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拙著『音楽で人は輝く』発売!

 拙著『音楽で人は輝く』(集英社新書)が本日、発売になる。副題は「愛と対立のクラシック」。今年のラ・フォル・ジュルネの公式ブックとして書いたもので、ベートーヴェン以降の作曲家たちをブラームス派とワーグナー派の対立を軸にして整理し、その音楽と生き方をまとめたものだ。

08720577  この本は、主としてクラシック音楽の初心者に向けたものだ。作曲家の名前だけは聞いたことがあるが、どんな曲を作曲して、どんな傾向の曲を作ったのか漠然としか知らない人が理解を深めるために、50年前からクラシック音楽に親しんできた人間が案内する本という位置づけだ。が、できれば、もっと音楽に対して関心のある人にも読んでいただきたいとも思って書いた。この中には、かなり聴きこんだ人も知らない情報、知らない考え方も含まれているはずだ。そんな点についても読んでいただけると嬉しい。

 私としては、今年の日本各地のラ・フォル・ジュルネで特集される作曲家たち(東京は後期ロマン派中心、びわ湖と新潟ではベートーヴェン、金沢ではシューベルト)全員をうまく織り込んで、しかも、わかりやすく、私自身の音楽観を交えて書けたのではないかと思っている。そして、ラ・フォル・ジュルネと無関係であっても、クラシック音楽案内として役立つものになったのではないかと思っている。

ところで、略歴について一言。「アフリカ・フランス文学翻訳家」となっているが、これは10年以上前のこと。以前からそれほど語学、とりわけ会話は得意だったわけではないが、今や当時にも増して外国語はできなくなっている。今の私が外国語ができるなどと誤解しないでいただきたい。編集担当者の作ってくれた略歴にOKを出してしまったが、これを削除すればよかったと、あとで思った。

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ところで、あと一冊、最近出した本を紹介させていただく。

『頭のいい人は「短く」伝える』(だいわ文庫)を出した。文字通り、短く書いて、短く話をし、短くまとめて文章を読むことを提唱した本だ。とりわけ、4行でものごとを考える極意について語っている。これについても、よろしかったらご覧いただけると、うれしい。

ところで、私のブログに関しての訂正がある。

1月8日のこのブログの中で、「『クロイツェル・ソナタ』の作曲当時、ヤナーチェクは年下の人妻カミラとの不倫の真っ最中だった」と書いた。その後、以前からお付き合いいただいているチェコ文学研究家であり、ヤナーチェク協会の顧問でもある関根日出男先生に、「原曲はピアノ三重奏曲で、当時はまだカミラとは出会っていない」という指摘を受けた。『クロイツェル・ソナタ』が因習にがんじがらめにされた女性の愛を肯定しているものという意見には大きな変化はないが、指摘いただいた点については、まったくの私の思い違いだった。赤面の至りだ。ご指摘いただいた関根先生にお礼を申し上げつつ、訂正させていただく。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

樋口さん、初めまして。

『音楽で人は輝く』、さっそく読ませていただきました。

以前から、クラッシク音楽には興味があったのですが、何から聞こうか迷っていました。そんな時に、ちょうどこの本を見つけたので、すぐに購入しました。クラシック音楽については全くの初心者ですが、それぞれの曲のポイント(?)がつかめたと思います。

私のブログの方でも読んでの感想を書かせていただきました。特に作曲家たちの恋愛エピソード、読んでいてすごく面白かったです。

投稿: YKN03 | 2011年1月18日 (火) 12時27分

YKN03様
コメントありがとうございます。そして、拙著へのお言葉、ありがとうございました。ブログも拝見させていただきました。
そう言っていただけると、著者として、とてもうれしく思います。
実は、私は恋愛話はあまり得意ではないために、これまで作曲家たちの恋愛についてほとんど触れませんでした。それだけに、どう読んでもらえるか心配だったのですが、おかげさまで少し安心することができました。
ぜひ、これからクラシック音楽の世界を堪能なさってください。私の本が少しでもお役にたてれば、こんなうれしいことはありません。

投稿: 樋口裕一 | 2011年1月19日 (水) 08時04分

おひさしぶりです。
時折お邪魔しては読み逃げしてました(^^ゞ
「音楽で人は輝く」、「頭のいい人は『短く』伝える」、どちらも面白そうですね。私は地元の吹奏楽団でサックスを吹いてますが、音楽は聴く方も演奏する方も「生涯素人」だと思います。そんな私でも「音楽で…」のほうは楽しめそうなので、近いうちに是非読ませていただきますね。

ちなみに私は「クロイツェルソナタ」はベートーヴェンのものもトルストイのものも好きだったのですが、最近樋口さんのブログでヤナーチェクの曲もあると知りました。PCで調べたところ、トルストイの小説に影響を受けて作られた曲らしいですね。いずれ機会があったら聴いてみたいです。

またお邪魔します。

投稿: 小径 | 2011年1月27日 (木) 23時36分

小径様
コメントありがとうございます。
ヤナーチェクの「クロイツェル・ソナタ」、是非お聞きになってください。ヤナーチェク特有の不思議な世界を味わえると思います。もしかすると、大嫌いになられるかもしれませんが、逆に「はまって」しまわれるかもしれません。感想をお聞かせください。
また、拙著につきましても、お読みいただけると、嬉しく思います。

投稿: 樋口裕一 | 2011年1月28日 (金) 11時51分

『音楽で人は輝く』拝読いたしました。
率直に申し上げまして、よくこれで本が出せるなと思いました。
この程度で仕事になるなんて大変にうらやましいです。
売れる技術をお持ちなんだなと深く
尊敬しました。大変参考になります。

投稿: 小林 | 2011年2月 1日 (火) 03時29分

小林様
 コメントありがとうございます。
 私の本の内容が薄いというご批判でしょうか。
 しかし、この本は何よりも初心者向けに後期ロマン派の見取り図を示した本なのですから、意識的に、内容をできるかぎり絞っています。内容をできるだけ減らし、いかにわかりやすくし、興味を持って読んでもらえるようにするかに力を注ぎました。
 なお、拙著「教える技術の鍛え方」に、内容を絞るのがいかに大事か、自分の知っていることを何もかも詰め込むと自己満足なってしまって、いかに伝わりにくくなるかなどについて説明しています。それも「勉強」してくだされば、きっとこの種の本の書き方を理解し、同時に、この種の本を書くことの難しさもまた、理解していただけると思います。
 繰り返しますが、啓蒙書の極意は、小林さんのような方からの批判が出るのを覚悟の上で、そして、三流扱いされるのも覚悟の上で、どれだけ内容を絞るかということなのです。私自身についていいますと、それができるようになってから、本がある程度売れるようになりました。そして、たくさんの人から「役立った」といってもらえるようになりました。

 なお、小林さんのコメントがややけんか腰と考えて、一度は削除したのですが、私の本の位置づけをわかってもらうにはよい機会だと思い、再現しました。
 

投稿: 樋口裕一 | 2011年2月 1日 (火) 03時42分

返答ありがとうございます。
前回の投稿は、樋口さんがどのように反応なさるのか、少し興味があってのいたずら心から斜に構えた口調にしてしまいました。

ご忠告に関してはよく理解しているつもりです。
本を読むこと、書くことの危険性はなかなか気がつきにくいものですね。
どの層に向けられて書かれたのか、著者の立場を理解することは大切でしょう。
それでもあえてコメントさせていただいたのです。

個人的な見解ですが、樋口さんは素晴らしいリスナーだとは感じます。
しかしせっかくのよさが、推敲の結果失われているように思います。
つまり、あまりにも内容を薄くしすぎているのではないかということです。
ある程度の読み応えは必要でしょう。こういうお仕事をなさっているのですからそれは
申し上げるまでもないことです。
初心者だから本気でやらなくてもいいということはない、と思います。
正直これくらいの情報なら自力でもさがせるわけです。
自力で探す、というのはある程度のクラシックファンなんだから、
これはあまりクラシックに興味のないひとへの啓蒙書として見てほしいということなのでしょうが…

わかりやすさに迎合して売れるのは結構なのですけどね。市場が市場ですし。

投稿: 小林 | 2011年2月 3日 (木) 19時35分

小林様
コメントありがとうございます。
ラ・フォル・ジュルネ2日目に出かけようとしてコメントを見つけましたので、早速返事します。
今回の本については、はじめからラ・フォル・ジュルネの公式本として企画したものです。前もって関係者から、くれぐれも専門的にならないように、あくまでも初心者向きにするように、わかりやすいガイドブックになるようにと釘をさされて書いたものです。そして、そのことは本の作りからわかっていただけると思います。
そのような事情をどうかお察しください。私も、できることなら、思う存分に自分の考えを示した専門的な本をそのうち書きたいと思っているのです。もちろん、そのためにはもっと勉強しなければいけませんが。私のようなもの書きが音楽について書く場合、今のような仕事しかできないわけです。そして、私は今のところ、それが私の使命だと考えています。ご理解をお願いします。

投稿: 樋口裕一 | 2011年2月 3日 (木) 20時03分

お忙しい中真摯なご返答ありがとうございます。
やはりそのような事情でございましたか。
やはり、というのもおかしいですが。
私もここらへんにしておきますが、いつかのびのびと、ライフワークになるような著作を書かれることを期待しております。
そのような機会が、より多く、物書きの方々に訪れるように、出版業界にも働きかけたいのですが小市民には無理な話でしょうね…
ラフォルジュルネ、楽しまれるよう祈っています。
ブログ汚し失礼いたしました。

投稿: 小林 | 2011年2月 3日 (木) 22時59分

私も買って、読ませていただきました。メンデルスゾーンについて、樋口さんのご指摘は的を得ています。中川右介「ショパン 天才の秘密」では、メンデルスゾーンをやたらお坊ちゃん呼ばわりしたような記述で、大変不愉快でした。中川右介さんは、あまりにも他の大作曲家を一方的に決め付けたようなことを書き付けていたため、これはいただけませんでした。
その他にも、リヒャルト・シュトラウスについて、グレン・グールドのリヒャルト・シュトラウス論を筆写していた時、樋口さんの著書を読んだ上でこれを読むと、なるほど、と感じています。
中川右介さんはモーツァルト、べーとーヴェン論も出しています。これも読むと、様々な人たちが様々な観点で捉え、論じていることですから、もう、わかりきっているようなことです。ましてや、交響曲第3番「エロイカ」成立について、桐朋学園大学教授、大崎滋生氏が学会発表、桐朋学園大学の紀要論文に纏めたように、フェルディナント・リースの発言は根拠のない作り話だったことが明らかになりました。もし、中川さんがこの論文を見て書いていたら、それこそお手柄だったものの、そうしませんでした。結局、ライターは書物のみであって、学術論文も見ません。ライターの限界ですね。中川さんが経済構造云々しても、樋口さん、作曲家の三枝成彰さんも指摘したことですから、何もなりません。結局、とんだ失敗作で、話にもなりませんでした。
中川さんは素晴らしい文才の持ち主とはいえ、人間性には問題があるようです。

投稿: 畑山千恵子 | 2011年7月30日 (土) 11時05分

畑山千恵子様
コメント、ありがとうございます。メンデルスゾーンにつきまして、「お坊ちゃん」という認識が広くいきわたっているようで、残念に思っています。多くの方が、当時のユダヤ人に対する差別の凄まじさを無視して考えているようです。差別の中での経済的裕福が多感な芸術家にとってどのようなものであるかに少し考えを巡らせば、そして音楽に真摯に少し耳を傾ければ、メンデルスゾーンが単なるお坊ちゃんでないことは、わかってもらえると思うのですが。
中川右介さんについては、私は個人的には存じ上げませんが、何冊かの本を読んで、とても面白く、とても切り口が斬新だと感じたことがあります。もちろん、私と考え方の合わないところは多々あるとは思いますが、私はそれも含めて読書を楽しんでおります。

投稿: 樋口裕一 | 2011年7月31日 (日) 09時47分

メンデルスゾーンは生誕200年の2009年、大変自己批判の強い、完全主義の作曲家であって、未完のまま残していた作品も多かったことも明らかになりました。これは単なるお坊ちゃんの作品ではありませんでしたし、作曲家として自己が本当に納得するような作品を残していきました。
また、メンデルスゾーンが生涯、ユダヤ人ということでの偏見、差別に泣かされてきたことも日本音楽学会での研究発表でも明らかになっています。
だから、中川右介さんのお坊ちゃん呼ばわりするような書きぶりには不快感を覚えました。星野宏美さんは、日本におけるメンデルスゾーン研究家として定評があります。星野さんのような人が中川さんの書きぶりを読んだら、それこそ怒ったでしょう。
作曲家論を書くならば、学問的なものを見ることは必要です。ただ、書物だけで書くことは大変危険なことであり、学術論文は見てほしいと痛感しています。そうでないと、やたら興味本位で偏った内容に成り下がる恐れがあります。
私は、その意味で、三枝茂彰さんの「大作曲家の履歴書」を高く評価しています。三枝さんも作曲家として、シェーンベルクが旋律、和音を壊したことについて、音楽史、音楽家として本当によかったかを真摯に問いかけています。音楽の経済構造についても読み取れることであって、大衆は旋律、和声のある音楽を好むものであることを見抜いていたからです。中川さんが経済構造を持ち出さずとも、三枝さんもきちんと理解していたからです。
そういった意味で、中川さんの作曲家論を読んだ時、それは全てわかりきっていたことであった以上、これは失敗だな、とわかってしまいました。
だから、三枝さん、樋口さんは、人間というものと真摯に向き合ってきたことが文章から見て取れることから、説得力ある内容になっていました。中川さんは、いくら文才があり、それなりに面白い視点があっても、人間というものに真摯に向き合おうともせず、書物、文章もので見ているから、説得力がないし、やたら人を中傷するようなことを書いたりしたのではないでしょうか。

投稿: 畑山千恵子 | 2011年7月31日 (日) 23時44分

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