« 劇団四季の「ハムレット」のこと | トップページ | 藤原歌劇団『タンクレディ』の見事な上演、そしてマナーの悪い客 »

iPadを手に入れたこと、そして『ポー川のひかり』

 多摩大学の同僚たちがさっそくiPadを見せびらかすので、つい私もほしくなって、一昨日、アップルストア渋谷店に出向いてiPadを予約した。3G、64ギガ。「いつ、入るかわからないが、入荷したら、知らせる。そのときには、当日か翌日に取りに来てもらえれば、お渡しできる。それをすぎたら、次の機会になる」と言うことだったので、かなり遅くなるだろうと思っていた。ところが、昨日、さっそく、入荷の連絡。今朝、出かけたのだった。

 が、予約していたのに、1時間以上、行列を作って、外で待たされた。「手続きに30分ほどかかるので、そのつもりで来てほしい」とは言われていたが、まさか、これほど待つとは思わなかった。しかも、外で待つなんて! 真夏ではないとはいえ、かなり暑い。私のような腰痛もちには、ことのほかつらい。予約していない人も並んでいた。どうやら、予約者以上に入荷できたようで、予約していなかった人も、午前中に並んだ人は、入手できたようだった。

 自分の意思で並ぶのなら仕方がないが、予約している人が購入にやってきて、なぜ暑い中で待たなければならないのか、かなり疑問を抱いた。まさしく殿様商売。売ってやるという態度に見えてしまう。店内に入ってからは、店員さんの感じはとてもよかったので、このシステムに問題がありそう。

 入手してから、自宅にもどって、さっそく起動してみようと思ったが、できなかった。薄っぺらなマニュアルを見ても、さっぱり。アップルストアのHPを見ても、基本的なことがわからない。どこに電源があるのかさえもわからない。サポート電話をかけてやっと起動できた。ここにも、殿様商売を感じる。もう少し親切なマニュアルがあっていいのではないか。私のようなITオンチだって、たくさんいるはずなのだから。そして、私などは、まだましなほうで、もっとITに弱い年寄りはたくさんいるに違いないのだから!

 それから5時間以上たつ現在、起動した時点からほとんど進歩がない。メールも通じるようにできないで困っているし、アプリケーションもどうやっていれればよいのかわからない。途方にくれている。

 月曜日に大学に行って、すでに使っている先生たちに尋ねるしかない。多摩大学経営情報学部は、さすがにITに強い先生が多い。こんな学部に所属しながら、めっぽうITに弱い私(自慢ではないが、エクセルもパワーポイントも使えない!)としては、これらの先生方は実にうれしい存在だ。

 それにしても、iPadの予約と引き取りに、2回渋谷に行ったが、騒音の凄まじさに辟易した!! ハチ公前の交差点では、大きな画面から大きな音が出ている。そこに、大音響の宣伝カー。ほとんどすべてのお店からも音楽が漏れている。みんなはこれに平気なのだろうか。私は、あまりの騒音に頭がおかしくなりそう。このような騒音に関しては法律で厳しく禁じていいと思うのだが。独裁が許されるのなら、私は真っ先に、公的な場における騒音を厳しく禁じる法律を作るだろう。

 ところで、昨日、エンマルノ・オルミ監督の『ポー川のひかり』のDVDをみた。その感想を忘れないうちに書いておく。

 『木靴の木』のオルミ監督の2006年の映画。原題は「百本の釘」。ボローニャ大学で、大量の古書が、まるで磔をするように釘付けされているのが発見される。犯人は、キリストに風貌の似た若き哲学教授だったことが判明する。哲学教授は、それまでの生活を捨て、ポー川の川辺の廃墟に住み着いて、まるでホームレスのように生活を始める。近隣の人たち、とりわけ法に反してポー川の川辺に住む老人たちやパン屋の女性が哲学教授を「キリストさん」と呼んで手助けする。哲学教授は、老人たちとの生活を楽しみ、彼らの生活に溶け込み、ポーの川辺でのどかに幸せいくらし、ときにイエス・キリストのように老人たちの前で説教をする。だが、ポー川の再開発にともなって、老人たちはポー川から追い出されようとし、それを手助けした哲学教授古書を釘付けした罪で逮捕される。そして、警察で、「本を読むよりもコーヒーを飲むほうがいい」「本を愛するのは、人を愛していないことだ」などと語る。そして、司祭に「最後の審判で神の前で釈明せよ」と迫られて、「神こそ、この世の苦痛について釈明するべきだ」と言い返す。

 雰囲気はとてもいい。『木靴の木』の映像を思い出す。自然とともに生きる人々を実に美しく描いている。だから、もちろんとてもいい映画だと思う。が、『木靴の木』に比べると、作品の弱さを感じざるをえない。

 もしかしたら、オルミはパゾリーニの『テオレマ』を意識しているのかもしれない。イエス・キリストを思わせる人物が現代に現れて、現代社会の「定理(テオレマ)」を図式的に示すのが、『テオレマ』だったが、それと同じように、きっと敢えて図式的にしたのだと思う。そして、オルミは70歳を越して、このような境地に達したのかもしれない。だが、やはり、「書を捨て、権威を忘れて、自然や人と交わろう」というメッセージはあまりに図式的で、あまりに安易に見える。

 ただ、「神こそ、この世の苦痛について釈明するべきだ」という一言は衝撃的だと思った。昔からいわれてきた、「なぜ、神は人類にこれほどの苦痛を与えるのか」という問いを言い換えたものかもしれないが、これほど直接的な言葉を、これまで本の中で読んだことはなかった。

|

« 劇団四季の「ハムレット」のこと | トップページ | 藤原歌劇団『タンクレディ』の見事な上演、そしてマナーの悪い客 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/48612215

この記事へのトラックバック一覧です: iPadを手に入れたこと、そして『ポー川のひかり』:

« 劇団四季の「ハムレット」のこと | トップページ | 藤原歌劇団『タンクレディ』の見事な上演、そしてマナーの悪い客 »