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カザル弦楽四重奏団のヤナーチェク『クロイツェル・ソナタ』に驚嘆!

 6月17日、武蔵野市民文化会館で飾る弦楽四重奏団の演奏を聴いた。ヴァイオリンの二人が女性、ヴィオラとチェロが男性(二人の男性は、顔が似ているし、苗字が同じなので兄弟だろう)の若手の団体だ。ヨーロッパではかなり評価が高いようだが、今回が日本で最初の演奏会だという。

 ヤナーチェクの『クロイツェル・ソナタ』が圧倒的に素晴らしかった。

 前半はハイドンのニ長調HobⅢ.34「太陽弦楽四重奏第4番」。あまりおもしろいと思わなかった。とんでもなくうまいのだが、ハイドンを現代曲のように演奏する最近の弦楽四重奏団の一つだと思った。ハイドンの古典派らしいしみじみとした味わいが現れない。疾風怒涛というわけでもない。なんだかわけのわからない曲だと思った。眠かった。

 次に、1962年生まれだというディーター・アンマンという作曲家の弦楽四重奏曲第一番「バースト・ムーヴメント」。これはおもしろかった。伝統にのっとりつつ、十分に新しい弦楽四重奏曲。演奏も申し分なし。目が覚めるような曲、目が覚めるような演奏だった。

 後半、まずはベートーヴェンの「セリオーソ」。思ったとおりの演奏。確かにものすごい。うまい。びしっと合っている。メロディよりも、アタックの強さ、アクセントの強さで聞かせようとする。まさしく現代曲風のベートーヴェン。それはそれですごいとしか言いようがないのだが、「ここまでやることはなかろう」と思ってしまう。第三楽章の冒頭で第一ヴァイオリンの弦が切れるというハプニングがあったが、ともあれ、最近の若い弦楽四重奏団にありがちな、あまりに達者で、あまりに快速であまりに爽快なベートーヴェンだった。

 この時点では、「うまい弦楽四重奏団だけど、好みではない」と思っていた。が、ヤナーチェクの弦楽四重奏曲第一番「クロイツェル・ソナタ」が始まって、そのすごさに圧倒された。

 このブログでも何度か書いたとおり、私は日本ヤナーチェク友の会の会員の一人であって、かなりヤナーチェクが好きだ。愛好会の主要メンバーほどの知識も熱意もないが、それなりのヤナーチェクへの思いを抱いている。

 今日の演奏は、私が思い描くとおりの演奏。疼くような第一楽章。心の奥から、押さえつけていた官能がせりだしてくる。苦しみにあふれた官能。それが楽章を追うごとに徐々に表に出てくる。第四楽章では、官能が勝利を得る。とはいえ、それは表沙汰にできるようなものではなく、あくまでも秘めたものだ。

 そのようなヤナーチェク特有の「うずき」がはっきりと聞き取れた。身体中が痺れるような感動を覚えた。

 これだから、武蔵野市民文化会館にまた通いたくなる。

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コメント

ほんとに、最近の武蔵野文化会館では、「弦楽四重奏曲は私には難し過ぎるのかな?」と感じ始めていたのですが、ストレートに楽しめました。肉マンではない、アンマンもこんなに多様な音色で、しかも引き込まれる現代曲は始めてでした。あまりに多様で弓が傷んでいるのではないかと心配になる熱演でしたネ。聴衆皆楽しめたようで、日本での初ステージは彼らも戸惑うほど良かったのでは。

投稿: 泥 | 2010年6月18日 (金) 18時49分

泥様
コメントありがとうございます。
アンマンの曲、本当に楽器が痛むのではないかと心配なほどでしたね。あんな曲をよく演奏しているとすれば、弦が切れるのも仕方がないだろうと思えるほどでした。会場で現代曲のCDを2枚買いましたが、まだ聞く時間が取れずにいます。ともあれ、現代曲に疎い私でも、十分に楽しめる現代曲でした。

投稿: 樋口裕一 | 2010年6月19日 (土) 10時10分

今夜も楽しみました、アルディッティ弦楽四重奏団。今回は熟成した演奏 。なのに現代曲中心。対比が見事。日本に表敬してもらえる武満さんがいて良かった。ベートーベンのフーガなど私でも引き込まれました。傑作はHラッヘルマン「グリド」、クラッシックでありながら笑ってしまいました。まじめな演奏でしかも卑猥な会話を聞いているような。まるでピカソの「泣く女」の音楽版でした。武蔵野市民文化会館:アルテに感謝です。

投稿: 泥 | 2010年6月22日 (火) 23時52分

泥様
コメント、ありがとうございます。
ブログにも書いたとおり、実は私は、アルディッティ弦楽四重奏団には、あまり感激しませんでした。もちろん、よい演奏だとは思うのですが、私の好きな大フーガではなかったのでした。もっとガツンとショックを与えてほしかったのでした。
ラッヘンマンの曲について、ピカソの「泣く女」の音楽版という表現、おもしろいですね。なるほど、そのように聴くと、もっと楽しめたかもしれません。

投稿: 樋口裕一 | 2010年6月23日 (水) 07時53分

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