) 17時04分

まさる様
修道女たちの見分けがつかず、「名札をつけてほしい!」と本気で思ったほどでした! 次の上演されるときには、演出家が何らかの工夫をしてくれませんかねえ・・・
マリーを歌ったのは、島木弥生さんですね。今後、注目したいですね。

投稿: 樋口裕一 | 2010年2月11日 (木) 18時06分

あきこ様
コメントありがとうございます。
そして、フランス語を母語とする方のご意見をお知らせくださって、ありがとうございます。
マリーを歌った島木さん、それほど素晴らしかったのですか。そこまではわかりませんでした。

投稿: 樋口裕一 | 2010年2月11日 (木) 18時11分

モールス・ラベル様
コメント、ありがとうございます。
アレクシス・ワイセンベルクさんのコメントをみましても、どうやら7日のほうが6日よりもよかったようですね。
ダブルの場合、両方見るべきだと、つくづく思います。

投稿: 樋口裕一 | 2010年2月11日 (木) 18時13分

アレクシス・ワイセンベルク 様
コメントありがとうございます。
私は昨年の2月の新国立劇場での研究生の公演で、同じような衝撃を受けました。が、6日は、それに比べるとかなり感動が薄かったのです。どうやら、7日は素晴らしかったようですね。みられなかったのが残念です。

投稿: 樋口裕一 | 2010年2月11日 (木) 18時15分

私が1957年にフランス語初演を行った直後に録音したcdは現在
渋谷のタワーレコードで2枚組1250円で売られている。モノラル録音だが非常に綺麗な録音でクレスパンとか超一流のフランスの歌手陣で固めているので是非買って聴いてみてください。横に61年録音のウィーン国立歌劇場のcdとかムーテイのdvdとかもありますが私のやつがベストです!  (現在ケントナガノのcdは廃盤)

投稿: ピエール・デルボー | 2010年2月14日 (日) 20時11分

ピエール・デルボー様
有益な情報、ありがとうございました。
さっそくCDを買って、聴いてみました。確かに素晴らしいですね。ケント・ナガノのCDを持っていますが、感銘度は比較になりません。音を聴くだけで、徐々に深まり、深刻になっていく様子が手に取るようにわかります。楽器の一つ一つがとても雄弁で、静かに残酷なドラマを高めていきます。歌手たちも、とりわけ女声陣が見事。おかげで素晴らしい演奏を知ることができました!!

投稿: 樋口裕一 | 2010年2月16日 (火) 00時03分

鳥木さん(しま木さんじゃなく、とり木さんですね)が素晴らしかったのもそうかもしれませんが、他の方とくらべて、って意味もあった気がします……。

投稿: あきこ | 2010年2月17日 (水) 17時24分

あきこ様
コメント、ありがとうございます。
大変、失礼しました。鳥木さんですね! ご本人に大変申し訳ないことをしてしまいました。これを機会に、しっかりとお名前を記憶することにします。

投稿: 樋口裕一 | 2010年2月20日 (土) 23時22分

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