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ネマニャ・ラフォゥロヴィチの圧倒的コンサート「悪魔のトリル」のことなど

 昨日(32日)は朝から、忙しく、実り多い一日だった。

 まず、立川のたましん(多摩信用金庫)winセンターに行き、多摩フィルの音楽監督今村さんとともに、たましんの方(仕事上の関係なので、あえて、お名前は出さないことにする)とお話しした。今、多摩フィルと多摩大学樋口ゼミの間で計画している多摩音楽祭という壮大な計画について、様々なアイデアをいただいた。当面の協力もお願いした。忙しい時間を使っていただいたが、とても実りある時間だった。

 今村さんと昼食をすませて、神保町の集英社に行き、今度、アメリカのオーケストラ

に関する本を出す評論家の山田真一さんと対談。山田さんの本を読ませていただいたが、とてもわかりやすくおもしろい本だった。

 実は私は「ドイツ音楽至上主義者」というほどではないが、それにかなり近い人間。だから、アメリカのオーケストラには長い間、偏見を抱いていた。「機能性ばかり追求してヨーロッパ的な音楽性に欠ける」と思っていた。近年になって、やっとアメリカのオケの音楽性を認識するようになったところだった。だから、山田さんは私よりも10歳以上年下で、しかも対談という形だったが、こちらからはいろいろとアメリカのオケの歴史、日本のオケの現状など、教えてもらうことばかりだった。

 アメリカで育ち、今はヨーロッパで活動している本格的な研究者であり評論家。私は単なるもの書きの音楽愛好者でしかないので、話がかみ合わないのではないかと思っていたが、山田さんはとてもよい方で、楽しく話ができた。

 話の内容については、近いうちに活字になると思うので、関心のある方はそれをご覧いただきたい。

 その後、週刊アスキーの対談で、コラムニストの神足裕司さんとお会いして、拙著『音楽で人は輝く』やふラ・フォル・ジュルネについての話した。いろいろと予想外の展開になったが、ここではあまり書けない。これも近いうちに活字になると思う。

 こうして、夕方、東京オペラシティコンサートホールに到着。もちろん、私がファンクラブの会長を務めるネマニャ・ラドゥロヴィチを中心としてコンサート「悪魔のトリル」のため。

 前日、ファンイベントで演奏されたのと同じ曲もあり、またイベントの前のリハーサルで聴いた曲を再び聴けた。昨日のブログで紹介した5人の弦楽器奏者をバックにしてネマニャがヴァイオリンを演奏。

 言うまでもなく、透明で細身の素晴らしい音。そこから繊細で美しく、甘美で、しかも、情熱的な音楽が醸し出される。いやはや最高の音楽体験。昨日書いたことなので、繰り返さない。ただ、圧倒的であって、稀代のヴァイオリニストであることを改めて書いておく。このファンクラブの初代会長を務められて、名誉に思う。

 ただ、やはりホールが大きすぎるのを感じた。昨日、200人も入らない狭いホールで、ネマニャが弦に弓を載せる音、かすかな音まで聞こえる状況でないと、ネマニャの本当の凄さが伝わらない。あの絶妙のスタッカート、正確で無駄のない指づかいなど、近くで聴くと手に取るように分かり、魂が揺さぶられる。が。1000人以上入るホールでは、それが伝わらない。

 そして、もう一つ、やはりもっと本格的な曲を聴きたいと心から思った。バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、ラヴェル、バルトーク、イザイといったヴァイオリン独奏曲を聴きたい。まだまだネマニャの知名度が日本では低い。だから、このような曲を演奏してもらえる機会が少ない。もちろん、今回のような曲を集めたコンサートもあっていい。これも彼の魅力だ。だが、彼はそれだけの人ではない。ファンクラブの力で、そのような本格的なコンサートもできたら、どんなにいいだろう。

 終演後、サイン会が開かれ、おそらくは200人ほどの人が行列を作っていた。ファンクラブ会長としては、最後までたちあおうかと思ったが、腰の痛みがあるので、帰らせてもらうことにした。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

樋口先生こんばんは!公演いきました。
すごい演奏でした。終演後はしぱらく放心してました(笑)こんなに人の心を揺さぶる音楽って中々無いですよね!四季の夏もキレまくっていて最高でした〜
もう1回見たい聞きたい♪東京のLFJに出てくれればいいのになぁ。

ファンイベントはいけなかったので、是非次回は行きたいです。先生のおっしゃる通り、小さなキャパのところでも聞きたいし、有名な作曲家の演奏も聞きたいです♪

投稿: Moon | 2011年3月 4日 (金) 02時11分

樋口先生
同じ感想を持ちました。その前日に聴いた音を無意識に期待し
ていたせいか、会場が広すぎて、音の響きが「あー違う」と
感じてしまいました。
名古屋の宗次ホールはその点大変理想的な会場で、音響が素晴
らしいのはいうまでもなく、広さが310席とちょうどいい広さ
なので、ここでネマニャを聴ければどんなにいいか、と思いま
した。
東京にも似たような場所があればいいのですが。
ネマニャのいわゆるオーソドックスな曲、ぜひ聴きたいですね。
今まで持っていた曲の印象を覆される気がします。

投稿: mitsu | 2011年3月 7日 (月) 18時34分

樋口先生、腰の具合はいかがですか?
ファンイベントはとても楽しかったです。ありがとうございました。
特にライヴは本当に素晴らしくて、翌日のオペラシティは「ホールが大きすぎる」と私も感じました。でも5日の兵庫県立芸術文化センターはオペラも上演する大ホールだったにも関わらず、ホールが大きすぎることが気になりませんでした。技術的なことはよくわかりませんが(すみません!)、オペラシティより演奏の出来はよかったと思います。
「ラ・フォル・ジュルネ」でも大ホールの演奏は毎回ノリがよかったので、もしかしたらネマニャは会場が大きいほうが「燃える」タイプなのでは? 小さい会場で、より近くで聴きたいのはやまやまですが、反面、もっともっとたくさんの人にネマニャのファンになっていただきたいので、「大ホールでもやむをえない」と言ったら、やっぱり顰蹙でしょうか・・・。
オペラシティでは締めのアンコール3曲目(映画「シンドラーのリスト」より)で「すべった」感じでしたが、兵庫公演は「アンダルシアのロマンス」で楽しく終われたせいか、ご本人もとても満足した様子で、幸せそうに見えました。
でもネマニャの実力をもってしたら「悪魔のトリル」プロジェクトは「お遊び」のような気がします。先生がおっしゃる「もっと本格的な曲」というのもそういう意味ですよね? ぜひ本気モードのリサイタルやコンチェルトの客演を期待したいです。

投稿: nina | 2011年3月 7日 (月) 19時58分

昨夜書き込みさせていただいた nina です。
「兵庫県立芸術文化センターでは大ホールが気にならなかった」点、少し補足させてください。
もちろん弦の響きの美しさや力強さ、確かな演奏技術を堪能するためには音響のよい小ホールにかなわないと思うのですが、大ホールはまた別の楽しみ方があると思いました。
たとえば、客席とステージが近く場内が明るいオペラシティコンサートホールでは「その衣装はこの舞台に似合わないんじゃないの!」と思ったのですが、兵庫公演では照明が入ったこともあり、身体にフィットした全身真っ黒の衣装で(レザーパンツはともかく、靴まで光りものとは少々ビックリしましたが)長い髪を振り乱して演奏している姿にはカリスマ性を感じました。
「繊細にして情熱的、エモーショナルでアグレッシブ(←変な日本語で申し訳ありません)」なだけではなく、「官能性」がネマニャのネマニャたるゆえんではないかと思った次第です。
「ロックスターじゃあるまいし」とのご批判もあると思いますが、若いからこそできることでもあり、こういうネマニャに出会えたのもうれしかったです。これから何をやらかしてくれるかわからないワクワク感がありますし。
もちろん「お遊び」ばかりやっていないで、きちんと正統派の音楽も続けてほしいです。ご本人が自覚している以上に才能があるんじゃないかと思うんですけど・・・。
ちなみにファッションは普段着のほうがおしゃれで好きです。ファンイベントのコーディネートは本当にかわいかった! こういうことを書くからミーハーは・・・と言われそうですね。失礼しました!

投稿: nina | 2011年3月 8日 (火) 07時08分

mitsu 様
名古屋の宗次ホール、一度コンサートの司会をしたことがあります。とてもいいホールですね。いつの日か、ファンクラブが主催で全国ツァーを行って、宗次ホールでもネマニャに弾いてもらえるといいですね。決して夢物語ではないと思います。
それを夢見て、どうかよろしくお願いします。

投稿: 樋口裕一 | 2011年3月 8日 (火) 08時08分

nina 様
コメント、ありがとうございます。腰は、痛み止めを飲んでなんとかしのいでいますが、快方に向かいつつあるようです。ありがとうございます。
兵庫のご報告、ありがとうございます。ネットをのぞいてみると、ネマニャはオペラシティよりも、ノって演奏していたようですね。聴きたかった!!
おっしゃる通り、ネマニャは自分で思っている以上に力のある人だと思います。ファンイベントの前に少しだけインタビューしたのですが、私がネマニャを絶賛すると、彼は「僕はそんなexceptionnelではない」(「僕はそんなに並外れていない」と訳せますね)と答えました。どうも謙遜ではなく、本気で言っていたようです。まずは彼の力のほどを本人に分かってもらうことが私たちの最初の使命なのかもしれません。
ネマニャは様々な表現のできる人だと思います。おっしゃるとおり、大ホールで観客を熱狂に巻き込むこともできる(ラ・フォル・ジュルネのAホールの『四季』はまさしくそうでした)し、小ホールで先生で強い表現をすることもできます。
おっしゃるとおり、もっと本格的な曲をもっとじっくり聴きたいですね!
そのためにも、多くの人の応援が必要だろうと思います。どうかよろしくお願いします。

投稿: 樋口裕一 | 2011年3月 8日 (火) 08時25分

ミーハーな書き込みをしてしまい恐縮しておりましたが、先生にコメントを頂戴して感激です。ありがとうございました。
やはりネマニャは自分のすごさに気が付いていないのですね? なんとなくそんな気はしていました。
「ラ・フォル・ジュルネ」で初来日したときに一目(一聴?)惚れして以来ですが、誰でも知っているような、いわゆる定番の曲を弾いても、他のアーティストの演奏とはいつもどこか違っていました(残念ながら知らずに聴き逃した公演も多々ありますが)。大作曲家たちには大変失礼な言い方かもしれませんが、「こんなにいい曲だった?」と思ったこともあります。
超絶技巧もさることながら、あの若さで自分の音楽の「世界」があるし(この「世界」が好きじゃないという方も当然いらっしゃるのでしょうけど)、舞台映えするという意味も含めて「華」がある。技術は訓練や経験で補えると思いますが、「世界」や「華」は努力次第とはいかないはずで、その意味においても稀有な才能だと思っています。
「悪魔のトリル」アンサンブルのソリストでも十分すごい演奏だったと思いますが(特に兵庫で聴かせてくれたタルティーニ「悪魔のトリル」のカデンツァは圧巻!)、本来のネマニャの腕ならこんなもんじゃないはず。
セルビア出身でハンディがあるとは思いますし、ファンのわがままかもしれませんが、せっかくの才能なので、もう少し貪欲に、王道を行くプログラムでもがんばってほしいです。
もちろん、ネマニャが本当にやりたい音楽なら、どんなスタイルのものでも応援し続けたいとは思いますけどネ。がんばれ、ネマニャ!
先生、ファンのみなさん、これからもよろしくお願い致します。

投稿: nina | 2011年3月 8日 (火) 12時16分

2009年東京国際フォーラムで聴いた四季とバッハのヴァイオリン協奏曲一番二番の感動が忘れられず、会社を休み、青森から聴きに来たのですが、残念ながあの感動は得られませんでした。
確かに美しい音色なのですが、あの息をもつかせない、体に電流が走り、わけもなく涙が出てくるまでにはいたりませんでした。やはりホールと客数のバランスだったのですか。
なんでだろう?なんでだろう?と自問自答する日々。
前の日のファンのツーショットのサービスで彼の音楽性が失われたのか?握手しすぎて、手に力がはいらなくなってしまったのか?などなど・・・でも、彼は特別なので、そのまれな才能をつぶさないよう心から願っています。

投稿: inoue | 2011年3月 9日 (水) 10時15分

inoue様
コメント、ありがとうございます。
オペラシティでは、ラ・フォル・ジュルネの時ほどに感激なさらなかったとのこと。私も同じです。もちろん、大いに魂を揺り動かされましたが、ヴィヴァルディやバッハやラヴェルを聴いた時ほどではありませんでした。ただ、私は曲目と会場が原因だと思っています。そして、バックの友人たちに気を使っているのだと思います。バッハなどの名曲をソロで弾けば、必ずやもっと深い感動に人々を導くことでしょう。やはり、クライスラーやタルティーニでは、それは難しいのではないでしょうか。
もちろん、前日のイベントが原因ではないこと、断言できます。オペラシティや兵庫でのコンサート後のサイン会では、ファンクラブイベントの2倍から3倍の人が握手を求めたのに、ネマニャは平気だったということですから。
私もファンが寄ってたかってネマニャをつぶすことがないように、そして、できるだけ彼を最高のコンディションで演奏することができるように努力したいと思っています。

投稿: 樋口裕一 | 2011年3月10日 (木) 00時02分

樋口先生の御心の深さと温かさに感動しています。
やはり、先生は素晴らしい御人徳をお持ちの方なんだと改めて感じた次第です。
たぶん、先生のようなお答えをしてくださる方を心の中で探していたような気がします。
先生も同感してくださったことで、私の気持ちは吹っ切れました。その上、わたしのたわいもない自問にも優しく答えて下さり、恥ずかしいばかりです。
本当に先生に感謝致します。(ネマニャより先生のファンになりそうです。フフフ)
私もネマニャが最高の演奏ができるようこれからも応援していきたいと思います。

投稿: inoue | 2011年3月10日 (木) 10時04分

inoue様
コメントありがとうございます。
「もしかして、ほめ殺し?」とも思いましたが、ともあれ、文字どおりにとらせていただきます。
ネマニャは並外れた演奏家だと思います。それがもっともっと並外れるように、私たちも少しでも助力できるように努力したいと思います。どうかよろしかったら、ファンクラブにご入会ください。以下をご覧ください。
http://nemanja.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-108e.html
ただし、私に会うと、すぐに、私がただのグータラのオジサンだということがわかります。

投稿: 樋口裕一 | 2011年3月11日 (金) 08時49分

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» ネマニャ・ラドゥロヴィチ [Idehara.at.TamaUniv]
がりがりとシステムを書いているなか、縁あってネマニャ・ラドゥロヴィチのコンサートに足を運んだ。 音楽に関しては幸い(?)完全な素人なので、場をまるごと受け入れるしかない。空間を埋める振動に身をゆだねながら、湖の水面がさまざまに波立つような印象をもった。どこまでも見通せるような、澄み切った水だ。日ごろ、常に物事を分析的に捉える癖がついてしまっているが、よい音楽に出会うと、その時間だけは脳の分析部分の電源が落ちる感じがして、よい。私にとっては、音楽を分析的に捉えることは、音楽の意味をなくしてしまう行為だ... [続きを読む]

受信: 2011年3月 4日 (金) 12時27分

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