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大野和士は巨匠なり!

1月10日、新国立劇場の『トリスタンとイゾルデ』の最終日の公演を見てきた。驚嘆し感動した!! 

『トリスタンとイゾルデ』は、私の最も好きな歌劇・楽劇なので、これまで機会あるごとに見てきた。バイロイトでもベルリンでも、何度か見ている。今日の公演は、これまで接した中でも一二を争う最高レベルだった。

 劇場内で出会った知人の多くが、今回の公演に二度、三度、四度と足を運んでいた。こんなにすごい演奏だったら、私も何度か見ればよかったと思った。最終日に一度だけ見たのでは、ものたりない。

 まずトリスタンのステファン・グールド、イゾルデのイレーネ・テオリンの二人が圧倒的に素晴らしい。感動するべきところでは、すべてにおいて最高度に感動した。第二幕の二重唱も、第三幕のトリスタンの語りも、そして幕切れの「愛の死」も最高!! グールドもルネ・コロに引けを取らず、テオリンはデボラ・ポラスキやワルトラウト・マイヤーにまったく引けを取らない。

ブランゲーネのエレナ・ツィトコーワもクルヴェナールのユッカ・ラジライネンもマルケ王のギド・イェンティンスも文句なし。日本人歌手たちもしっかりと脇を固めていた。

 が、最も感動したのは、大野和士の指揮する東京フィル。

 音が透明でリズムが安定していて、びしっと決まっていく。鮮やかでありながら、ワーグナー特有のうねりもあって豊穣。第一幕の前奏曲から、私の魂はオケにいちいち反応して感動が走った。

 実を言うと、私としては、全体的にもう少し「揺らぎ」がほしい。私はこの『トリスタンとイゾルデ』の最大の特質は「揺れ」だと思っている。船の上で揺れ、安定せず、調性も揺らぐ。大野の指揮にはそうした揺らぎがなかった。が、それを除けば、すべてにおいて、最高だった。

 2008年にバイロイトで見たペーター・シュナイダー指揮による公演よりも、圧倒的に今回のほうがレベルが高かった。その時、私はイゾルデを歌うイレーネ・テオリンを初めて知って、その美貌と声にひかれたのだったが、彼女自身、今日のほうが良かった。今や、最高のイゾルデに成長している。

 大野さん、本当にすごい。いや、テレビ放送で見たり、先日は『ウェルテル』の演奏会形式で聴いたりして、その実力は知っていたが、それにしても『トリスタン』を聞いて、思った以上に、すでに「巨匠」であることを痛感。今すぐにも、バイロイト音楽祭で指揮するべき大物だと思う。

 それにしても、新国立劇場のレベルたるや、今や世界の超一流に達している。このレベルを続けてほしいものだ。そして、それにしても、大野さんは凄い。これまで以上に注目したい。

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コメント

いつも愛読しています。私も今回のトリスタンは世界の主要劇場並みの公演だったと思います。新国立劇場もよくここまで来たものです。私の観た日にも大野さんにブーイングを浴びせている人たちがいました。以前、黄昏のときも執拗にブーイングをしている人たちがいましたね。同じ人たちでなければよいのですが・・・。 なお、蛇足ながら、上半身裸の水夫・騎士たちは、マクヴィカーのトレードマークではないかと。たまたま数年前にマクヴィカー演出のヴァルキューレ(ストラスブール歌劇場)を観たときにも、同じような剣士たちが出てきました。日本の剣術みたいな殺陣がそっくりです。サブカルチャーとの関連を感じますが・・・。


投稿: Eno | 2011年1月11日 (火) 18時49分

Eno様
私のほうも、時々ブログをのぞかせていただいています。
演出についてのご意見、なるほどと思いました。剣士たちについてのご指摘もありがとうございます。
ブーイング、素直で自発的なものならやむを得ないと思うのですが、もし一部の人の自己アピールの場になっているとすると、いやですね。
それにしても、これほどの上演ができるようになった新国立劇場の頑張りに「あっぱれ!」ですね。

投稿: 樋口裕一 | 2011年1月12日 (水) 09時24分

はじめておじゃまいたします。

GP、12/28、1/7の3回見ました。やはり何回も見たくなる公演だと思います。グールドはじめ、今回の公演の歌唱レベルの高さに驚嘆しました。バイロイトでは、コロ、ホフマンなどのトリスタンに感動しましたが、その演奏レベルに匹敵する名演で、我々のナショナルシアターのここまで来たかとうれしくなりました。このレベルの公演をシーズン通して打てるなら、新国はまちがいなく世界のトップシアターの一つになると思います。

投稿: かまたひろたか | 2011年1月12日 (水) 23時41分

はじめておじゃまいたします。
GP、12/28、1/7の3回見ました。やはり何回も見たくなる公演だと思います。グールドはじめ、今回の公演の歌唱レベルの高さに驚嘆しました。バイロイトでは、コロ、ホフマンなどのトリスタンに感動しましたが、その演奏レベルに匹敵する名演で、我々のナショナルシアターのここまで来たかとうれしくなりました。このレベルの公演をシーズン通して打てるなら、新国はまちがいなく世界のトップシアターの一つになると思います。

投稿: かまたひろたか | 2011年1月12日 (水) 23時43分

かまたひろたか様
コメント、ありがとうございます。
まったくおっしゃる通りだと思います。新国立ができたとき、ここまでになるとは、正直なところ、思っていませんでした。世界に誇れるオペラ劇場になったと考えて間違いないですね。
それにしても、私の知るほとんどの方が数回見ていますので、一回しか見ていない私は肩身の狭い思いをしています。

投稿: 樋口裕一 | 2011年1月14日 (金) 08時28分

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受信: 2011年1月11日 (火) 03時43分

» ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」 [オペラの夜]
<新制作プレミエ上演> 2010年12月25日(土)14:00/新国立劇場 指揮/大野和士 東京フィルハーモニー交響楽団 新国立劇場合唱団 演出/デイヴィッド・マクヴィカー 美術・衣裳/ロバート・ジョーンズ 照明/ポール・コンスタブル 振付/アンドリュー・ジョージ トリ...... [続きを読む]

受信: 2011年1月29日 (土) 21時12分

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