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「ダモイ」に涙を流した!

 7月29日、実に充実した一日だった。演劇「ダモイ」に心の底から感動。

 その前に、多摩大学で和田秀樹氏の講演を聞いた。和田さんとは、20年近く前から交流がある。多摩大に来ていただくのも二度目。高齢社会の問題点について、お話いただいた。実に刺激的。

 これまでの医療の常識は、超高齢社会では通用しない。たとえば、現在の医療ではコレステロールは危険視されるが、むしろコレステロールの高い人のほうが癌にかかりにくく、鬱になりにくく、長生きする傾向が強い。高齢者は複合的な要因で病に罹る傾向が強く、現在の専門化した医療では対応できない。そのような内容にとりわけ感銘を受けた。

 その後、町田市民ホールに車で移動して、町田演劇鑑賞会の主催による『ダモイ 収容所から来た遺書』をみた。

 辺見じゅん作のノンフィクション大賞を得た『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』に基づく演劇。私は、原作は昨年読んで、深く感動した。

 主人公は山本幡男。戦中、満鉄で働いていた山本は、ロシア軍太平洋戦争の末期、侵攻して来たソ連軍に捕らえられ、シベリアの収容所に抑留され、過酷な強制労働を課されることになる。それでも、文才豊かな山本は収容所内で秘密のうちに句会を開き、文集を編集し、美しい詩を書いて、戦友たちに慕われる。だが、ロシア語の達者な山本はソ連軍に重宝されながらも、スパイを疑われ、ほかの人々が故国に帰っていくのに、いつまでも日本に帰れない。「ダモイ(故国へ)」を夢見ているが、ついに病に倒れ、シベリアで過酷な強制労働を長文の遺書を日本に残してきた母と妻と四人の子どもたちに書き残して、抑留されて10年近くたって死ぬ。

 山本を慕う戦友たちは、遺書を故国の家族に渡したいと思うが、文章を持ち込もうとするとスパイとみなされる。そこで、戦友たちは4500字の長文の遺書を暗誦し、日本に帰った人が家族に聞かせることを決意する。戦友たちは手分けして必死に暗誦し、それを実行する。

 そんな歴史上の事実が語られる。これがまったくの事実なのだから、驚いてしまう。まさしく知られざる歴史。

 

 私は、立教大学時代の恩師である山本顕一先生に誘われて、この演劇を見に行った。山本先生は、この芝居の主人公、山本幡男の長男であり、劇の最後、遺書の中で語りかけられる人物の一人にほかならない。

 小中陽太郎先生に教えられて、この本と山本先生の関係を知った。それまで、山本先生と親しくさせていただきながら、先生がこのような境遇の方だったとは、まったく知らなかった。フランスに行く飛行機の中でこの本を夢中で読み、感動の涙に耽ったのを覚えている。

 そして、演劇を見て、感動を新たにした。

 この複雑で悲惨で深い物語を、たった三人の物語に編集した作・演出のふたくちつよしさんの手腕に脱帽。三人に集約したために、焦点が定まり、悲劇がいっそう際立つ。しかも、悲惨になり過ぎない。たった三人の台詞劇なのに、巨大な戦争に悲惨を実に雄弁に語っている。

 そして、明るく軽い演技であるがゆえに、重い歴史をひしひしと感じさせた山本役の下條アトムさんと、戦友役の新納敏正と大出勉さんの演技力と熱演に圧倒された。リアルすぎず、芝居臭くもなく、実に見事。

 後半、涙があふれてきた。私が見たのは、山本先生ご夫妻にはさまれた席だった。自分の父親の偉大で気高く、しかも悲惨な生と死を目の当たりにし、自分にあてられた遺書が読み上げられるのを見るのはどんな気持ちだろうと、山本先生の横にいながら考えた。涙があふれ、ほとんど声をあげて泣きそうになったが、横にいる当事者の山本先生が泣かずにいるのに、無関係の人間が泣き出してはあまりにみっともないと思って、ぐっと抑えた。

 が、山本先生も必死に我慢していたと見えて、最後には慟哭のようなものが聞こえてきた。

 シンプルな舞台装置、シンプルな音楽、すべてが雄弁だった。素晴らしい名作だと思った。こんなに演劇に感動したのは初めてだった。演劇を見るときに感じる違和感も、まったくなかった。ぐいぐいと芝居の世界に引き込まれた。

 このような名作をもっと多くの人に見てもらいたいものだ。数千回のロングランになってしかるべき名作だと思う。戦争を描く名作の一つとして、学校などでも上演されるべきだと思った。

 終演後、山本先生ご夫妻のほか、プロデューサーの岡田潔さん、演出のふたくちさん、三人の出演者、作曲の内藤正彦さん、ギターの小川和隆さんらと町田の居酒屋での打ち上げに参加。ただし、私は車で出かけたので、アルコールなし。それでも、楽しく感動を語り合うことができた。

 それにしても、素晴らしい芝居だった。

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