« こんな時にこそ音楽を! 4月8日 多摩フィルメンバーによるコンサートのお知らせ! | トップページ | 黒澤明「静かなる決闘」「隠し砦の三悪人」 »

ラ・フォル・ジュルネ成功のために、そして黒澤映画のこと

25日、都内のある場所に行って、ラ・フォル・ジュルネを盛り立てる一環として、葉加瀬太郎さんがナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組「WORLD AIR CURRENT」の収録。ゲストとして参加し、ナントのこと、ラ・フォル・ジュルネのことについてお話した。

私はこれまで、三枝成彰さんの組織したオケなどで葉加瀬さんのヴァイオリンを聴いたことはあったし、同じ場にいあわせたことは何度かあったが、お話したのは初めて。葉加瀬さんは大のブラームス好きとのことで、クラシック音楽談義で盛り上がった。音楽の才能は格段の違いがあり、生まれた土地も年代もかなり違っているが、子どものころにクラシック音楽に熱中し、周囲から孤立しながらもクラシック・オタクを通した点では共通している。多感な少年だった私がブラームスの音楽を聴くことによって自分の孤独をかみしめ、ぐっと感傷をこらえていたように、きっと葉加瀬さんもブラームスを愛することで同じような少年時代を過ごしていたのだろう。

ブラームスについての考えをうかがって、葉加瀬さんの音楽観、そして人柄がとてもよくわかる気がした。実は私は葉加瀬さんのソロを聴いたことはなかった。が、とても聴きたくなった。そして、葉加瀬さんのファンになった!

 ところで、すでに過ぎてしまったが、音楽専門衛星デジタルラジオ、ミュージックバードで3月20日に「ラ・フォル・ジュルネ2011予習篇!~後期ロマン派のタイタンたち」というタイトルの番組にも、私はゲストとして出演して、今年のラ・フォル・ジュルネについて語り、今年扱われる作曲家の曲を聴いてもらった。

 ところで、同じミュージックバードで43日と10日に放送される「今年はこうなる!ラ・フォル・ジュルネ2011 タイタンたち」というタイトルで、ラ・フォル・ジュルネについて紹介する。よろしかったら、お聴きいただきたい。もちろん、私のしゃべりはうまくないが、ナビゲーターの田中美登里さんが上手にリードしてくれているので、それなりには楽しめるようになっていると思う。

 本日、26日は、午前11時から、先週に続いてラ・フォル・ジュルネの「ソムリエサロン」にゲストとして参加。今日はよみうりカルチャー荻窪での開催。高級オーディオ機を用いて、CDを聴いていただきながら、東京で取り上げられる曲目について、クラシックぴあ編集の田中泰さんとお話しした。余震、原発騒ぎで落ち着かない中で参加してくださった方々に感謝。

 田中さんのリードでとても楽しく話ができた。

 数日前から、時間を見つけて黒澤明の映画を見ている。

 実は、私は黒澤明の映画には、それほどの思い入れはない。私が映画を見始めた時期には、すでに黒澤は過去の大監督だった。しかも、私が好きなのは、黒澤流のスケールの大きな娯楽超大作ではなかった。だから、リアルタイムで見て感動したのは『デルス・ウザーラ』くらい。

名画座で『羅生門』『七人の侍』『用心棒』『椿三十郎』『天国と地獄』『赤ひげ』などを見て圧倒されたが、特に好きな監督というわけではなかった。ただ、NHK・BSなどで放送されると、時間ができたら見たいと思って、とりあえず録画しておいた。

そして、今、大震災が起こり、テレビで悲惨な状況をみたり、原発の放射能漏れの報道を見ると、音楽を聴く気分にもなれない。かといって、じっくりと本を読む気分にもなれない。

津波の被害を見るうち、戦後の荒廃、そしてそこから立ち上がる日本の戦後期を連想した。もちろん、私は戦後の生まれなので、実際にはそのような光景は知らないが、まさしく黒澤などの映画で見てきた。ふと録画しておいた黒澤映画を見たくなった。

そんなわけで、これからときどき黒澤映画の感想を書こうと思う。今日はこれまで見た2本について短く感想をまとめる。

「酔いどれ天使」

 昭和24年の映画。酒好きで口は悪いが、患者のことを必死に思う医師(志村喬)と、闇市を仕切りながらも、強がりを言いながらも心やさしいヤクザ(三船敏郎)の交流を中心に、敗戦直後の闇と希望を描いている。

 ヤクザの病んだ肺、そして戦前・戦後の社会の病巣をゴミ捨て場にされた沼地にたとえ、結核に冒されながらも病と闘って克服した少女(久我美子)に将来への希望を託して、戦後への希望を語っているといえるだろう。

 かつて見た黒澤の戦後の状況を描いた「素晴らしき日曜日」もとてもよかったが、これも実によくできた映画。三船の演じるやくざの人物像がみごと。ルネ・クレールやジュリアン・デュヴィヴィエの映画を思わせる。ある意味で、先が読める展開ではあるが、それでもリアリティがあるのは、志村喬の演技力と、三船敏郎にピッタリの役柄にあるだろう。三船は決してうまくはないが、存在感はさすが。千石規子、木暮美千代、殿山泰司、中北千枝子もいい味を出している。

 が、そうしたこと以上に、戦後、様々の矛盾にあふれながらも希望を持って生きていた時代の心を強く感じた。震災で日本社会が揺らいでいるときに見たがために、そのように特に強く感じたのかもしれない。

「蜘蛛巣城」

『マクベス』を日本の戦国時代にうつしての人間ドラマ。なるほど、黒澤が『マクベス』を描くとこうなるのかと納得できる作品だった。

 三船敏郎がマクベスにあたる役。野望に駆られ、妻にそそのかされて大罪を犯すが、その後、亡霊に怯えた武将をドラマティック、悪く言えばかなり大袈裟に演じている。まるで大根役者のようだが、きっとこれも黒澤の計算に基づいているのだろう。野望や怯えを「動」で表す三船と、それを「静」で表現する山田五十鈴(マクベス夫人にあたる役を演じている)の対比を明確にしている。が、それにしても、山田五十鈴のひしひしと迫る迫力には驚く。ものすごい演技力。とりわけ、見えない血を洗おうとする場面は圧倒的。

 言うまでもなく、合戦の場面や武将たちの行進の場面のリアリティもみごと。ただ困ったのは、どうもセリフが聞き取りにくい。私の耳のせいではないと思う。人名など、ほとんど聞き取れなかったといえるほど。

|

« こんな時にこそ音楽を! 4月8日 多摩フィルメンバーによるコンサートのお知らせ! | トップページ | 黒澤明「静かなる決闘」「隠し砦の三悪人」 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

黒澤作品は自分もよくみました。特に佐藤勝さんの音楽と画像との組み合わせの凄さにとうとう佐藤勝さんの黒澤作品を集めたCDまで買ってしまったほどでした。特に「用心棒」と「天国と地獄」の音楽の使い方が自分は気に入ってます。現在では宮崎駿と久石譲の組み合わせが高く評価されてますが、それとは違った凄みを感じます。特に「用心棒」での身体の動きと音楽のマッチ、そしてハープシコードの使い方はいつ聴いても斬新に感じます。よく時代劇にハープシコードを使おうという発想がでたものです。

そして「天国と地獄」でのシューベルトの「ます」の使い方。黒澤監督は悲惨さや悲哀等をあらわす時、わざとそれとは反対の明るい音楽を使い、それをより引き立たせるという手法をよく使いますが、ここでもそれが見事に発揮されています。黒澤監督は音楽に対しても凄い才能をもっていたと思います。

ところでラ・フォル・ジュルネも迫ってきましたが、自分はラ・フォル・ジュルネに仙台フィルの方達が特別参加してくれないだろうかと思ったりしています。彼らは6月迄の公演がすべて中止となってしまいました。できれば彼らに少しでも音楽をする場所を提供しててほしいと願っております。もちろん仙台フィルの方達の意見が最優先でしょうが…。彼らにぜひ音楽をさせてあげたいです。

投稿: かきのたね | 2011年3月27日 (日) 00時00分

かきのたね様
コメント、ありがとうございます。
恥ずかしながら、黒澤映画での音楽の使い方には、ほとんど気づいておりませんでした。これから、「用心棒」も「天国と地獄」も見るつもりですので、音楽に気をつけてみてみます。
さきほど「静かなる決闘」を見てみたのですが、確かに、主人公が絶望しているとき、周囲の容器が音楽が聞こえて、いっそう絶望感を強調していますね。
ラ・フォル・ジュルネに仙台フィルというお考え、いいですね。もうすでにプログラムは決定していますが、もしかすると、ヨーロッパのオケの一部が来日しないなどということも考えられなくもありません。そんな場合、仙台フィルに来てもらえると、うれしいですね。私にそのような権限はないのですが、もし、機会があったら、そのような提言をしてみようと思います。

投稿: 樋口裕一 | 2011年3月27日 (日) 22時48分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/51222518

この記事へのトラックバック一覧です: ラ・フォル・ジュルネ成功のために、そして黒澤映画のこと:

« こんな時にこそ音楽を! 4月8日 多摩フィルメンバーによるコンサートのお知らせ! | トップページ | 黒澤明「静かなる決闘」「隠し砦の三悪人」 »