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ナントのラ・フォル・ジュルネ3日目

 大満足の一日。すばらしい演奏の連続だった。

・クレール・マリー・ルゲ(ピアノ)、ツィムリンスキー弦楽四重奏団によるブラームスのピアノ五重奏曲。

 なかなかよかった。ただ、朝の915分からの演奏で、しかも、客に小学生の子どもが大勢含まれ、その子たちがおしゃべりする中での演奏だったので、あまり気合は入らなかったかもしれない。が、十分に名演奏だった。ルゲは、容姿もいいし、ピアノの音もきれい。

・レジス・パスキエ、ロラン・ピドゥらによるブラームスのピアノ四重奏曲第一番。ペヌティエが病気で突然ピアノは代役になった(誰になったか、確かめなかった)。

 昨日の第2番と同じように、ブラームスらしからぬブラームス。ブラームス特有に重さも暗さもない。代わりに繊細でしっとりした感触。それはそれでなかなかの迫力。が、この曲の第四楽章はもっと威勢がいいほうが個人的には好きだ。とはいえ、これも十分に名演奏。

・アンドレア・ヒル(メゾソプラノ)、ジャン・フレデリック・ヌーブルジェ(ピアノ)、モディリアニ弦楽四重奏団により、ブラームスの「ヴィオラとメゾソプラノのための二つの歌」とピアノ五重奏曲。

 これは凄まじかった。アンドレア・ヒルの歌はすばらしい。しかも大変な美人。が、それ以上にピアノ五重奏曲が凄かった。朝に聴いたルゲとツェムリンスキー四重奏団の同じ曲も決して悪くなかったのだが、ヌーブルジェらのこの曲を聴くとかすんでしまう。切れがよく、繊細でクリアでしかも劇的。ブラームス的なもやもやがないという点では不満もないではないが、これほどの演奏をされるとそんな文句を言う気もなくなる。余計なものは一切取り除き、ブラームスの楽譜を鮮明に再現しただけなのに、これほどの豊かな精神が描かれている。そんな気がした。現代の一つの到達点といえるかもしれない。

・レジス・パスキエ(ヴァイオリン)とクレール・デゼール(ピアノ)によるブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番と第3番。

 これもなかなかの演奏。第1番はかなりロマンティックに、第3番はかなりドラマティックに演奏していた。デゼールのピアノも音の粒立ちが美しい。ただ、直前にものすごいものを聞いた後だっただけに、ちょっと印象が薄い。

・ポール・メイエ(クラリネット)、モディリアニ弦楽四重奏団によるブラームスのクラリネット五重奏曲。

 これはもう絶品。モディリアニ四重奏団の音程の良いクリアな音とメイエのクラリネットの芯が強く明るめの音。だが、この暗い曲にまったく違和感はない。学生時代に好んで聞いたウラッハの音とはまったく異なるが、えもいわれぬ深い人間の心を歌っていることには変わりがない。第二楽章は涙が出てきた。ヌーブルジェとの演奏同様、モディリアニ四重奏団がすばらしい。

 これは、ブラームスの全作品の中で最も好きな曲だ。私は、芥川賞作家の高樹のぶ子さんと、直木賞作家の篠田節子さんという二人の魅力的な女性に囲まれて、このコンサートを聴いた。私がこのコンサートを薦めたのだったが、お二人ともとても気に入ってくれた。

・ピグマリオン合唱団と吹奏楽、ラファエル・ピション指揮。吹奏楽と合唱によるブルックナーのモテットなど。そして、ブラームスの「埋葬の歌」も。不断なまで聴けるはずのない珍しい曲。こんな曲が聞けるのも、ラ・フォル・ジュルネの楽しみだ。

吹奏楽と合唱という組み合わせの曲を集めたものだが、声の威力がみごと。全員の音程が驚くほどよいために、実にクリアで迫力がある。とりわけ、「埋葬の歌」はすばらしかった。

・ダヴィッド・ゲリエ(ホルン)、ルノー・キャプソン(ヴァイオリン)、ニコラス・アンゲリッチ(ピアノ)により、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番とホルン三重奏曲。

 ヴァイオリン・ソナタが先に演奏されたが、キャプソンとアンゲリッチの繰り広げる繊細で丁寧な音と音楽に改めて驚いた。とてつもなく美しい。しみじみと聞きほれる。そのあと、ホルンが加わってのトリオだった。ホルンは昔ながらの楽器で、音程が不安定な中、実に渋い音を出していた。現代楽器の録音を聞きなれた耳には、最初異様な樹がしたし、音程の狂いも気になったが。この楽器でしか出せない味を出していた。

 実はこの曲が私は大好きだ。ホルンの音にブラームスのおずおずとした心の叫びを感じる。しかも、実にロマンティック。昔々、一度だけこの曲を日本人演奏家の演奏で聴いた覚えがある。が、それ以降、まったく機会がなかった。この機会に聞けて、実にうれしい。

・デン・ハーグ王室管弦楽団 ネーメ・ヤルヴィ指揮によるブルックナーの交響曲第7番。

 すばらしかった。整理の行き届いた、実にすっきりしたブルックナー。曖昧なところはまったくない。オケも実にクリア。恐ろしく音程がいい。それなのにというべきか、だからこそというべきか、きわめてロマンティックで、豪快さも十分に感じられる。私は恍惚となった。ネーメ・ヤルヴィの底力を知った。ただし、宗教的な雰囲気はあまりない。それが少々不満といえば不満。

 このあと、ほかにもコンサートを予定していたが、ブルックナーの名演奏のあとに何かを聴こうという気にはならずに、帰ることにした。

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