« 『ローエングリン』の新しいDVDは素晴らしい! | トップページ | エサ=ペッカ・サロネン指揮、フィルハーモニア管弦楽団に興奮した! »

ファビオ・ルイジ・五嶋龍・ウィーン響

 5月29日、サントリーホールで、ファビオ・ルイジ指揮、ウィーン響の演奏で、まずはブラームスの「大学祝典序曲」を聴いた。これはよかった。ルイジの音は、明るくて開放的なこの曲に合っている。そのあと、五嶋龍のヴァイオリン独奏が加わって、ブラームスのヴァイオリン協奏曲。

「大学祝典序曲」が悪くなかったので、ちょっと期待したが、やはり、先日の印象は変わらなかった。見事な音、切れがよく、しかも潤いのある音楽の流れ、気品あふれる知的な構成。そうでありながら、私の心にはまったく響かない。五嶋龍のヴァイオリンも、もちろん達者だが、ブラームス特有の憂いや暗さや重みがない。少なくとも、私の好きなブラームスではなかった。

 五嶋龍については、2,3年前、ショスタコヴィッチ(?)のコンチェルトを聴いた覚えがある。あっけらかんとして開放的で怖いものしらずの音楽だった。それはそれで小気味よかった。ところが、ブラームスになると、かなり内面的に演奏しようと意識しているのか、五嶋龍のいいところがあまり出ていないように思った。

 アンコールに、ヴァイオリン独奏で「パガニーニアーナ」。これは、言葉をなくすものすごさ! 五嶋龍はこうでなくっちゃ! 流麗、華麗、しかも音がきれいで、細身で研ぎ澄まされている。鋭く切り込んでくる。爽快にして、わくわくする。よくもこのような難曲をまったく破綻なく、しかも音楽的にも見事に弾きこなせるものだ。まさに神業。堪能した。

 後半はベートーヴェンの交響曲第7番。ベートーヴェンになったとたんに、それまでブラームスではまったく反応しなかった私の心が反応し始めた。

 ウィーン響の音の美しさ。ルイジは、実に見事に音を組み立て、勢いをつけ、ダイナミックに、しかも知的に進めていく。あくまでも知的で、狂気に至らないのが物足りないが、しかし、実に見事な造形。第二楽章の繊細で細かい音作り、スケルツォの音のダイナミズム。最終楽章はただひたすらリズムと音の洪水。見事だった。

 アンコールは、先日とまったく同じ。曲順が異なるだけ。「ウィーン気質」と「電光と雷鳴」「ピチカート・ポルカ」。これは実に手馴れたもので、素晴らしい。

 終演後、途中、仕事の打ち合わせをし、その後、急いで国立の音楽茶屋「奏」に向かい、シティフィルのフルーティスト海冶陽一氏とヴァイオリニスト吉田巧氏によるデュオのライブを聞いた。前半はフォスターなどの親しみやすい曲。後半は、ドビュッシー、バッハ、モーツァルトを中心に。最後は「ピノキオ」の音楽。この「ピノキオ」の音楽については、曲の素性がよくわからなかった。

 ウィーン響の名人技を聞いた後だったが、これはこれで実によい演奏会だった。10数人の友人たちとともに、飲み食いしながら、おしゃべりしながら楽しむ音楽というのはいいものだ。

 ともあれ、充実した一日だった。

|

« 『ローエングリン』の新しいDVDは素晴らしい! | トップページ | エサ=ペッカ・サロネン指揮、フィルハーモニア管弦楽団に興奮した! »

音楽」カテゴリの記事

コメント

先生、こんばんは。
昨日は私もこのコンサートに参りました!

サントリーホールでは、オケの近くで指揮者もよく観察できる(予算の都合もあって)P席がお気に入りなのですが、昨日ほどP席に後悔したことはありません。

まず大学祝典序曲。
スリリングな序奏のあとのトランペット、流れるようなヴァイオリン、「ラ講」ファゴット、大太鼓・シンバル・トライアングルなどの鳴りものも総動員した最後の演奏部分、まるで軍楽隊のようでもありますが、コンサート専門のウィンナシンフォニカーの息のあった名刺曲にぴったりでした!
なにも考えられず、オケの演奏に引きずり込まれる快感を覚えました。
ベトベン7番も私の大好きな曲。アンコールのウィーンナーワルツも十八番でしょう、なにも言うことなし。楽しめました!
しかし、音が....

私の席はP席のど真ん中。つまり、指揮者ルイジの真正面だった(ルイジ観察は面白かったです)ために、特に金管が全く響いてきませんでした...。(;ω;)
フルートを除いて...。(ベトベン7番では特にフルートの音は美しく響いてきました。)
しまったー( ̄Д ̄;;なんとか後ろのほうでもいいから前面せめてバルコニー席をとっておけば、と後悔した次第です。
さらに、五嶋龍です。真後ろからですよ...。
それに、このシンフォニカーのイングリッシュホルンなんかも巻きの少ない変わった形をしていたんですが、全員すごく古いいい楽器を持っているように見えました。

それにしても、龍クンはすごかった!
パガニーニの24番をアレンジした??パガニーニアーナ。最新アルバムの目玉ですし、独奏ですから五嶋龍ファンのだれもがアンコールで演ると期待したはずです。(プログラムに含めたほうがよかった気がしますが)
ジェットコースターのような一弓アルペジオ、それが龍クンの手で300歳のストラディバリを鳴らしているんですから....。
演奏が終わると、コンマスと1Vn首席の方が顔を見合わせていました。

コンサートの後は、サイン会の大行列に並びました。
本当はルイジにサインしてほしかったのですが、ルイジのサイン会は急遽中止となり、龍クンのサインをいただきました。
終始にこやかで、声をかけるとちゃんとこちらの顔をみてニッコリ「ありがとうございます」なんて言ってくれました。

投稿: Tamaki | 2010年6月 1日 (火) 00時11分

Tamaki様
感想ありがとうございます。
P席はつらいでしょうね。私も二度ほど経験がありますが、そのうちの一度は、10年ほど前のジャン・フルネ指揮、都響のコンサート形式による『ペレアスとメリザンド』でした。オペラでP席は、最悪でした! フランス文学を勉強しましたので、これは好きなオペラの中でほとんど唯一、ある程度、言語を理解できるオペラのはずなのに、まったく聞き取れませんでした。
五嶋龍のパガニーニアーナは本当にすごかったですね。あれを聴くと、誰しも顔を見合わせたくなると思います。
サインの行列、私も横目に見ました。ものすごい行列でしたので、ずいぶん待たされたのではないでしょうか。

投稿: 樋口裕一 | 2010年6月 1日 (火) 20時23分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/48501165

この記事へのトラックバック一覧です: ファビオ・ルイジ・五嶋龍・ウィーン響:

« 『ローエングリン』の新しいDVDは素晴らしい! | トップページ | エサ=ペッカ・サロネン指揮、フィルハーモニア管弦楽団に興奮した! »