« 京都の食事。そして、忙しかったこと。 | トップページ | 若手演奏家の見事な演奏 »

パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマーフィルのベートーヴェンに興奮!

 今日(1127日)、横浜みなとみらいホールで、パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を聴いてきた。みなとみらいホールでベートーヴェンの連続演奏をしたのはよく知っていたが、今回初めてこのコンビの演奏をナマで聴いた。

ウェルザー=メスト+クリーヴランドよりも、ヤンソンス+コンセルトヘボウよりも、もっと魂が震えた。

 

 前半の曲目は、まずシューマンの「序曲、スケルツォとフィナーレ」op52。好きな曲ではない。とりとめがない感じがして、かなり苦手の部類に属す曲。が、彼らの演奏で聴くと、これが悪くなかった。力感にあふれ、アクセントが強く、鮮烈。速いテンポだが、一糸乱れずについていく。とりとめなさが薄れ、音楽の楽しさにあふれている。オケのメンバーも実に楽しそうに演奏している。私も聴いているうちに躁状態になってきた。

 次にベートーヴェンの大フーガの弦楽合奏版。当然、ヤルヴィが振るものと思っていたら、指揮者なしで演奏が始まった。コンサートマスターのフローリアン・ドンデラーが事実上指揮しているのだろう。

 凄まじい演奏だった。弦のメンバーがものすごいスピードで疾風怒濤のこの曲を弾きまくる姿はまさに壮観。何人もが切れた弓の糸を垂らせながら、必死に演奏している。この曲が弦楽合奏で演奏されると、まさに大迫力。

 私たちがパーヴォ・ヤルヴィらしい演奏と思っている音楽を、ヤルヴィなして演奏している。ということは、実はこれは、ヤルヴィらしいという以上に、ドイツ・カンマーフィルらしい音楽だったということなのだろう。

 実は、私は「大フーガ」をずっと「わからない」と思ってきた。もちろん聴けば感動する。だが、ベートーヴェンが何をしようとしているのか、よくわからない。なぜこの曲を作ったのかも納得できない。が、今日の演奏を聴いているうち、少しわかった気がした。カンマーフィルのメンバーは、「苦悩から解脱へ」というようなモットーをこの曲に読みとっていたようだ。第5や第9のような「苦悩から歓喜へ」ではない。もっとそれを突き抜けて到達した境地までを描いている。そう考えると、大フーガの曲の意味が見えてくる。

 ともかく、私は涙が出るほど感動した。魂を揺さぶられた。ベートーヴェンの到達した境地がほんのちょっと見えた気がした。

 後半はベートーヴェンの第5。いわゆる「運命」。これまた凄まじい演奏。まさしく疾風怒涛。音の洪水が次から次へと押し寄せてくる。それをヤルヴィは小気味よく、切れよく前に進める。余計な情緒はすべて排し、ただただ音の論理だけをたたみかけていく。弦の重なりが素晴らしい。ティンパニの音の小気味良さよ。機能的だが、アメリカのオーケストラのように現代的ではなく、まさしくドイツの音がする。管楽器の響きが実に古びていて、しかも田舎っぽくていい。

 これまでCDでヤルヴィの演奏を聴いて、「ただテンポを速くして、強弱の激しい音楽にするだけなら、テクニックさえあれば、だれにでもできる」と思うことがあった。だが、やはりヤルヴィの演奏はそれだけではない。何よりも音楽そのものの楽しさ、音楽そのものの躍動を実によく知っている。これぞというところで音が爆発する。まさしく、聴く者の魂もそれとともに爆発する。やはり、こんな興奮を味わうことこそが音楽を聴く醍醐味だとつくづく思う。

 

 アンコールは、ブラームスのハンガー舞曲から2曲。5番と6番だっけ? まさしく、ハンガリー風の強弱の激しいテンポを自在に動かす演奏。パーヴォの父ネーメ・ヤルヴィのケレン味たっぷりの演奏を思い出した。それにしても、躍動した音楽は本当に素晴らしい。

 しばらく興奮がおさまらなかった。

|

« 京都の食事。そして、忙しかったこと。 | トップページ | 若手演奏家の見事な演奏 »

音楽」カテゴリの記事

コメント

ヤルヴィさん。今回は残念ながら聴けませんでしたが、以前東響に客演したり、シンシナティ響と来日していたのを聴いていたのでぜひ今回も思っていたのですが…。まさに樋口先生のおっしゃられるとおりの指揮者ですね。なんといいますか、人の気持ちにストレートに突き刺さってくるような、しかもそこを軸にして思いっきり揺らしにかかってくるあたり尋常ではないと思います。来年はパリ管とサントリーホールで幻想交響曲!今からとてもたのしみです。

投稿: かきのたね | 2010年12月 7日 (火) 23時14分

かきのたね様
コメント、ありがとうございます。
シンシナティとの共演、噂は聞いておりましたが、すごかったようですね。来年の情報、ありがとうございます。知りませんでした。パリ管との共演、楽しみですね。彼に限って、マーラーはやらないと思うので安心です。最近マーラーも振り始めている、なんてことはありませんよね?

投稿: 樋口裕一 | 2010年12月 8日 (水) 08時36分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/50148569

この記事へのトラックバック一覧です: パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマーフィルのベートーヴェンに興奮!:

» パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマーフィル [楓苫堂日記]
今日はみなとみらいホールにてパーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマーフィルの演奏を堪能。このP・ヤルヴィという指揮者は、そのデビューCD(ドヴォルザーク「新世界より」/ロイ ... [続きを読む]

受信: 2010年11月28日 (日) 13時28分

« 京都の食事。そして、忙しかったこと。 | トップページ | 若手演奏家の見事な演奏 »