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ロイヤルオペラ『椿姫』、ネトレプコの圧倒的なヴィオレッタに涙を流した

 9月22日、NHKホールで英国ロイヤルオペラの『椿姫』を見た。ヴィオレッタを歌ったのは、ネトレプコ。それはそれは素晴らしかった。

 このチケットを買ったのは、神奈川県民ホールで、第一幕をヤオが歌って途中降板し、第二幕からペレスに交代した日だった。ペレスは決して悪くなかったが、できることなら全幕通して同じ歌手でヴィオレッタを聴きたいと思って、衝動的に最終日のチケットを買い求めたのだった。後で聞くと、その時点ですでに「最終日はネトレプコが歌うかも…」と噂されていたらしいが、私は知るよしもなかった。その後、すぐに新幹線で京都に移動したが、のぞみ号の中で、自分の衝動買いは悪くなかったのだとずっと自分に言い聞かせていた。

 そして、昨日、本当にネトレプコが歌うことを知った。ネトレプコを聴けるのなら、この値段も惜しくはない。

 実際、本当に素晴らしかった。神奈川県民ホールでのヤオも第一幕の途中まではそれほどひどいとは思わなかった。ペレスはなかなかよかった。が、ネトレプコを聴くと、言ってはナンだけど、やはりものすごい差がある。一つ一つの音の美しさ、声の透明さ、声の通り具合、声の演技力、姿かたちの演技力、そして容姿。すべてにおいて、ネトレプコは圧倒的。

 舞台の奥のほうに向かって歌っていてもはっきりと聞こえる。自分の声の威力を知っているからだろう、あえて何度も後ろを向いて歌っていた。そして、ピアニシモの美しさ! 小さな声までもしっかりと聞こえる。小さな声までもがしっかりと聞こえるとは一体どういうことなのか、素人の私にはわからない。声がよいとか音程がよいとかいうレベルを超えて、聴く者を酔わせ、感動させる力を持っている。圧倒的な声の威力に、私は感動しっぱなしだった。

 神奈川県民ホールでの初日と比べて、アルフレード役のジェームス・ヴァレンティも別の人かと思うほどよかった。役が板について、声もしっかり出ている。ジェルモン役のキーンリサイドも相変わらずすばらしい。第二幕は、神奈川県民ホールでは、代役でペレスが出てきたばかりでハラハラしながら見ていたので、キーンリサイドに感動する余裕がなかった。が、ヴィオレッタとジェルモンのやり取りがじつにいい。

 そして第三幕。これは涙を流すしかない。なんと華麗で、何とかわいそうなヴィオレッタよ! 私としたことが、このメロドラマに涙を流し、声をあげて泣いてしまった!!

 パッパーノの指揮もよい。まさしくツボを抑えた指揮。演出も極めてオーソドックスで、音楽を引き立てる。

 ともあれ、満足。この日のチケットを買って、本当に運が良かった。原稿が締め切りを過ぎているのに半分もできていないが、しばし、そのことを忘れていられた。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

先生のブログを拝見して感動が伝わって参りました!
正直、うらやましい〜!!
さすがネトレプコです。
オリジナルキャストであったとしてもすばらしいでしょうに、
このような条件下で、5幕にもおよぶ主役をクランクアップしたばかりで、プレッシャーもなく?のびのびと、そして繊細に実力を出し切れるなんて。
本物のDIVAですね。

音楽こそ相乗効果ですから、オケやヴァレンティがよかったのもネトレプコの影響があるのではないでしょうか。
パッパーノも今頃はおいしいギネスを飲んでいることでしょう。笑
しかし、声という楽器は本当に大変なものだなあ、とあらためて思いました。

また、ご存知かと思いますが来年、メトの来日でネトレプコの「花から花へ」が聴けそうです。
http://www.japanarts.co.jp/MET2011/concert.htm

投稿: Tamaki | 2010年9月23日 (木) 00時18分

樋口先生に音楽の神さまが微笑んだんだと思います。
すごいラッキーですね!

僕は同じ神奈川県民ホールで初日聞きましたが、さすがに他の日のチケット取ろうとは思いませんでした。
ネトレプコは17日のマノン聞きました。美声で、ずどんと声が響くのに驚かされましたし、舞台姿は圧倒的に存在感があって、さすが世界のプリマドンナと思いました。

投稿: BRIO | 2010年9月23日 (木) 09時11分

Tamaki様
メトの特別コンサート、知りませんでした。でも、少なくとも、今は「椿姫」はもう一生見なくていいという気分です。一昨日以上のものに、これから出あうとは思えませんので。
もちろん、また見たくなるのでしょうけれど・・
でも、ほかの日を見た人と話すと、後ろめたさを感じてしまいますね。「ごめんなさい。僕だけ、いい思いをしてしまいました…」といいたくなってしまいます。

投稿: 樋口裕一 | 2010年9月24日 (金) 06時47分

BRIO 様
本当にラッキーでした。ほかの日に見た人に言うのは気が引けるのですが、これほど素晴らしいオペラ公演は海外の音楽祭に行ってもめったに味わえるものではないと思いました。その日だけ、それを味わえたのですから、申し訳ないけれど、自分の幸運をかみしめることにします。
でも、私はこれまで悔しい思いを山のようにしてきていますし、音楽にずいぶんとお金もつかってきていますので、たまには音楽の女神も微笑んでくれてもいいですよね。

投稿: 樋口裕一 | 2010年9月24日 (金) 06時53分

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