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ティーレマン、ミュンヘン・フィルのブルックナー8番に感動

 今日(3月28日)、横浜みなとみらいホールで、ティーレマン指揮、ミュンヘン・フィルのブルックナーの交響曲第8番(ハース版)を聴いてきた。

 一言でいって、素晴らしい演奏。

 チェリビダッケの伝説的な演奏を思い出すほど、かなり遅めのテンポ。丁寧で重厚で、楽器がよく鳴り、しっかりと整理されている。第一楽章は、ホルンがとちるなど少々粗いところを感じた。が、だんだんと盛り上がってきて、第四楽章は最初から最後まで素晴らしかった。

 しっかりとうねり、急がずあわてず、寄せては返しながら、ゆっくりゆっくり盛り上がってカタルシスに達する。音の強弱をしっかりとコントロールしている。

 第三楽章の盛り上がりの部分、もっと金管の咆哮がほしいと思ったが、きっと席(向かって左前)のせいで、金管が届きにくかったのだろう。

 実は私はティーレマンとは相性がよくない。最初の出会いは、1998年のベルリン・ドイツ・オペラの『さまよえるオランダ人』公演。大喝采だったが、私はひどい指揮だと思った。オランダ人を歌ったヴァイクルも絶不調だった。2007年のミュンヘン・フィルとのブルックナーの5番も、私は感心しなかった。私が始めて心の底から感動したのは、バイロイトでの『リング』だった。

 今回は、『リング』に次ぐ見事な演奏だと思った。間違いなく、現代を代表する大指揮者。

 しかし、・・・

 率直に言って、昨年聞いたブロムシュテット指揮チェコ・フィルの演奏のほうにもっと感動した。ブロムシュテットにはもっと躍動感があった。爆発があった。私は涙を流しながら聴いた。ティーレマンももちろん素晴らしいのだが、突き抜けたものを感じない。もう少し狂気のようなもの、全身を痺れさせるような毒気のようなもの、妖気のようなものがほしい。第2楽章も、もっとデモーニッシュなところがあってよかったのではないか。第3楽章ももっと爆発してよかったのではないか。深く感動はしたものの、恍惚に我を忘れて流するには至らなかった。

 ともあれ、昨日の『神々の黄昏』に続いて、とても充実した一日だった。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
ブルックナーの8番、ここのところ多いですね。
私は25日、オペラシティで、スクロヴァチェフスキ指揮、読響の演奏会を聴きました。感想は私のブログにあります。
同じ日に、インバルもやっていたそうですし、読響は翌日もサントリーホールでやってました。

4月にはブロムシュテット指揮のN響で5番がありますし、10月にはMr.Sが再び読響で7番を振ることになっています。
ブルックナー好きって、けっこういるんですね。

投稿: ムーミンパパ | 2010年3月28日 (日) 22時54分

樋口さんはじめまして。

当方、ブルックナーの交響曲を偏愛しております(特に5,6,8)。現在中学2年生です。

ティーレマン指揮ミュンヘン・フィルの演奏会、行きたく思っておりましたが、予算上の都合で、断念せざるを得ませんでした。すばらしい演奏だったようですね。

さて、そんな私は50%割引の学生券を販売している都響を、インバルが振った8番を聴いてまいりました。インバルこだわりのノーヴァク版第1稿を使用しての演奏です。大変完成度の高い、見事な演奏だったと思います。特に3楽章の渦巻く情念には、大変な感動を覚えました。第1稿は、現行版とはかなりの箇所にわたり違いが見受けられました。完成度では、現行版にだいぶ劣るものの、大曲完成へのブルックナーの情熱などはよく感じられ、興味深く聴かせて頂きました。

ところで、樋口さんが聴かれた、ブロムシュテットのブルックナー8番、聴いておけばよかったといまさらになって後悔しております。「新世界より」/ブラームス1番の大阪公演は聴くことができたのですが・・・。

長文失礼いたしました。

投稿: ブルックナー患者 | 2010年3月29日 (月) 08時58分

樋口さん、こんばんは。
私も、ブロムシュテットの名演は今でも忘れられません。異常なほどの激演でしたね。特に終楽章コーダの輝き!昨日のティーレマンは聴きに行きましたが、もごもご言っているうちに終ってしまった感があります。ミュンヘンのパワーもヴァント客演のときとはまるで違いました。私は1階中央で聴きましたが、全く感動しませんでした。(感想は人それぞれですから、失礼をお許しください!)

それより、26日のスクロヴァチェフスキ&読売日響が、在京オケとしてはマタチッチ/朝比奈/ヴァント&N響に匹敵する名演でした。

投稿: ねこたろう | 2010年3月29日 (月) 17時31分

ムーミンパパ様
コメント、ありがとうございます。
スクロヴァチェフスキについてのブログ拝見しました。
実は私はスクロヴァチェフスキを避けているのです! 2003年、ザールブリュッケンとの3夜連続のブルックナー演奏や、同じころの読響とのブルックナーをいくつか聴いて、「つまらない」と思ったのでした。私にはまるで「スターウォーズ」のような、宗教性のない、きわめて機能的で表面的なブルックナーに聞こえました。それ以来、スクロヴァチェフスキの実演は一度も聴いていません。CDは何曲か聴きましたが、実はこれも、評論家がいうほどよい演奏とは思えずにいます。
そんなわけで、今回も聴かなかったのですが・・・

投稿: 樋口裕一 | 2010年3月30日 (火) 07時50分

ブルックナー患者様
コメントありがとうございます。
中学生でブルックナー患者ですか!
私も中学生のころからブルックナーが大好きでした。が、患者と言うほどではなかったかな。当時は「ベートーヴェン患者」、高校生になってからは「ワーグナー患者」でした。
インバルのノーヴァク版第一版、関心はあります。が、インバルのブルックナー全集のCDを聴いてがっかりしてから、インバルは避けてきました。実演でもインバルを何度か聴きましたが、
いつもマーラー臭さを感じてしまいます。
とはいえ、実は聞かず嫌いの面が大きいので、今度、機会があったら聞いてみようと思います。
何はともあれ、中学生のブルックナー好きというのは頼もしいですね。うれしくなりました。

投稿: 樋口裕一 | 2010年3月30日 (火) 08時19分

ねこたろう様
コメント、ありがとうございます。
「ムーミンパパ」さんへの返事にも書いたとおり、私は「反スクロヴァチェフスキ」でした。考え直して、次の機会がありましたら、聴いてみようかと思っています。
ただ、私が「反スクロヴァチェフスキ」になったときも、周囲の人は絶賛していましたので、さて、どうなることか・・・
ティーレマンのみなとみらいでの演奏、稀代の名演と言うほどではなかったかもしれません。が、実にしっかりした彫りの深い真摯な演奏でした。ただ、感激のあまりの恍惚に一歩足りないと思ったのでした。

投稿: 樋口裕一 | 2010年3月30日 (火) 08時20分

樋口さん、こんばんは。

スクロヴァチェフスキについてちょっと書きたいと思います。

ブルックナーファンからは「ポスト・ヴァント」の声も高い彼ですが、ハーモニーが薄いのがヴァントとの差です。これを欠点と取るかは人それぞれとして、巧みに内声部を浮き上がらせたり、ティンパニをデクレッシェンドさせたりと、「名職人」としての「技」はさすがだと思います。それが少しも奇矯に聴こえないどころか、新鮮な感動を与えてくれるのですから。

ザールブリュッケンとの連続演奏会は、平凡だったと思います。この名匠は燃えたときが凄いのです。読響常任就任前の2000年の「9番」はその典型でした。その後やや枯れた感もありましたが(「1番」は批評家にけなされてました)、26日、最後の「8番」でやってくれました。だから、次の「7番」、私もどうなるか気になるのです。

ちなみに、彼がザールブリュッケン放送響と録音した全集は、当初廉価盤(アルテ・ノヴァ 1枚880円!)として発売されたため、偏見の強い評論家連中からは完全に無視されました。しかし、巷のブルックナーファンの口コミ(ネット?)によって広まり、今では一つのスタンダードになっているようです。7・8・9番あたりは確かに名演です。有名になったせいで、再発盤は値段も上がってしまいましたが。

ところで・・・ブロムシュテットの円熟には驚きます。6月にはベルリン・フィルで「6番」を振るそうです。ヴァントを三顧の礼で迎えたときのように、「8番」「9番」もやってくれるといいですね。

投稿: ねこたろう | 2010年3月30日 (火) 20時29分

樋口先生
ブルックナー患者様
ねこたろう様
いろいろな感想があって、とても参考になりました。

感性・考え方は人それぞれですから、同じ演奏を聴いても感想が違うのは、仕方のないことと思います。
樋口先生の大嫌いなマーラー、私は特別好きと言う程でもありませんが、抵抗無く聴けますし。
ただ、同じように感動した人がいる、と言うのは、とても嬉しいことです。
4月のブロムシュテット-N響の5番も楽しみにしています。

それにしても、中学生でブルックナー中毒とは、すごいですね。私も中学生の時にブルックナーは好きになりましたが、中毒と言う程ではない、むしろその頃は(今でも)ブラームスにはまっていました。途中で邦楽器にもはまりましたが(^^;)(これは今でも続いています)。

いろいろな感想を読んで、自分の幅が広がるのも、嬉しいことだと思っています。
どこかでお会いしているかも知れませんね。

投稿: ムーミンパパ | 2010年3月30日 (火) 22時47分

ねこたろう様
情報、ありがとうございます。
スクロヴァチェフスキ+ザールブリュッケン放送響の3夜演奏こそ、彼の渾身の演奏だと思っておりました。そのわりに良くないので、「見限った」のでした。
ちょっと早計だったようですね。ただ、アルテ・ノヴァのCDについては、もちろん悪くないと思ったのですが、ヴァントに比べれば、何と浅いのだろうと思った覚えがあります。どうしても、「職人性」を感じてしまうのです。ともあれ、機会を見つけて次回は必ず聴こうと思います。
4月のブロムシュテット、実はチケットを入手できなかったのです! しばらく前から何とかならないかと画策中!!

投稿: 樋口裕一 | 2010年3月31日 (水) 07時42分

ムーミンパパ様
コメント、ありがとうございます。
私もみなさんにコメントをいただき、とてもうれしく思っています。中学生に教えてもらえるのも、とてもいいものです!!
中学生のブルックナー患者というのにも驚きますが、ブルックナーやブラームスがお好きな方が、邦楽に惹かれるというのにも驚きます。きっと、邦楽も素晴らしいのでしょう。ただ、私の場合、そこに達する前にもっと触れておきたいものがたくさんあるのですが。
ところで、「樋口先生」でなく、「樋口さん」と呼んでいただけますでしょうか。音楽については、私はまったくもって「先生」ではありませんので。

投稿: 樋口裕一 | 2010年3月31日 (水) 07時52分

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