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印象に残ったCD

 昨日は、最近聴いた圧倒的名盤をいくつか紹介したが、今日は、私がふだん好んで聴くタイプの音楽ではないが、はっと心をひかれたCDをいくつか紹介する。

1417159 ・「LAUDAMUS DEUM」  Philippopolis novalis 150 145-2

 ギリシャ正教の聖歌集だ。ロシアを訪れ、ギリシャ正教の教会の音楽に驚嘆した。帰国後、CDを6、7枚注文したが、その中の一枚がこれ。Philippopolis(フィロポポリスと読むのだろう)というのは、ブルガリアの男声合唱団の名称らしい。本当は、モスクワで聴いたソプラノの声が美しかったので、それを求めていたのだが、購入できたCDには、思っていたようなソプラノは含まれていなかった。が、ここに含まれるバスの声の豊かさには圧倒される。なんという静寂、なんという厳粛。心が洗われ、敬虔な気持ちになる。

 私は音楽をヒーリングだとは全く思わない。むしろ音楽こそは魂の冒険だと思っている。が、この演奏はまさしく心が落ち着き、じっくりと自分に向き合える。

・「花の世界 高橋悠治作品集」

 上野信一のパーカッションと高橋悠治のピアノによる作品集。40歳を過ぎてからは、いわゆる現代音楽をとんと聴かなくなった。以前は、現代音楽を理解してこそ音楽ファンだと思っていたが、徐々に保守化して、何か縁があるときにしか聴かなくなった。これは、むしろ上野さんのパーカッションに興味を持って聴いたのだった。

 が、あまりのおもしろさにびっくり。だれもが抱く感想だと思うが、打楽器はこれほど雄弁なのかと思った。打楽器というのは、要するに命の律動なのだということを痛感した。命そのものが律動し、手ごたえのあるものとして存在しているのを強く感じる。とりわけ、太鼓のソロによる「コヨーテ・メロディ」は、迫力が凄まじい。華やかに音を鳴らすわけではない。むしろ、音が鳴っていない時の緊張感、ごく稀に鳴らされる高音によって、引き込まれ、魂そのものをどやしつけられた気がした。

369 ・戸田弥生 20世紀無伴奏ヴァイオリン曲集 

 93年のエリザベート王妃国際コンクールの優勝者である戸田弥生さんによる、バルトークとプロコフィエフとストラヴィンスキーの無伴奏ヴァイオリン曲を集めたCD。戸田さんのバッハの無伴奏曲のCDには深く感動したが、これも同じくらい感動。戸田さんというヴァイオリニスト、無伴奏曲が実にいい。

 やはりバルトークが圧倒的。とんでもなく高度なテクニックの用いられている曲だと思うが、濁りのない音で正確に弾く。が、もちろん、それだけではない。なんという集中力。鬼気迫るという言葉がぴったり。ぎりぎりのところに自分を追い込み、自分の中に沈潜し、ありのままの自分をさらし、自分の魂のありったけを音楽の中にぶつけている。あらゆる虚飾を排し、真摯にバルトークの魂の叫びと一体化して音楽を作っている。悪く言えば、遊びがない。だから、聴いていて息苦しくなる。楽しくはない。が、ぐいぐいと引き込まれ、深く心を揺さぶられる。これぞ、バルトークの境地だったのだろう。

 実は、この曲、私が司会をして、戸田さん、野原みどりさんと稲城のホールでコンサートを開いたときに、演奏していただいた。舞台裏で聴いて、凄いものに触れてしまったという思いを抱いたのだった。CDを聴いて、同じ思いを抱いた。

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