二期会week 「ラヴェルの宝石箱」を楽しんだ
ここ数日、iPadに悩まされている。まだまだ自由に使えるようにならない。
多摩大学の先生方に尋ねて、青空文庫も産経新聞も読めるようになり、スケジュールを書きこみ、HPを覗くことはできるようになったのだが、肝心のメールの設定ができない。私は二つのアドレスを使っているのだが、一つはまずまず使えるようになった(ただし、不自由な部分は残っている)。もう一つは、エラーが出続ける。そのほか、わからないところだらけ。いちいち、先生方に尋ねるのも気が引ける・・・
6月18日、大学の授業終了後、雨の中、車でサントリーホールに向い、車は全日空ホテルの駐車場に入れて、二期会weekの5日目「ラヴェルの宝石箱」を聴いた。ナビにあと4キロと出てから30分ほどかかったので、焦った。ラヴェルの歌曲とチャーミングなオペラ「子供と魔法」を是非ききたかった。
第一部は、田中麻理のソプラノによる「五つのギリシャ民謡」、相可佐代子のメゾソプラノによる「マダガスカル島の歌」、駒井ゆり子の「シェエラザード」。ピアノは長野美保。田中麻里の、ちょっと硬さは残るが、美しい声、相可佐代子の雰囲気のある、これまたしっかりした歌、駒井ゆり子の伸びやかで安定した歌唱。日本の歌手のレベルの高さを再認識。20年ほど前までには考えられなかったことだ。
ただ、やはりラヴェルの歌曲、いやそもそもフランス歌曲は難しいとつくづく思う。発音がまだフランス人の域に達していないのか、フランス語の達人たちの歌うフランス歌曲特有の香りが立ち上がらない。かつてジェシー・ノーマンが歌ってさえ、違和感を覚えたのだったが、それと同じような、あと一歩フランス歌曲になりきれていないところが感じられる。ドイツリートやイタリアのアリアを歌うときのような、声の威力に頼った表現が多すぎるように思う。
ピアノの長野美保は、フランスらしい音をしっかりと出していた。とても好感が持てた。ただちょっと遠慮しすぎている感じ。もっと自己主張していいと思う。もっとも、ドイツモノと違って、あまり主張しすぎても音楽が壊れてしまいそうだけど。
第二部第一部で歌曲を歌った三人に数人の歌手や合唱が加わって、ピアノ伴奏によるオペラ「子供と魔法」。アニメ風のCGを使った演出。実はこのオペラ、かなり好きなのだが、実演を見たことがない。初めての経験だった。
これはとても楽しかった。歌曲では違和感のあった三人だが、オペラではそれはまったく気にならない。テノールの岡本泰寛とバリトンの栗原剛もとても安定している。動物やモノたちが、魔法の中で子供と戦い、和解するという、「くるみ割り人形」などと同じような趣向の短いオペラ。ラヴェルとほぼ同時代のフランスの作家、ヴァレリー・ラルボーの短編小説に同じようなものがあったように記憶する。
ピアノ伴奏なので、オーケストラの雰囲気が出ないのは残念だが、フランスの子供の家庭の雰囲気もしっかりと出ていた。CGもおもしろい。なるほど、こうすればそれほど大掛かりに出なく、おもしろい演出ができる。
ただ、せっかくこのようなCGを作ったのなら、字幕を入れてもよかったように思う。ちょっと工夫すれば、それくらいできそうな気がするが。このオペラを映像で何度も楽しんでおり、フランス語はほかの言語よりは多少は理解できる私でも、しばしば何が行われているのかわからなかった。初めてこのオペラを見る人は戸惑っただろう。
ともあれ、このオペラを見ることができてとてもよかった。
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