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びわ湖のラ・フォル・ジュルネ2日目

 4月30日、びわ湖のラ・フォル・ジュルネの2日目。実に充実した一日だった。初日は、まだ十分にエンジンがかからない気がしないでもなかったが、二日目は最高レベルの演奏がいくつかあった。量が多いので、簡単な感想だけを記す。

・アンリ・ドマルケット(チェロ)、児玉桃(ピアノ)で、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第2番、シューベルト「アルペッジョーネ・ソナタ」

 素晴らしいと思った。二人の息がぴったり合っている。朝10時からのコンサートなので、コンディションつくりが難しいと思うのに、そんなことはまったく感じさせない。二人のスタイルはかなり似ているのかもしれない。きわめて知的なアプローチで、音が美しい。そこにベートーヴェンの力強さ、シューベルト特有の自由な精神が立ち昇ってくる。私は基本的にはチェロの音に強く反応する人間なのだが、児玉さんのピアノの音の美しさにしびれるところが何度かあった。

・ミシェル・ダルベルト(ピアノ)、シンフォニア・ヴァルソヴィア、ゲオルグ・チチナゼの指揮で、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

 これも素晴らしい演奏。ダルベルトに何度かミスタッチがあった(たぶん、別ヴァージョンということはないと思う)が、それをものともしないスケールの大きな、しかも細かいニュアンスまでもしっかりした演奏。第二楽章以降、深く感動。ダルベルトは押しも押されもしない現代最高のピアニストだと改めて思った。

 チチナゼの指揮も素晴らしかった。ケフェレックの伴奏をしたときとはまったく違って、スケール大きく演奏し、オケを完璧に掌握しているように見えた。こんなにソリストに寄り添ってしっかりとサポートできる指揮者は珍しい。オケもみごと。

・びわ湖ホール声楽アンサンブルを中心としてメンバー、宮崎剛のピアノ、本山秀毅指揮により、ベートーヴェンの「オリーブ山のキリスト」「フィデリオ」の合唱と「第九」の第四楽章。

 びわ湖ホールは声楽アンサンブルを持っているというのを初めて知った。まだ成長過程だと思うが、コルボが育てたローザンヌ声楽アンサンブルのようになる可能性が高いと思った。見事なアンサンブル。ただ、やはり合唱のメンバーがフィデリオや第九などソロを歌うのはちょっと難しい。ローザンヌでさえもそう思うことが多い。その点を除けば見事だと思った。

・日本センチュリー交響楽団、沼尻竜典の指揮で交響曲第6番「田園」

 沼尻さんの簡単な曲目解説が入った。笑いをとりながら、じつにうまく解説。この曲を聴きなれた私にも、新鮮な発見がいくつかあった。話のうまい演奏家はみんな関西出身。関西人パワーはすごい!

 沼尻さんの演奏も見事。表情のつけ方、音楽の構成など、指揮はこうするのだという見本のような指揮ぶり。大袈裟にならず、しっかりと形は保っているのに、音楽が豊かな表情を持ってくる。すごい指揮者だと思った。このオーケストラ、初めて聴いたが、とてもいい。

・トリオ・ヴァンダラーのベートーヴェンのピアノ三重奏曲第7番「大公」

 これまで何度かこのメンバーの演奏を聴いて、あまりおもしろくないと思ってきた。今回、再び聴いて、まったく同じ感覚を味わっているのを思い出した。どうもこのメンバー、私とは合わない。三人が力いっぱいに弾くタイプの演奏。光ばかり、表ばかりで、陰も裏もない。一本調子の感じがして、退屈してしまう。アンコールに第二番のピアノトリオのフィナーレが演奏されたが、これは悪くなかった。なにしろ、これは影なしにバンバンと弾くタイプの曲だから。

・オリヴィエ・シャルリエ(ヴァイオリン)、シンフォニア・ヴァルソヴィア、チチナゼの指揮でベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲

 実はこのヴァイオリニスト、初めて知った。日本でもしばしば演奏しており、日本にもファンが多いらしい。

 第一楽章は、あまり感心しなかった。演奏にちょっと引っかかるところがある感じで、あまり流麗ではない。かといって個性を主張するというほどでもない。が、どうやらそれは、まだ調子に乗っていなかったかららしい。第二楽章は、まるで天国的ともいえるような美しい調べ。怪奇映画に出てきそうな容貌の持ち主(シャルリエさん、ごめんなさい。私もよく容貌に関してひどいことを言われますので、仲間だと思って許してください)なのに、なんとリリシズムにあふれる精神を持っているのだろうかと思った。第三楽章は実にダイナミックで華麗。第一楽章さえもっと流麗だったら、大感激するところだった。

 チチナゼの指揮は見事。素晴らしい指揮者だと改めて思った。

・プラジャーク弦楽四重奏団でベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番と「大フーガ」

 素晴らしかった! きっと強い主張をしているのではなく、職人としてベートーヴェンを演奏しているだけなのだと思うが、ベートーヴェンのなまの精神がたち現れてくる。これこそが本物の演奏家なのだと思った。

 昨日、「スケールが小さい」というようなことを書いた。が、あれはホールが大きすぎたせいだ。小ホールで聴くと、実にぴったり。やはり弦楽四重奏は小ホールがいい。魂にじかにびんびんと響いてくる。

 実は私にとって「大フーガ」は謎の曲。深く感動しながらも、「わけがわからん!」と毎回思う。が、今回、プラジャークの演奏を聴きながら、わかった気がした! そうだったのか!と思った。もちろん、私なりのきわめてアマチュア的なわかり方ではあるが。あと数回、CDなどで確かめてみたいと思う。

・仲道郁代(ピアノ)、びわ湖ホール声楽アンサンブル、日本センチュリー交響楽団、三ツ橋敬子指揮でベートーヴェンの交響曲第5番「運命」と合唱幻想曲。

 新進の女性指揮者の演奏する「運命」ということで注目していた。三ツ橋敬子は素晴らしい指揮者だと思った。小さい身体なのに(あるいは、だからこそ?)、スケールの馬鹿でかいベートーヴェンを聞かせてくれた。大きな身振りで、大きなスケールの、表情たっぷり、ドラマたっぷりの音楽がなり続ける。それが実にはまっていて、鳴るべきときに音が鳴るので、気持ちがいい。まだそれほどこの曲を振りなれていないだろうに、完璧に曲体とオケ全体を掌握している様子。ただ、巨匠の指揮のときのような激しい感動は覚えなかったが、それでもベートーヴェンの世界を堪能した。オケのメンバーもすばらしい。しっかりと指揮に応えている。

 合唱幻想曲も素晴らしかった。ピアノの仲道さんもいいし、声楽アンサンブルも最高。この曲がこんなに楽しい曲だということを改めて感じた。

 帰り、島根在住の知人夫婦と京都の四条付近のフランス料理の店で食事をした。音楽談義などをして楽しい時間を過ごした。料理もおいしかった。深夜、二人と別れて、一人になったが、頭の中で合唱幻想曲の最後のメロディ(第九の第四楽章に似たメロディ)が鳴り続けていた。

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2011年ラ・フォル・ジュルネ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは!先生が音楽祭を楽しまれているのが伝わってきます♪読んでいてとても楽しいです〜明日の東京の支援コンサートは何をやるのかな?

公演が重なっていたのでとってませんでしたが、感想を読んで、東京LFJ5日:アンリ&ダルベルト・チェロソナタ2番の公演も聞きたい、捨て難いです。うーん迷いますねぇ

投稿: とぴか | 2011年5月 1日 (日) 15時28分

とぴか様
コメント、ありがとうございます。
私のブログをそのように読んでいただき、とてもうれしく思っています。私の感動と喜びが少しでも読んでいる方に伝わり、ご自分も聴いてみたいと思っていただけると、うれしく思います。また、私がけなした演奏についても、「樋口のけなしていた演奏を、一つ聞いてみるか」と思っていただけると、うれしいのです。
今日のプログラム、何でしょうね。楽しみです。きっと、最初はバッハの「アリア」だと思います。

投稿: 樋口裕一 | 2011年5月 2日 (月) 08時18分

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