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天満敦子・岡田博美のフランクは私の好きな演奏ではなかった

 昨晩(11月16日)、紀尾井ホールで、天満敦子と岡田博美のデュオリサイタルを聞いてきた。

 曲目は、前半にフォーレのソナタ第1番とバルトークのソナタ第2番。後半にフランクのソナタ。最後に、ポルムベスクの「望郷のバラード」という天満さんが得意にしている曲。アンコールは、フォーレの「パヴァーヌ」とモンティの「チャルダーシュ」。

 私自身は岡田博美の演奏は、日本のラ・フォル・ジュルネのモーツァルトの年に、ソナタの13番と14番とハ短調の幻想曲を聴いたが、それは決して名演奏といえるものではなかった。以前から評判を聞いていただけに、失望したのだった。ところが、知り合いに岡田博美を追いかけている方がいる。音楽的に極めて信頼できる方だ。その方に、岡田はモーツァルトを得意にしているわけではないので、ぜひほかの演奏を一度聴いてみてほしいといわれた。以前から誘われていたが、時間が合わなかったりで、なかなか行けず、昨日になった。

 ホールに入ったとたんに、いつも行くコンサートとの客層の違いにびっくり。テレビでよく見る顔がいくつもある。各界のお歴々が集まっている感じ。どうやらそれは天満さんの固定ファンの方たちらしい。

 もちろん、私も天満さんには関心を持ってきた。実演を聞いたことはなかったが、テレビでは何度か聴いたことがある。どんな演奏をしてくれるか、興味をかきたてられた。

 見た目からも、音からもすぐにわかるが、二人の音楽性の違いの大きさに改めて驚く。豪放な音楽の天満と、完璧なテクニックでクールに、そして繊細な音楽を作り出す岡田。

 演奏後、大喝采で、天満の喋りも大受けしていたし、終演後、サイン会の大行列ができていた。これまた異様な雰囲気。だが、残念ながら、私はその喝采の仲間には入れなかった。

 バルトークは悪くなかった。ちょっとガサツだが、バルトークの音楽というのはそんなものだろう。リズムに乗り、激しい情念と甘さとクールさのコントラストをよく出していると思った。二人の演奏家の資質がうまくあっていた。岡田のピアノの切れ、リズムのよさは抜群。確かにすごい。

 だが、フォーレとフランクは、少なくとも私の好きなフォーレとフランクではなかった。

 フォーレには、典雅さと繊細さがほしい。そして、それは透明な美音か、香りのある音で弾いてこそ生まれる。それがないと、フォーレの曲は、煮え切らないだけの中途半端な曲になってしまう。岡田のピアノはまさしくフォーレらしい世界を醸し出しているのだが、天満のヴァイオリンは、フォーレの純粋な美しさを十分に出せていないと思った。

 フランクについては、私には何をしようとしているのかわからなかった。この曲には様々なアプローチがある。オイストラフとリヒテルのようにまるでドイツ音楽であるかのように豪快にドラマティックに演奏してもいいし、グリュミオーのように研ぎ澄まされた世界を作ってもいい。デ・ヴィートのようにフランス的な香りをむんむんとさせるのでもいい。だが、いずれにせよ、この曲には神秘的な美しさがあふれ、秘められた世界がある。そして、それがあるから情念が激しく爆発する、昨年、私が企画した多摩大学20周年コンサートでは、佐藤俊介と菊池洋子が若々しい情念のほとばしる素晴らしい演奏を聴かせてくれた。ところが、昨晩の演奏には、少なくとも私にはそれが少しも感じ取れなかった。盛り上がりをずっと待っていたが、結局、それが訪れないまま終わってしまった。

 周囲が天満ワールドになると、私のような人間はむしろそこからはじき出された気分を味わう。最後のポルムベスクの「望郷のバラード」は天満さんが常に弾く固定ファンたちが心待ちにしている曲らしい。なんと長い曲だと思いながら、ちょっと場違いなところに来てしまったことを改めて強く感じた。

 結論。天満さんについてはフランス系の音楽ではなく、もっと別の音楽を聴いてみたいと思った。私の理想とするフランス系の音楽とは違いすぎた。岡田さんについては、天満さんという資質が正反対の人とのデュオではじっくりと聴きとることができないので、やはりソロを聴くしかなさそうだと思った。

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