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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンの二日目

今日(5月3日)も昨日に続いて9つのコンサートを聴いた。今日は実に充実していた。すばらしい演奏がいくつもあった。寝る前に感想をまとめておく。

・ピエール・アンタイ(チェンバロ) バッハ 平均律クラヴィーア より前奏曲とフーガ

 私はバッハは好きだが、実は鍵盤楽器のソロはあまり聴かない。だから、あまりなじみのない曲。とはいえ、ぐっと来るところが多々あった。アンタイは速い音の積み重ねによって魂の高揚を鋭く作り出す。

・竹澤恭子(ヴァイオリン) シンフォニア・ヴァルソヴィア ヤツェク・カスプシク指揮  モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第5番

小菅優がメンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番を演奏する予定だったが、急病ということで、急遽、曲目変更。ロッシーニの序曲(あれ、何だっけ? 12時間以上たったので忘れてしまった。確か「アルジェのイタリア人」だったと思う)と、小曽根真さんのショパンのアレンジ。竹澤さんのヴァイオリンはとてもいいのだが、初めて聴くカデンツァ。あまりに現代音楽的で、モーツァルト若書きの溌剌とした曲の感興が壊れる。このカデンツァにどのような意味があるのだろう。疑問。指揮のカスプシクもしっかりとオケをコントロールしている。なかなかいい指揮者。それにしても、小菅さんの病気が何でもなければいいが。

・マリア・ケオハネ(ソプラノ)、リチェルカール・コンソート フィリップ・ピエルロ指揮 ヘンデルのアリア集。「ファラモンド」や「メサイア」「ジュリオ・チェザーレ」「リナルド」などより。

本当にすばらしい。ケオハネは、昨年ナントで聴いて圧倒され、このブログに報告した覚えがある。芯のつまった美声で、迫力があり、しかも澄んでいる。音程も確かで歌いまわしも見事。ピエルロの指揮も、リチェルカール・コンソートも相変わらずすばらしい。最高だと思った!

・イーヴォ・ポゴレリッチ(ピアノ)、シンフォニア・ヴァルソヴィア ゲオルク・チチナゼ指揮 エルスネル交響曲ハ長調 ショパンのピアノ協奏曲第2番。

エルスネルというのは、ベートーヴェンと同世代のポーランドの作曲家らしい。初めて知った。曲は面白くなかった。ポゴレリッチは、なんとも凄い。よい悪いはともかく、すさまじい。これはショパンではない。ショパンらしいところはまったくない。華やかできらびやかな部分はすべてほとんど聞えない。超スローテンポで、ただひたすら絶望的で暗く、喘いでいる。ショパンの協奏曲が、ポゴレリッチの手にかかると、このような救いのない音楽になるのが不思議だ。予定の曲目が終わったところで、すでに終演予定時間を10分ほどオーバーしているのに、アンコール(第二楽章を再び演奏)を、これまたスローで、しかも以前とかなり違う雰囲気で演奏して、30分オーバー。いやはやなんとわがままな生き方!

 確かにポゴレリッチで聴くと、ショパンが私の嫌いなショパンでなくなり、少なくとも私にとっては好みになる。が、やはりこれはやりすぎではないか。観客の一人がポゴレリチに向かって怒鳴っていた。「このどアホ」と聞えた。気持ちはよくわかる。ショパン好きには耐え難い演奏だっただろう。

・タチアナ・ヴァシリエヴァ(チェロ) バッハ 無伴奏チェロ組曲1・5

 ポゴレリッチが時間超過したので、プレリュードは聴けなかった。昨年聴いたとおりの流麗で踊るようなバッハの無伴奏。前回5番を聴いて、まだ十分消化しきれていない部分があると思ったが、今回はかなりよかった。が、これは難しい曲。まだ、不十分に感じるところもあった。もう少し、絶望的な感情を出そうとするのか、そうでないのか、どんな音楽にするのか明確にしてほしいと思った。

・トリオ・ショーソンによるショパン「ワルツ変イ長調 作品42 序奏と華麗なるポロネーズ。ファイト・ヘルテンシュタインのヴィオラが加わって、シューマンのピアノ四重奏曲

 シューマンはとてもよかった。溌剌として音楽が生きている。シューマンの第四楽章がすばらしい音楽だと再認識。

・ライプツィヒ弦楽四重奏団 メンデルスゾーン 弦楽四重奏曲第6番 ベルトラン・シャマユ(ピアノ)が加わってシューマンのピアノ五重奏曲

 すばらしい演奏だった。メンデルスゾーンのこの曲は知られざる名曲。第2楽章は泣ける。メンデルスゾーンがベートーヴェンの後期の弦楽四重奏の影響を受けて書いた曲だが、苦悩がにじみ出る。しかし、メンデルスゾーンらしく、怒りをぶつけることはない。そうした心のうねりが十分に表現された演奏だった。

 シューマンもすばらしかった。「詩人の恋」に次ぐシューマンの最高傑作ではないかと思った。音がうねり、重なり、ロマンティックで多感でドラマティックな感情を描いていく。見事!! ライプツィヒ弦楽四重奏団はすばらしい団体だと思った。シャマユとも息がぴったり。

 

・趙静(チェロ) クレール・デゼール(ピアノ) ショパン「ノクターン 27-1」 チェロ・ソナタ 序奏と華麗なるポロネーズ ポッパー「妖精の踊り」

 ソナタが凄かった。ウェスペルウェイの演奏と比べてこちらのほうがずっと感銘を受けた。ウェスペルウェイは男性なので、どうしても客観的で論理的。趙静は、ほとんど女性演歌の世界。音楽にのめりこみ、楽器と一体になって女の情念を語ろうとする。音楽にべったりと感情移入し、まるで音楽の巫女。その迫力たるや凄い。ソナタ以外の曲も同じ感じ。クレール・デゼールはもっとずっと抑制的で、趙静を上手にサポート。

・ウラル・フィル ドミトリー・リス指揮 ベルリオーズ「幻想交響曲」

 これまた凄い演奏。ひたすら大袈裟でドラマティックで、音が大きく、ど迫力。悪く言えば下品。知的な工夫があるわけではない。曲を的確に捉えているとも思えない。私の好きなタイプの音楽ではない。が、ここまで大袈裟にやられると、やはり納得せざるを得ない。終わったときには、感動を覚えていた。

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コメント

2日続けて9つのコンサートですか。
私ならいくら好きでも消化不良を起こしそうです。
それはともかく、私は3公演、楽しく聴いて来ました。
ブログにもありますが、特に最後のトリオ、素晴らしかったです。
夜更けに室内楽、良いものですね。
残り1日、精一杯楽しみたいものですね。

投稿: ムーミンパパ | 2010年5月 4日 (火) 02時02分

ムーミンパパ様
おはようございます。
3日目に、あと少しで出かけるところです。
6年前、日本で始まる前にナントに出かけて、コンサートをハシゴする快感を覚え、病み付きになりました。躁状態になり、疲れを感じません。ただ、退屈な演奏にぶつかると、どっと疲れが出てきます。
ブログ拝見しました。私とは重なっていなかったようですね。よろしかったら、声をかけてください。

投稿: 樋口裕一 | 2010年5月 4日 (火) 07時59分

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