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アンドリアノフのチェロ、そして武蔵野小ホール9列31番のこと

 武蔵野市民文化会館でボリス・アンドリアノフのリサイタルを聴いた。

 前半にバッハの無伴奏の3番、後半にコダーイ無伴奏ソナタを中心に、ほか、シチェドリンと、ソッリマという現代作曲家の曲を織り交ぜたプログラム。この若いチェリスト、ずいぶんしゃべるのが好きなようで、曲間ごとに英語でかなり長いことしゃべった。英語を理解できる人はごく一部だということを知っているのかどうか・・・私自身ももちろん、半分もわからなかった。いや、実を言うと、のちに述べる理由でほとんど理解できなかった!!

 アンドリアノフは、これらの曲の舞踏性を重視しているように思える。が、そうでありながら、いや、そうであるからこそというべきか、芸術性も極めようとしている。舞踏性と芸術性が両立するものであることを主張しようとしているようだ。バッハのこの曲が舞踊音楽だということを、久しぶりに思いだした。コダーイも、民族性と舞踏性をかなり強調しているようだ。

 狙いはわかるのだが、私の感銘度としては、最高レベルといいかねた。なかなかいいが、深く感動するまでには至らなかった。やはり、舞踏性と芸術性の両方を狙うのは難しいように思う。私は素人だからどうすればよいのか、具体的にはわからないが、もうひと工夫必要なのではないかと思った。

 感動しなかったのにはもう一つ理由がある。

 私は9列31番に座っていたのだが、前半、音がよく聞こえなかった!! チェロの音像がぼやけ、音が濁って聞こえた。二つの音の像が重なって輪郭がぼやけている印象。アンドリアノフの英語の喋りも、固有名詞ですら同じように音が二重になって聞きとりづらい。ここの小ホールはかなり音響はいいほうなので、こんなことは初めてだった。後半になって、左耳がよく聞こえないことに気付いた。椅子の後ろの背にもたれかかるのをやめて、右に寄ってやや身を乗り出す形で聞いたら、とたんに聞こえるようになった。

 その昔、大分市に住んでいたころ、大分文化会館に芝居を見にいって私の座った席でまったくセリフが聞き取れないことがあった。すぐ近くの空席に移ったら、問題なく聞こえた。ほどなく、ちょうど私の座った席とその隣の席の2席だけ客席として使用されなくなった。その2席は構造的に音が聞こえにくかったようだ。それほど、音の流れは微妙なのだ。

 その時のことを思い出した。いつもそうではないのかもしれないが、少なくとも、アンドリアノフがあの位置に座ってチェロを演奏すると、まちがいなく9列31番の席は音が異常なほどぼやけた。気のせいではない。私は特に音に敏感な人間ではないが、ここ数年、年に100くらいのコンサートを聴いている。武蔵野市民文化会館にも年に10回くらい来ているかもしれない。その私が言うのだから、間違いない。

これまで、クレームはなかったのだろうか。同じようなことがあったのではないかと思うのだが・・・

 休憩時間に係の人に、「9列31番は、音が聞こえにくいので、席を変えてくれないか」と頼んだが、「満席だから」と断られた。空いた席はかなりあったのだが、チケットはすべて売れていたのだろう。確かに、客のわがままを聞いていたらきりがないだろうから、係の人間の対応は間違いではない。が、まともに取り合ってもらえなかったのは、ちょっとムッとした。私の言うことを信用してくれなかったようだ。せめて、「お客様がそうおっしゃるのでしたら、ホールの音に問題があるのかもしれませんが、今日のところは満席ですので、どうか我慢をなさってください」という態度であってほしいとおもったのだが、それは客のわがままだろうか。私にしてみれば、音が聞こえにくいのはホールの欠陥だから、席を変えてくれてもいいだろうと思ったのだったが…

 とはいえ、私も反省しなければならないことがあった。後半、何とかよく聞こえる姿勢を探そうと身体をねじっていたら、ポケットに入れていたプログラムがすれて音がしたらしい。隣の人に注意された。私はおとなしく静かに音楽を聴いているつもりだったのだが、実に面目ない!!

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コメント

はじめまして、こんにちは。
メールアドレスが見当たらなかったのでコメントのところに書きますが、もし不適切でしたらお読みになられてから削除してください。

ボリス・アンドリアノフのコンサートの寸評を探して検索したところ真っ先に開いたのがこちらで、びっくりしました。実はプログラムの音のことでお願いした者です。
クレームの件はすみません。わざとではないとわかっておりましたので、なかなか言い出せなかったのですが、コダーイの第1楽章の途中から背広の生地とプログラムの端が断続的に擦れるのが聞こえてきて、第2楽章まで我慢したんですが…。おかげさまで第3楽章はじっくりと聞くことができました。

コンサートについてですが、私もバッハが同じように聞こえました。これは聞いていられないな、と思うくらい余計な響きが聞こえてきました。
ボリス・アンドリアノフさんは一生懸命弾いているときにかなり呼吸が荒くなる、とエルガーを弾いた時の他の方のレビューにあったので、そのせいかな(呼吸が被って一緒に増幅されて届いているとかそのようなこと)と思っていました。

私は最初のバッハ以外は気にならなかったのですが、確かバッハ後に一度退出されて、次の曲を始める前に体制を少し変えていたので、微妙な配置が変わったのかもしれません。急に荒い呼吸が整うはずもなく、やっぱり位置の問題だったのかなと思います。とにかくバッハは全く聞きこめず残念でした。お気持ち分かります。

私はクラシック音楽自体まだ聴き始めて2、3年で、あのホールもまだ4、5回しかおじゃましておりませんが、本来は音響が良いところだとお聞きして嬉しいです。あそこでは民族性の高い奏者が多く聴けて楽しいです。お客さんが拍手をするのがちょっと早いなと思いますけど(笑)

長々と失礼しました。

投稿: | 2010年10月29日 (金) 10時42分

武蔵野の小ホールでお隣に座られた方
本当に先日は申し訳ありませんでした。終わった後、お詫びを言おうと思ったのですが、すぐにお帰りになった(きっと、私と顔を合わせるのをためらったのだと思いますが・・)ので、そのままになってしまいました。
自分では全く気付かないのに音を出してしまっているという良い教訓だと思いました。気を付けているつもりでも、こういうことをしてしまいます。
注意しあう習慣が当たり前になればいいのですが。
ところで、やはり当日、音に異常を感じましたか・・・。バッハの時が最もひどかったのですが、その後も、そして後半も、やはり正常ではないと思いました。係りの人は、これまでそのような声を聞いたことがないと言っていましたが、これについても、どしどしと感想を会場の人に伝えるべきだと思います。そうしてこそ、音楽が市民に根付くと思うのですが・・・
今後、私を見かけましたら、よろしかったら、お声をおかけください。

投稿: 樋口裕一 | 2010年10月30日 (土) 08時49分

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