« NHK「どよう楽市」、そしてラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン | トップページ | ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンの二日目 »

ラ・フォル・ジュルネ1日目

 東京国際フォーラム付近のホテルに泊まって、ラ・フォル・ジュルネを聞きまくっている。11時ころまで聞いて、先ほど帰ってきた。忘れないために、寝る前に感想を書いておく。

 今日は9つのコンサートを聴いた。私はショパンは好きでなく、特にピアノ曲はあまり聞かないので、メンデルスゾーンが中心だ。

・レジス・パスキエのヴァイオリンでパガニーニの「24のカプリース」より13曲。

1曲目はめろめろ。音程は狂うし、指は動かないし。どうしたことかと思ったら、だんだんよくなって、3曲目あたりからは見事な演奏になった。朝の10時から超絶技巧の曲はつらいだろう。それに、目の前に、身動きし、声を出す3歳くらいの子どもがいたら、やりにくくて仕方がないだろう。惑わされずにしっかりと音楽を作ったレジス・パスキエにあっぱれ! 技巧をひけらかすのでなく、じっくり深い音楽を聴かせようとするタイプ。論理性がはっきりして知的なつくり。ただ、やはりちょっと音楽のつくりが古い感じ。今の若い人はもっと颯爽とやるだろう。

・オーケストラ・アンサンブル金沢 井上道義指揮 「フィンガルの洞窟」、交響曲第3番「スコットランド」

 井上道義はメロディを浮き立たせて歌わせるタイプ。メンデルスゾーンを多感でロマンティックに歌い上げる。私としてはもっと直裁的にして、むしろ論理を表に出すほうが趣味なのだが、これはこれで説得力がある。かなり劇的に盛り上げ、感動的! メンデルスゾーンの苦悩と激情が浮かび上がった。

・トリオ・ヴァンダラー モーツァルト ピアノ三重奏曲K542、ショパン ピアノ三重奏曲op8。

 元気のいい演奏。もう少し潤いがあっていいかなと思った。ショパンのこの曲は初めて聞いた。ピアノが大活躍するが、ヴァイオリンとチェロが目立たない。というか、ヴァイオリンとチェロの必要はないのではないか、一台でいいのではないかとずっと思って聴いていた。やっぱり、ショパンの室内楽はちょっと音楽的に問題があると思った。

・小菅優(ピアノ)、メンデルスゾーン「無言歌集」より6曲。「前奏曲とフーガ ホ短調」「厳格な変奏曲 ニ短調」

 すばらしい!! 私はピアノはあまり聴かないのだが、小菅さんのピアノについては、うっとりしてしまう。柔らかいタッチなのに、芯がある。音もリズムもきれい。無言かもすばらしかったが、その後の2曲がよかった。バッハやベートーヴェンを思わせる曲。メンデルスゾーンは一般には甘ったるい作曲家と思われているが、決してそうではない。知的で論理的で、ぐっとロマンティックな感情を押し殺して論理的に処理している。そして、苦悩や怒りを面に出さず、あくまでも高潔で高貴にとどめる。そこに限界があるといえば言えるが、ユダヤ人として生きるにはそうするしかなかったのだろう。そんなメンデルスゾーンの一面がとてもよく現れた曲であり、演奏だった。

・村治佳織(ギター)、パスキエ(ヴァイオリン) ショパン「華麗なる円舞曲」ノクターン9-2 マズルカ33-4 パガニーニ 大ソナタ

 ピアノ曲がギターで演奏されると華美なところがなくなり、内面的になる。じっと心の中を見つめている感じ。村治さんの演奏がそうなのかもしれない。ただ、やはり私はギターだけだと、音が途切れているのが気になって仕方がない。ヴァイオリンと合奏して、しっくりする。

・ペーター・ウェスペルウェイ(チェロ)、パオロ・ジャコメッティ(ピアノ)、ショパン 序奏と華麗なるポロネーズ、チェロ・ソナタ、マイヤーベア「悪魔のロベール」の主題による協奏的大二重奏曲 

 とてもよい演奏だった。このチェリストはロマンティックなものが合う。ピアノも見事。ヴィヴィッドで音がきれい。ロマンティックにうねり、しみじみと情感を盛り上げる。ただ、もう少し遊びがあっていいと思った。生真面目すぎる。このピアニストはもっと遊びが多かったはず。もっと自由にやるほうが面白い。

・ルイス・フェルナンド・ペレス(ピアノ)、パリ室内管弦楽団、ウィルソン・ヘルマント指揮 メンデルスゾーン「フィンガルの洞窟」ピアノ協奏曲第2番

 私はピアノよりも指揮に感心した。東洋人の顔をしているので、プログラムを確認してみたら、ジャカルタ生まれだという。小柄だが、音楽のつくりは大きい。大きく捉えて、大きなうねりを作っていく。パリ室内管弦楽団のしなやかで柔らかい音に驚いた。ピアノも見事。溌剌として音楽が生きている。が、もっと暗い情感があっていいのではないかと思った。何しろ、何度も言っているようにメンデルスゾーンは生涯にわたって繰り返し差別を受けてきたユダヤ人なのだから。そうした暗いものを昇華して高貴なメロディにしているのがメンデルスゾーンなのだ!

・ミシェル・コルボ指揮、ローザンヌ声楽アンサンブル ソフィー・グラフ(ソプラノ)、ヴァレリー・ボナール(アルト)、クリストフ・アインホルン(テナー)、ペーター・ハーヴェイ(バリトン) メンデルスゾーン オラトリオ「パウロ」

 すばらしい演奏。祈りにあふれ、天国的なメロディにあふれている。コルボの指揮も情感豊かで、誇張がなく、しみじみといい。声楽人も充実している。とりわけソプラノのソフィー・グラフの美しい声に感動。それにしても、プロテスタントに改宗したものの、ユダヤ人であることに誇りを抱いていたメンデルスゾーンは、この曲をどのような気持ちで作ったのか。分裂した思いがあったに違いない。そうした思いがこの天国的なメロディになっているのだろう。

・リチェルカール・コンソート ポロネーズを集めたコンサート

 最高だった!! ファリーナ、ヒューム、シュメルツァー、マレといったバッハ以前の作曲家たちに始まり、バッハ、ハイドン、パガニーニなどのポロネーズが演奏された。バッハもすばらしいが、ほかもいい。フィリップ・ピエルロのヴィオラ・ダ・ガンバやバリトンが中心。フィリップ・ピエルロを中心とするリチェルカール・コンソートが演奏すると、木のぬくもりが伝わってくる。バロック時代の信仰にあふれ、暖かい人間の営みのあった家庭が見えるような気がする。アンサンブルもいい視、なによりも、楽しい。祈りの心がある。これを聴くと、これからバロック音楽を聴き続けたくなる!

|

« NHK「どよう楽市」、そしてラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン | トップページ | ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンの二日目 »

音楽」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
詳細なレポート、参考になります。
1日9公演とは、すごいですね。
私は明日(3日)から2日間、合わせて5公演のチケットをゲットしています。
楽しみです。早く寝なければ………………

どこかですれ違うかも知れませんね。

投稿: ムーミンパパ | 2010年5月 3日 (月) 00時43分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/48248726

この記事へのトラックバック一覧です: ラ・フォル・ジュルネ1日目:

« NHK「どよう楽市」、そしてラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン | トップページ | ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンの二日目 »