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東京・春・音楽祭『パルジファル』に大満足

 4月2日、東京文化会館でウルフ・シルマー指揮、NHK交響楽団の『パルジファル』のコンサート形式を聴いた。音楽を邪魔する演出がないだけいいといえるかもしれない。素晴らしい演奏だった。

 やはり5人の外国人歌手が圧倒的。

 そのなかでも、凄まじい声の力と歌の演技力を感じたのが、クンドリを歌うミヒャエラ・シュスターだった。はじめてこの名前を知った。きれいな容姿なのだが、かなり不気味さが漂う。ホラー映画で最初に殺されるホテル客といった雰囲気を漂わせている。クンドリを歌うために、意識的にそのような表情にしていたのかもしれないが。歌については、「こんなすごい歌手が、これまでどこに隠れていたんだ!!」と思うほど、ものすごい。第2幕は、息を呑むほどの迫力だった。これからあちこちで引っ張りだこになるだろう。

 そのほか、やはりアムフォルタスを歌ったフランツ・グルントヘーバーが激しい苦悩をじっくりと聞かせてくれた。ぐいぐいと引き込まれる。さすがというほかない。パルジファル役のブルクハルト・フリッツはDVDになっている『ベンヴェヌート・チェッリーニ』の主役が良かったので、期待していたが、まさしく期待通り。きれいで強い声だった。ただ、終盤、ちょっと疲れが出ているように思えた。グルネマンツのペーター・ローズも実に安定したいい歌。歌が自在で自然。クリングゾルのシム・インスンは、韓国人の若い歌手。まだ声にまかせて歌っている感じで、少々粗さを感じるが、これまたこれからが楽しみなすごい歌手。

 日本人の歌手については、外国勢との差を感じざるを得なかった。ただ、魔法の乙女たちを歌った6人は、きれいで音程もしっかりして、声がぴったりと合っていた。見事。

 合唱や日本人歌手たちの重唱の部分で、ほんの数回だが、アンサンブルの崩れるところがあった。やや練習不足なのかもしれない。

 クンドリを歌うシュスターとともに特筆すべきは、指揮のウルフ・シルマー。新国立での『エレクトラ』もすばらしかったが、それ以上に力量発揮と言うべきか。コンサート形式なので、楽器がしっかり聞こえる。昔ながらの重厚なワーグナーではなく、透明で崇高な音楽作り。第二幕は官能性にもどす黒さにも不足がない。N響はさすが。実にバランスがいい。一つ一つの楽器もしっかりと鳴っている。それをシルマーが見事にコントロールしている。4時間を超す難曲をだれることなく聞かせてくれた。

 長大な『パルジファル』のコンサート形式なので、退屈するのではないかと心配していたが、まったくそんなことはなかった。動きが少なく、ストーリー的に単調なこの楽劇は、むしろコンサート形式に向いているのかもしれない。そういえば、10年以上前、ベルリン・シュターツ・オパーの来日公演ですばらしい『パルジファル』が演奏されたのもコンサート形式だった(体調不良のエルミングに代わって、急遽代役が立った上演だった。その代役が今や大活躍のスティー・アンセンだったという)。

 前日とレーピンと打って変わって、感動を抱いたまま帰宅した。

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