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ムーティ指揮の『カルミナ・ブラーナ』はムーティ以外はとても良かった!

 4月9日は、パルテノン多摩で多摩大学の入学式が行われた。寺島学長と田村常務理事の話、そして、新入生ふたりのことば。とてもよい入学式だった。ニュースでも報道されていたが、多摩大学の入学式も多くの保護者が出席する。時代の移り変わりを痛感する。

 

 10日、東京文化会館で、東京・春・音楽祭の『ハフナー』交響曲と『カルミナ・ブラーナ』を聴いた。指揮はリッカルド・ムーティ、東京春祭特別オーケストラの演奏。一言でいって、ムーティがよくなかった!

 もともと私はムーティが好きではない。20年以上前、CDを何枚か聴いてひどい指揮者だと思った。だから、実は、ムーティのナマを聴くのは今日が初めてだ。最近、ヴェルディのオペラをいくつか聴くうちに、ムーティにもよいところもあることに気づいて、最近はあまり嫌いでなくなっていた。そこで、一度聴いてみようという気を起こして、今日、でかけたのだったが、今度聴いて、改めて相性がよくないことを痛感した。

 まず、『ハフナー』がつまらなかった。音が生きていないと、私は感じる。わくわく感がまったくない。『カルミナ・ブラーナ』の前に『ハフナー』を演奏したということは、「躍動」を強調したかったのだと思うが、まったく躍動しない。いろいろと工夫しているのはわかるが、私にはどれも「すべっている」ように感じられる。第四楽章は最大の躍動になってほしいのだが、鈍いままだった。オケの性能はいい。だが、ムーティがそれをいかしきっていない。

 そして、『カルミナ・ブラーナ』。私の大好きな曲のひとつだ。

 歌手たちは素晴らしかった。ソプラノのデジレ・ランカトーレの美声は特に見事。堪能した。カウンター・テナーのマックス・エマヌエル・ツェンチッチもいいし、バリトンのリュドヴィク・テジエも素晴らしい美声。東京オペラシンガーズも東京少年少女合唱隊も、そしてオケも文句なし。ただ、私はムーティに、『ハフナー』以上の強い違和感を覚えた。

 ムーティが物量で攻めてくるところが気に入らない。とてつもなくでかい音がする。だが、それが生き生きとしていない。私にはどでかい死んだ音に聞こえる。まるで、迫力を出すには音をでかくすればいいとでも思っているかのようだ。

 しかも、ムーティは生真面目にこの音楽を演奏する。だが、『カルミナ・ブラーナ』というのは、おどけた曲なのだ。人を食ったようなところのある曲で、聴くものをニヤリとさせる曲なのだ。ところが、ムーティの演奏にはまったくそんなところがない。笑わせるべきところも、大真面目に、そしてドラマティックに演奏される。そうすればするほど、音楽が生きてこない。

 そして、『カルミナ・ブラーナ』の最大の魅力は、前近代精神に基づく躍動感あふれる単純なリズムの繰り返しなのだが、そこにニュアンスをつけて盛り上げようとするものだから、魅力がまったくなくなる。むしろ、近代精神に基づくニュアンスをなくして、単純さを強調するほうがずっとリアルな音になると思うのだが。

 終わった途端、大喝采だった。まさか、この演奏にこれほどの喝采が起こるとは思っていなかった。むしろブーイングが起こるのではないかと思っていたのだった。これをひどい指揮だと思ったのはどうやら少数派だったらしい。

 ちょっと寂しい気持ちで家に帰った。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

樋口さん、こんばんは。

N響のマーラーで、退団したはずの「重鎮」が奮戦していたのは、若い団員が上野でオペラをやっていたからなのですね。なるほど。

私もムーティには、なんのシンパシーもありません。若いころから人気もありましたが、「ボクサーのようだ」という批判も多く耳にしました。あの無機的な指揮は願い下げです。VPOと来日したときの「チャイ5」など、ひどいものでしたが、(いつものように)評論家は絶賛でした。

「巨匠」と目されてもおかしくない年齢ですが、なぜあのような齢の取り方をしてしまったのか、残念です。アバドも、メータも、オザワも・・・。

投稿: ねこたろう | 2010年4月11日 (日) 19時34分

はじめてお邪魔いたします。ふくふきママと申します。
4月10日のカルミナブラーナを聴き、わたくしも、なんとなく不満足なものが残りました。
指揮があまりよくなかった・・・。結論として、やはり、そう言わざるを得ないと思います。全体として、なんとも不完全燃焼な感じがしました。
合唱のみなさんへの称賛のつもりで拍手しましたが、指揮は、オケの力も引き出せていない、メッセージも伝わってこない、なんだか魂の抜け殻のようなものさえ感じ、「ムーティは、体調が悪いか、機嫌が悪いかのどちらかなのだろうか」と思いました。

投稿: ふくふきママ | 2010年4月11日 (日) 23時53分

ねこたろう様
コメントありがとうございます。
メータやアバドについては、かつては好きではなかったのですが、最近、時に素晴らしい音楽を聞かせてくれることに気づきました。ムーティにもそれを感じるかと思っていたのですが、少なくとも今回はそうではなかったわけです。
そうですね。私はムーティのリズムを特に無機的に感じます。これのどこに多くの人が感動しているのか、大真面目に考え込んでしまいました。

投稿: 樋口裕一 | 2010年4月12日 (月) 08時30分

ふくふきママ様
コメントありがとうございます。
あの場にいて、あの大喝采に加わらない人がいらっしゃったこと、とてもうれしく思います。
ひとことでいえば、「そんなに頑張らなくていいのではないか。そんなに大袈裟にやらないほうが、ずっとこの曲の迫力、魅力が出るのに・・」と思っていたのでした。
ブログ拝見しました。着物を着ている方を何人か見かけましたね。そのうちのお一人だったんですね。

投稿: 樋口裕一 | 2010年4月12日 (月) 08時33分

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