« ラ・フォル・ジュルネ記者会見 | トップページ | 京都の日々 »

対談と取材の一日

 2月に入ってから、実はかなりのチケットを無駄にしている。ナントに行ったために、新国立劇場の2つの演目に行くことができなくなって、知人に譲った。マリインスキー管弦楽団とゲルギエフによる『パルジファル』(コンサート形式第三幕)などの演目は、風邪のために行けなって、これまた知人にチケットを譲った。今日も、コンサートに行く予定だったが、風邪がいつまでも抜けないので、家にいることにした。

 今日は一日、家でゆっくりしている。

 昨日(2月18日)は、ラ・フォル・ジュルネがらみの二つの対談と一つの取材で忙しかった。

 まずは、『ニーチェの言葉』の白取春彦さんとの対談。白取さんも、私と同じ今年のラ・フォル・ジュルネの「アンバサダー」であり、ラ・フォル・ジュルネやドイツの思想と音楽などに関して話した。白取さんとはナントでご一緒したが、私はずっとコンサートにいくばかりで、お話しする機会はほとんどなかった。初めてきちんと話した。

 私はフランス文学出身だが、実はニーチェが大好き。高校、大学とニーチェにかぶれて、すべての翻訳は読んだ。もちろん、わかったかどうかかなり怪しいが、ともあれ感動して読んだ。とりわけ『悲劇の誕生』は芸術に対する時の指針であり続けている。私は、音楽に導かれて文学や思想に踏み行った人間だが、ことニーチェとワーグナーに関しては、ワーグナーよりも先にニーチェのほうが好きだった。1970年代に都内の教会で開かれたニーチェの作曲した曲を集めたコンサートにも出かけた記憶がある。ワーグナーというよりもシューマンに近い曲想だが、まったく才能を感じないと思ったのを覚えている。

 時間がなかったので、あまり突っ込んだ話はできなかったが、ワーグナーとニーチェのこと、ドイツ人の生き方などについて話をした。

 時間が押したので、あわててタクシーで次の取材地に行って、音楽ライター渡辺謙太郎さんの取材を受けた。ナントのラ・フォル・ジュルネについて報告し、日本のラ・フォル・ジュルネのお薦めコンサートなどについて話した。渡辺さんとは一昨年のナントでご一緒し、それ以降、親しくさせていただいている。私の小論文の参考書を読んでくれた若い世代の方だが、音楽に関しては私のほうが教えてもらうばかり。

 取材の後、渡辺さんとコーヒーを飲みながら楽しい時間を過ごした。コーヒーがおいしく、店構えも美しく、マスターも楽しい。渡辺さんの行きつけの珈琲舎「蔵」という店。

 その後、夜は高樹のぶ子さんと対談。高樹さんは福岡在住だが、芥川賞の選考委員として授賞式に来られていたので、それを機会に対談させていただいた。拙著『音楽で人は輝く』と、それを公式ガイドブックにしているラ・フォル・ジュルネについての対談だ。

 高樹さんは芥川賞受賞式からそのまま来られたため、着物姿。それがとてもお似合いでうっとりするほどだった。写真を撮らせていただいたが、もったいないので、ここには掲載しない。

 これまでかなりの数の対談をしてきたが、こんな楽しい対談はめったにない。高樹さんも今年のラ・フォル・ジュルネのアンバサダーなのでナントでご一緒し、並んでコンサートを聴き、ともに感動した仲。その時点でかなり共感するところも多かったが、1時間半ほどじっくり話して、深く共感することばかりだった。

 20年以上前、美人作家としてデビューされた高樹さんに対して偏見を持っていた私に、「高樹のぶ子はおもしろいよ」と薦めてくれたのが、芳川泰久氏(文芸評論家にして早稲田大学教授。私とは早稲田大学時代の同級生)だった。半信半疑で読んでみて、「わあ、凄い」と思った。タイトルは忘れたが、高校の女友達との交流を描いたもので、さわやかでありながら鋭い感性と文体に驚いた。私は決して高樹さんの良い読者ではないが、それ以来、時折気になって、文庫も数冊読み、そのたびに深い感銘を受けてきた。

 高樹さんの音楽に対する直観力に感服。それを見通す分析力にも圧倒された。実は高木さんも戦後の九州で音楽に触れ、音楽に渇望し、音楽に感動して生きてこられたことがわかった。実は同じような空気の中で育ち、その中で、同じような感性を育ててきたことも感じた。話は弾み、この上なく楽しく話が進んだ。

 なんと高校時代の高樹のぶ子さんが作曲した合唱曲があり、それがCDにもなっていることも判明!! これについては、雑誌に出るだろうから、ここではふれない。また、対談の中身についても、近いうちに雑誌に載ると思うので、示さない。

 ともあれ、私はとても楽しく、とても幸せだった。高樹さんも同じよう感じてくれていたら、こんなうれしいことはない。

|

« ラ・フォル・ジュルネ記者会見 | トップページ | 京都の日々 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

樋口さん、こんばんは。そして、お大事に。

ワーグナーとニーチェといえば、そのタイトルによるフィッシャー=ディースカウの労作がありますね。荒井秀直氏の訳で、いまちょうど読んでいるところなのですが、目からウロコ的なことがたくさん書いてあります。ワーグナー(+コジマ)とニーチェが師匠と弟子のように、密接に親交を結んでいた事実は、実際、あまり知られていませんね。後年のニーチェがワーグナーを厳しく批判した事実は、断片的に知られていたりしますが。

お元気になられたら、その著作に関する見解なども窺えたら幸いと思いました。

それでは、かえすがえすもお大事になさってください。

投稿: アリス | 2011年2月20日 (日) 23時24分

アリス様
コメントありがとうございます。
フィッシャー=ディスカウの著書は刊行直後に読みました。が、当時は、あまり得るところがないと思ったのを覚えています。それよりは同じタイトルの別の本(今、京都に来ていますので、現物を確かめられません)のほうがおもしろいと思いました。が、もう一度、読み返してみたいと思っているところでした。今読むと印象が違うかもしれません。
「ニーチェとワーグナー」については大学生、大学院生のころ、かなり突っ込んで考えていましたが、よくわからないままになってしまっています。私はドイツ語ができませんので、発表できるかどうかはわかりませんが、老後のライフワークにしようと思っています。
なお、私の風邪は、時々咳が出るくらいで、生活に支障はなくなりました。が、猛烈な忙しさが続いて、疲れたのは間違いないようです。

投稿: 樋口裕一 | 2011年2月21日 (月) 23時04分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/50913147

この記事へのトラックバック一覧です: 対談と取材の一日:

« ラ・フォル・ジュルネ記者会見 | トップページ | 京都の日々 »