« びわ湖のラ・フォル・ジュルネ2日目 | トップページ | 東日本大震災復興支援スペシャルコンサート »

ちょっと音楽以外の話を・・・。探偵ナイトスクープと黒澤映画。

 このところ、音楽のこと、とりわけラ・フォル・ジュルネのことばかり書いている。明後日から、東京のラ・フォル・ジュルネが始まり、これまでにも増して音楽のことばかり書くので、その前に、別のことをちょっとだけ書こう。

 ラ・フォル・ジュルネの合間に、京都のテレビで探偵ナイトスクープを見た。関西で大人気なのに、関東ではなぜか視聴率が取れずに、地上波では放送されていない番組。私はいちおうはインテリのはしくれなので、この種の番組を好まないと思われることもあるが、そんなことはない。私はこの番組が大好き。

 足蹴りを一度したいと願う女子大生の思いをかなえるために、プロレスの選手を相手に仕立てる回、最高におもしろかった!! 結局、父親も一緒になってタッグマッチを行うことになる。必死に戦う父と娘。本当に必死らしいので、笑ってしまうが、同時に感動の涙が出てしまう。

 実際よりも早く進んだり遅く進んだりしながらも、正確に1分間を刻む目覚まし時計も、発明家のお年寄りもおもしろかった。帽子の先につけた棒で譜面をめくる機械も最高! 笑い転げながら見た。

 どうして関西の人はこんな面白い番組を作れるのだろう。そして、どうして関東の人はこんな笑いを好まないのだろう。真面目さとおふざけがうまく配合された大人の笑い。見事な文化だと思う。

 ところで、黒澤映画も、時間を作って見続けていた。「まあだだよ」まで見終えたので、これについても感想を記しておく。

「乱」

 猛烈に忙しいころの封切だったので、今回、初めて見た。素晴らしい映画だと思った。最高傑作の一つだと思う。こんなに素晴らしい映画をこれまで見なかったことを後悔! これは娯楽作品を超えて、一級の芸術作品だと思う。

 リア王の話を借りて戦国の世の親子兄弟の争いを描きながら、そこに戦争と平和、人の世の苦しみ、信仰など、人間の普遍的感情を盛り込んでいる。複雑な話をわかりやすく描き切っている。映像が最高に美しい。

 主演の仲代達也はもちろん、原田美枝子、井川比佐志、ピーターも最高の演技。

 これについてはあまりに凄すぎて感想を書く言葉を知らない。我が家の小さなテレビ画面では入りきらないスケールなので、近いうちにもっと大きな画面で見たいと思った。

「八月の狂詩曲」

 1991年の封切当時、あまり評判がよくなかったのを覚えている。今回、いくつかのサイトのレビューを調べてみたら、やはりかなり厳しい評価が多いようだ。が、私はかなりおもしろく見た。

 かつて長崎の原爆で夫を失い、その後、一人で子どもたちを育てた老いた女性(村瀬幸子)が主人公。ハワイで大富豪になった兄から会いたいという連絡をもらうが、兄弟が多かったため、その兄に覚えがなく、ハワイに行くのをためらう。子どもたちやその配偶者、そして孫たちは女性をハワイに行かせようとするが、女性はかつての原爆にこだわっている。そうこうするうち、祖父が原爆で死んでいたことを初めて知ったアメリカ国籍の富豪の息子(リチャード・ギア)がやってきて交流する。が、女性は徐々に痴呆の症状を示し始め、嵐を原爆と勘違いして混乱する。

 まさにこれは「狂詩曲」。黒澤監督が、「影武者」や「乱」のような「交響曲」ではなく、ちょっと気まぐれに気楽に撮った「狂詩曲」としての映画だ。しかも、狂い始めた老いた女性を主人公にし、「遠野物語」を思わせるようなとぼけた味の地域の怪奇譚が語られる。過去を忘れて繁栄する現代の長崎の奥のほうに、不気味で妖気漂う過去があることを、一人の老女(あえて老女と記す)を通して描いている。真正面から原爆の恐ろしさを訴えた映画ではない。あえて調子っぱずれに現代への警告を描いている。音程の狂ったオルガンはその象徴だろう。過去の妖気を保つ老女と、現在の繁栄を謳歌する息子・娘世代、うぶであるがゆえに中立的な孫の世代。

 老女が狂って嵐の中を走り出す最後の場面は圧巻。老女の中で過去と現在、繁栄と陰の部分が合体する。

「まあだだよ」

 内田百閒原作。戦中から戦後にかけての内田自身と教え子たちの交流を描いている。それぞれの時代のあり方もさりげなく語られる。肩の力の抜けた秀作。黒澤のこの種の映画も実にいい。いや、私はスケールの大きな娯楽大作よりもこのタイプのもののほうが好きだ。封切時は私の人生の中で最も忙しかった時期なので、見ることができなかったが、かえすがえすも残念。

 松村達達雄の演技が圧倒的。下手な役者がやるとまったく面白くなくなるところを、実に面白可笑しく語ってくれる。井川比佐志も所ジョージも実にいい。

 ただ、実は私は大の猫嫌いなので、ノラのエピソードは付いていけなかった。私が最高に面白いと思ったのは、「まあだかい」(摩阿陀会)の集合場面。集団を戯画的に、しかも手際よく演出している。北海道から鹿児島までの駅名を言い続ける会員がとくにおもしろい。

|

« びわ湖のラ・フォル・ジュルネ2日目 | トップページ | 東日本大震災復興支援スペシャルコンサート »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

>猛烈に忙しいころの封切だったので、今回、初めて見た。素晴らしい映画だと思った。最高傑作の一つだと思う。

「乱」は日本では公開当時から賛否両論(というより批判の方が多かった)でしたが、海外では非常に評価が高いですね。
ウディ・アレンの映画でも・・・確か「夫たち妻たち」だったかな、アレン扮する男が「乱」の上映されてる映画館から出てきて絶賛するシーンがありました。
そういえば井川比佐志のやった鉄という武将は黒澤の最初のイメージでは高倉健だったそうですね。
井川はいい役者ですがスターでないしあまり強そうでも無いのであの役にはイマイチでした。
鉄が高倉健だったらハードボイルドで無類にかっこいい武将に見えたでしょうね。最後の楓の方を一閃斬り殺すところなどさぞやド迫力だったでしょう(しかも健さんが女を殺すなんて!)。
その他の配役は本当に素晴らしいのですがそれだけが残念です。

それはともかく、ついに黒澤映画全作制覇されましたね。
先生は執筆活動もあり学校の授業もあり、足しげくコンサートにも通われているのに、なおかつ映画を見るエネルギーはすごいですね。

ついでなので黒澤の脚本作品等もご覧になってはいかがでしょう?
黒澤を演出家としてより脚本家としての才能を評価する批評家もいますね。
三船敏郎と伊福部昭の映画デビュー作の「銀嶺の果て」とか「ジャコ満と鉄」「荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻」「殺陣師段平」などはなかなか佳作だと思います。

投稿: k | 2011年5月 2日 (月) 16時59分

k様
コメント、ありがとうございます。
「乱」の評判がよくないとは思いもよりませんでした。
井川さんは好きな役者ですし、高倉健のイメージを考えずに見ると、まったく違和感がありませんでした。
脚本にも関心がありますが、黒澤を特に研究しようというわけではありませんので、映画を見るだけにしようと思います。
ただ、実はまだ「夢」を見ていませんので、制覇とは言えずにいます。時間を見つけたら、「夢」を見ることにして、その後は名画についてはちょっと休憩しようと思います。おっしゃるとおり、映画を見ると、仕事の時間が圧迫されてしまいます。おかげで仕事を少しサボり気味です。気合を入れて、原稿を書かなければいけません。

投稿: 樋口裕一 | 2011年5月 3日 (火) 08時29分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/51551980

この記事へのトラックバック一覧です: ちょっと音楽以外の話を・・・。探偵ナイトスクープと黒澤映画。:

« びわ湖のラ・フォル・ジュルネ2日目 | トップページ | 東日本大震災復興支援スペシャルコンサート »