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若手演奏家の見事な演奏

 昨日11月28日、成城ホールで新居由佳梨さんと江島有希子さんのデュオリサイタルを聴いた。お二人は、これまで何度か樋口ゼミでも演奏をしてもらっている。8月25日にも、このお二人とソプラノ歌手の三宅理恵さんにお願いして、HAKUJU HALLでコンサートを開き、大成功をおさめた。とりわけ、新居さんは、2005年に初めて仕事をご一緒し、その素晴らしい音色にひかれて、何度か演奏をお願いしてきた。

 見事な演奏だった。

 まず、新居さん。ずぶの素人がこんなことを言うのは実に僭越だが、一皮むけたと思った。ドビュッシーの「月の光」で鮮やかにドビュッシーの世界を作り出していた。後半のショパンのスケルツォ第二番の劇的な効果が素晴らしかった。以前から高貴な音で知的なアプローチをするピアニストだったが、それにドラマティックな要素が強まっていた。

 新居さんは、伝説の大ヴァイオリニスト、イダ・ヘンデルの久しぶりの録音で伴奏者の一人に抜擢された人。しかも、第79回日本音楽コンクールで、コンクール委員会特別賞ももらっている。日本を代表するピアニストになりつつあると思った。伴奏者としては、すでに第一人者に近いレベルにいるのではないかと思う。

 江島さんは、大病をして、退院から日がたっていないという。8月25日にHAKUJUHALLで演奏していただいた時にはお元気だったのだが、その後体調を崩したのだろう。以前から細かった腕がますます細くなっているのには気づいていた。いわれてみれば、江島さんの、細いわりに芯の強い迫力ある音が、ちょっと弱まった気がしないでもない。が、「春」の第三楽章以降は、完璧にベートーヴェンの強靭な世界を作り出していた。感動して聴いた。アンコールのプーランクの「愛の小道」も、いかにもフランス風で実に香りがあった。これまた僭越だが、江島さんにもこんな色気が出せるようになったのかと思った。

 もっともっと活躍してほしい二人だ。ひいきで言うのではない。本当に見事な日本の若手を代表する演奏だった。

 土曜日と日曜日、自分に仕事をするのを禁じて、テレビを見たり、DVDを見たりした。昨日は家に帰ってから寝るまで、最近DVDを入手したサタジット・レイの往年のインド映画「大地のうた」を見た。

51xbezyzvql__sl500_aa300_  先日、1970年ころに見たこの映画の話を知人にしていて、ストーリーさえもろくに覚えていないことに気付いた。感動してみたのに、私の頭の中にあるのは、ほんの数秒のインドの風景と、ラヴィ・シャンカールの演奏するシタールの音くらい。DVDを購入して40年ぶりくらいに見てみた。

 インドの片田舎に住むオプーという少年の成長を描く三部作の第一作で、当時大きな話題になった。数々の映画賞を受賞したはずだ。改めてみて、深く感動した。

 オプーが子どもたちと遊ぶ風景は、現・多摩大学学長室長の久恒啓一先生(このブログでも、そして何冊かの本でも書いてきたとおり、久恒氏と私は幼馴染だ)と一緒に遊んでいた大分県中津市の昭和30年代の貧しい農村地帯の様子を思い出す。が、もちろん、インドのほうがずっと貧しい。とりわけ、オプーと姉の家はとりわけ貧しい。その苛酷な生と死をインドの自然の中に描く。それだけの映画なのだが、圧倒的なリアリティと映像美。最後、涙が出そうになった。

 仕事しないで、音楽を聴き、映画を見て過ごす。こんな週末を過ごせたら、どんなに幸せか。せめて週末は、こんな風に過ごしたいものだ。ふだんは、週末も含めて、朝から夜中まで仕事に追われ、合間をくぐってやっとの思いでコンサートに行っている。

とはいえ、また、今日から次の原稿と校正に全力を注がなければならない。

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