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アルミンク+新日フィルの『四つの最後の歌』など

 7月24日、サントリーホールで、クリスティアン・アルミンク指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団による演奏で、ブラームスの「悲歌」、リヒャルト・シュトラウスの「四つの最後の歌」、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」、ブルックナーの「テ・デウム」を聴いた。いずれも悪くなかった。ところどころ、感動するところがあった。が、激しい感動には至らなかった。

 栗友会合唱団の合唱はよかった。素人による六本木男声合唱団を聴いて間がないせいもあるかもしれないが、最初に合唱が聞こえてきたときには、あまりの素晴らしさに驚嘆したほどだった。オケも、もちろんアルミンクのしなやかで自然な音楽をうまく鳴らしていた。ただ、一階の一番後ろの席だったせいか、それともオケに問題があるのか、音が前に出てこない印象を受けた。

「四つの最後の歌」は、私の大好きな曲。ソプラノのイルディコ・ライモンディも悪くなかった。知的で美しい声。ただ、声量は大きくなく、大ホールよりも小さなホールに向いていると思った。繊細で清潔な歌いまわしだったが、もう少し声が出てほしい。もっと大きな表情で歌っていいのではないか。

 後半の、「ハイドンの主題による変奏曲」は、かなりよかった。それぞれの変奏曲の正確に、明確に、しかもかなりしなやかに表現できていた。「テ・デウム」は、無骨なブルックナーではなく、表情豊かで繊細さも備えたブルックナー。歌手も、ライモンディのほか、メゾソプラノの小山由美もテノールのベルンハルト・ベルヒトルトもよかった。バリトンの初鹿野剛はちょっと不調だったようだ。

 とはいえ、全体的にはとても自然に響き、十分に信仰心が伝わってきた。ただ、私としてはもう少し無骨で激しいほうが、感銘が深いと思った。アルミンクはとてもいい指揮者で、私は好きなのだが、もう少し狂気と言うのか、エキセントリックなところがほしい。芸術家としては、ちょっといい人すぎるように思う。狂気の部分が加わったら、この指揮者、ものすごいことになると思うのだが・・・

 ところで、先日、このブログでも書いた鬼塚忠作の音楽劇「カルテット」でピアニストを募集していることを知った。鬼塚さんから協力を依頼されたので、ここで、この件について触れさせていただく。

 音楽劇「カルテット」は、鬼塚忠原作の小説「カルテット」(河出書房刊)に基づいて、演奏家が演奏の合間に演技をするもの。映画化が予定されている。この音楽劇の12月公演のピアニスト役(40歳から50歳の男性)を募集しているということだ。オーディションが826日締め切りだという。詳しくは以下のURLを見てほしいが、もしこのブログを見てくださっている方やお友だちの方で、この役にぴったりのかたがおられたら、オーディションを受けられてはいかがだろう。もしかしたら、とてもおもしろい人生をおくれるかもしれない。少なくとも、楽しい思い出になることと思う。

http://quartet2010.blog13.fc2.com/blog-entry-43.html

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コメント

樋口様

アルミンクという指揮者は自分も好きな指揮者です。この指揮者はその外見や明晰で清新な音作りからちょっと誤解されていると思います。なんかいかにもスポーティーな音作りで、腰の軽い、浅薄な内容しか持ち合わせていない、みたいな印象をです。ただ自分はこの前この人のベートーヴェンを聴いて、この人往年の名指揮者をかなりリスペクトしていて、そこから得た貯金みたいなものを今はひたすらため込んでいるのではという感じを受けています。確かに今はいい人の音楽かもしれませんが、ある時期を境にこの指揮者、突如として樋口さんのおっしゃられるように化けるような気がします。この人タイプは違いますが、チェコのビェロフラーベクみたいな過程を経て円熟していくような気がします。ほんとうにとてもこれからが楽しみな指揮者です。

投稿: かきのたね | 2010年7月25日 (日) 15時20分

樋口先生、こんばんは。
私も同様に昨日のサントリー参りました。

先生のご指摘には同感です。
私は2FのLC席で比較的聴き易い位置だったのですが、特に出だしのソプラノ(ウィーンのシュターツオーパーの方だそうです)は、あれ?というほど聴こえてこず、残念でした。

そして同じ演目で今日もパルテノン多摩へ参りました。
昨日のサントリーホールよりはテンポも音のバランスもだいぶよかったと思います。
ところが、今度はオーディエンスの反応が非常に乏しく、そのせいか出来上がりのせいかわかりませんが、アルミンクは昔ほどではありませんが、わりに顔に出るのでいつもよりずっと元気がないのがよくわかりました。

私はここ数年は新日本フィルの定期会員で、昨シーズンよりサントリーホールも定期で行くようになりましたので、アルミンクのコンセプトや好みもだんだんわかってきました。

私の知る限り、彼はとても真面目でストイック、そして毎回のプレトークやサイン会などで地道なファン作りに取り組んでいる姿にはいつも感銘を受けます。
まあひとことで言うとファンなので、先生やかきのたねさんのコメントを読んでなんだかうれしくなりました。今39歳だそうですが、いつどのように化けるのでしょうかね...?

今シーズンは、7/31(土)トリフォニーのコダーイ&ハチャトリアンがラスト。9月のベルディレクイエム(またまた栗友会登場!)と11/28、12/1、再びマルタアルゲリッチとの共演を楽しみにしています。

投稿: Tamaki | 2010年7月25日 (日) 23時13分

かきのたね様
コメント、ありがとうございます。
そうですね。私は「狂気が必要」というようなことを書いたのですが、狂気とは限りませんね。ビエロフラーベク、それにかつてのハイティンクのような円熟に仕方もありますね。いずれにせよ、きっと近いうちにアルミンクは大化けして、本格的な指揮者になると確信しています。

投稿: 樋口裕一 | 2010年7月27日 (火) 07時22分

Tamaki様
コメント、ありがとうございます。
パルテノン多摩の様子、目に浮かぶようです。アルミンクの音楽に対する姿勢、とても共感を抱きます。あまりに正統的であるために、パアヴォ・ヤルヴィやドゥダメルのようには世界的には注目されていませんが、きっと新日フィルで修業を積んで、巨匠になっていくのでしょう。私はこれまでアルミンクは、4、5回聴いた程度ですが、これからもっと聴きたいと思ったのでした。

投稿: 樋口裕一 | 2010年7月27日 (火) 07時22分

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» 1045- 秋深しのような アルミンク 新日フィル 2010.7.24 [河童メソッド]
2009-2010シーズン聴いたコンサート観たオペラより . 2090-2010 [続きを読む]

受信: 2010年7月26日 (月) 00時54分

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2009-2010シーズン聴いたコンサート観たオペラより . 2090-2010 [続きを読む]

受信: 2010年7月26日 (月) 00時57分

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