イザベル・ファウストのバッハの無伴奏のリアルな音
7月30日、王子ホールでイザベル・ファウストのバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータを聴いた。ファウストは昼間と夜で全6曲を演奏したが、残念ながら、私は大学で教授会があったために昼間は抜けられず、夜の部のパルティータの3番とソナタの3番、そして最後にパルティータの2番だけを聴いた。
一言で言って素晴らしい演奏!!
初めは少しびっくりした。以前、このヴァイオリニストを聴いたイメージで、もっと気まじめに鋭く切れの良い音でびしびしと弾きまくるのではないかと思っていた。が、むしろ余裕をもった音。しかも、特にパルティータにはやや草書風のところがある。そのため、ほんの少し遊びのようなものが感じられて、実に心地よい。一つ一つの音の粒立ちが最高に美しく、完璧なリズムで刻まれるが、それが少しも堅苦しくない。
もちろん、これ見よがしにテクニックを示すわけではない。ドラマティックに盛り上げようともしない。こけおどしも一切なし。だが、リアルな音によって、そこにしっかりとバッハの世界が築かれていく。女性ヴァイオリニストにありがちな鬼気迫る余裕のない音楽でもない。もっと理性的でもっと客観的。まさしく本格的。
ソナタの演奏はパルティータに比べると、やや気まじめで暗さを強調しているように思えたが、それでも強烈に弾きまくるのではなく、音の積み重ねを大事にする。3つの曲のすべての終楽章がとりわけリアルだった。「シャコンヌ」は言葉をなくすほど。
大迫力で宇宙的なスケールの演奏ではない。無理やりスケールを大きくしようというのではなく、しっかりと組みたてている印象。だが、鳥肌が立つほどの音のリアルな現出が何箇所かあった。まるで、音そのものが生きているかのように感じられた。こんな感覚にとらわれることはめったにないが、久しぶりにそれを感じた。
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