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三枝成彰「最後の手紙」再演にまたも感動

 622日、サントリーホールで六本木男声合唱団倶楽部第10回定期演奏会、三枝成彰作曲「最後の手紙」を聴いてきた。これは昨年初演された曲だが、この作品に深くかかわった亡き眞木準氏の追悼の意味をこめて、命日にあたるこの日に再演されることになったようだ。オーケストラは大友直人指揮の東京交響楽団。

六本木男声合唱団倶楽部というのは、三枝さんが指導する各界で活躍するアマチュアの方のあつまる合唱団。私は昨年の日本初演を聴いて大いに感動し、一時期、本気にこの合唱団に入団しようと思って、練習に参加したが、実力の差を思い知らされて断念したのだった。

 昨年の初演の際も感動したが、今回はもっと感動した。三枝さんが作品に手を入れられて、いっそう作品の完成度が増したのではないかと思う。が、それ以上に、合唱団がますます練習を重ねて、昨年に比べて音程、切れともに飛躍的に精度が上がったことが、感動的な演奏になった原因だろうと思われる。昨年も、素人にしてはなかなかのものだと思ったのだったが、今回は、特に合唱に不満を覚えることもなく、ぐいぐいと作品に引き込まれた。作品の凄味と平和への祈りの心が伝わってきた。

 それにしても、素晴らしい作品だ。まず詩がいい。第二次世界大戦で死んだ世界各地の13人の最後の手紙を集めたものだが、どれも死を前にして本音で自分の心を語っている。そこに、魂をえぐるような音楽、そして愛する人を思う甘美な音楽が加わって詩の力をもっと強める。難解な現代音楽ではなく、わかりやすく、しかも音楽的に高度な三枝成彰の世界がたっぷりと展開される

昨年は、アメリカのシュンケルの詩につけられた絶望的な音楽、朝鮮のユン・トン=ジュの詩につけられた抒情のメロディに特に魅かれた。今回もその二曲にとりわけ涙が出そうになった。が、ほかにも、ポーランドのユダヤ人やソヴィエトの作家の詩につけた曲もよかった。そして、トルコの人の「戦争が終わったら、再婚して子どもを産んでください」という詩の後の悲嘆と諦観の入り混じった音楽も素晴らしかった。無実でありながら、戦犯として死刑判決を受け、日本の戦争責任を引き受けて死を受け入れる片山日出雄の詩と、それにつけられた音楽も感動的だ。そして、14曲目の最後の祈りの歌の美しさよ!!

 ただ、初演の時にも感じたことだが、私にはこの曲の悲嘆は辛すぎる。1時間半の間、ずっと悲嘆の音楽が演奏され、私の心は悲嘆でいっぱいになった。演奏会から電車に乗って自宅に帰っても、まだ私の中で悲嘆が鳴りやまない。

そして、そうでありながら、またこの曲を聴きたいと思い始めている。今回の演奏をそのまま録音したら、きっと合唱団のアラが目立つだろう。六本木男声合唱団倶楽部には申し訳ないが、プロの合唱団にお願いして録音してくれないだろうか。私の愛聴盤のひとつになるだろう。

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