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マイケル・コリンズの高貴なクラリネット

 5月26日、武蔵野市民文化会館でマイケル・コリンズと橋本杏奈のクラリネット・デュオを聴いた。ピアノ伴奏は高木美来。クラリネットのテクニックに驚嘆。橋本杏奈は20代前半の小柄な女性。コリンズの弟子ということで、今回、日本でお披露目したという形なのだろう。見事なお披露目だった。

 前半はメンデルスゾーンの演奏会用小品第1番と第2番を中心にしたプログラム。メンデルスゾーンは素晴らしい。小曲だが、歌の心があり、しっかりした論理の裏付けもある。ロマンに流されずに足が地についている。それを二人のクラリネットが実に美しく、豊かに演奏してくれた。

 そのほかにプーランクの2本のクラリネットのためのソナタ。橋本杏奈のクラリネットとピアノでヴィドールの「序奏とロンド」、クライスラーの「中国の太鼓」も演奏された。「中国の太鼓」は、クラリネットで演奏すると、動物のいななきのように聞こえて、ちょっと合わないと思った。が、橋本の技術も見事。

 後半は超絶技巧の曲を並べて爽快。バッシ作曲のベッリーニの「夢遊病の女」をクラリネット2台に編曲したものやポンキエッリの「イル・コンヴェーニョ」など、2台のクラリネットがピタリをあって、実に気持ちがいい。

 もちろん、私はクラリネットのどんな演奏が難しいのかまったくわからないが、ともあれ、凄い速さで音が上下し、指と息がぴったり合っているので、これは大変なテクニックなのだろう。

 橋本もいいが、やはりコリンズのクラリネットが圧倒的に素晴らしい。ミルトンの「カルメン幻想曲」をコリンズがソロで吹いたが、単に超絶技巧であるだけでなく、びしっと決まっている。ビゼーの「カルメン」のなじみのある曲を超絶技巧のクラリネットで演奏するのだが、このタイプの曲にありがちな下卑た雰囲気にまったくならない。

 まさしくベッリーニのオペラのアリアのように、凛として強く気品のある音。高貴な雰囲気さえ漂う。精神の清潔さを感じさせる。技術的には音程がよく、リズムが揺れないということなのだろう。楽しいだけでなく、心の底から感動した。

 コリンズのクラリネットは、ブラームスのクラリネット向きの暗い音ではなく、もっと明るくもっと透明。コリンズのこの曲を聴くと、橋本もなかなかいいとはいえ、まだまだ師匠のレベルには達していないと思ってしまう。

 ともあれ、満足。曲目の選択も含めて、素晴らしい演奏会だった。

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