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最高の一日! ウィーンフィル演奏会とネトレプコのイオランタ

最高の一日だった。ヤンソンスとネトレプコ!!

 まず午前11時から、祝祭大劇場で、ウィーンフィル演奏会。まり巣・ヤンソンス指揮。

一言で言ってすばらしいコンサートだった。 最初に「ペトルーシュカ」。最初の音で、ウィーンフィルの威力に改めてびっくり。音そのものに感動してしまう。ウィーンフィルの最強のメンバーが本気を出したときの実力たるや凄まじい。ひゃー、これがウィーンフィルか!!と改めて思った。一つ一つの音が最高度に洗練され、その重なりがえも言われぬぬ色彩を作り出す。そして、鮮烈でありながらも柔らかい音が充満。前から3列目で聴いたが、まさに美しい音の渦の中に入り込んだ感じ。

 指揮についても、私に理解できる範囲において、まったく申し分なし。要所要所できっちり決まり、潤いがあり、ドラマがある。何より高貴な音がする。ヤンソンスの「ペトルーシュカ」は2度目(コンセルトヘボウの来日公演で聴いた記憶がある)だが、こんないい曲だったのかと改めて思った。

 休憩後、ラン・ランが加わって、リストの協奏曲1番。リハーサルを見て思ったとおり、ヤンソンスとラン・ランの雰囲気があまりよろしくない感じ。音楽の質もかなり異なる。ラン・ランは、思い入れたっぷりにリズムを崩して弾こうとする。しかも、あまり品格がある音色とは言いがたい。ヤンソンスはロマンティックだが、ラン・ランのように思い入れたっぷりではないし、音楽にもっと品格がある。が、後半になって、急に二人の音楽が合ってきた。そのころから、アイコンタクトも盛んになり、最後は凄まじい盛り上がり。終わった後、ヤンソンスも満足げ。「若いの、なかなかやるじゃないか」と言う感じ。

 ラン・ランは私の好きなタイプのピアニストではないが、これを間近で聴くとやっぱり圧倒されてしまう。ラン・ランがアンコールを弾いたが、私の知らない曲。リストではなさそうな気がするが、何しろ私はピアノ曲に疎いので、よくわからない。

 その後、「ラ・ヴァルス」。これはまさしく最高の演奏だった。

 私は、この曲を、龍のような生命体が命を吹き込まれ、最初は形にならなかったものがうねっているうちにだんだんと形をなし、空を飛び、やがて空一杯を覆い尽くして、宇宙全体が一つの生命になる・・・というイメージを持っている。

が、今日のヤンソンスの演奏は、そのような演奏ではなかった。もう最初から生命体そのもののど真ん中に連れ込まれた感じとでも言おうか。徐々に形を成すのでなく、うねりと生命の中にどっぷり浸かったというか、自分がうねりそのものになったというか。しかも、それがウィーンフィル。私は前から3列目にいる。快感というか、しびれるというか。

 アンコールはなかった。これ以上、アンコールの必要はまったくなかった。

 そして、夜の8時半から、演奏会形式のストラヴィンスキー「ナイチンゲール」とチャイコフスキーの「イオランタ」。ともに、イヴォール・ボルトン指揮のモーツァルテウム管弦楽団。

先に「ナイチンゲール」。ナイチンゲールをユリア・ノヴィコヴァ、水夫はアントニオ・ポーリ、料理人がユリア・レージネヴァ(21歳なんだそうだ!!)。いずれも見事。ただ、昼間聞いたウィーンフィルに比べるとややや分が悪いとは思う。

が、オペラが終わってホテルに着いたのが夜中の12時少し前で、早く寝たいので、すっとばす。「イオランタ」を前にすると、すべてがかすんでしまう。

休憩後、「イオランタ」。凄いの一言。コンサート形式だが、途中から、まったく不足を感じない。ネトレプコの歌と仕草で十分にイメージが広がる。演出が邪魔しないだけ、音楽に集中できる。

ただ、赤と白のバラの花だけは指揮台の横にあった。何かと思っていたら、ドラマのクライマックスの、イオランタが盲目だと気づく場面に使われるバラだった。ほとんど演技はなく全員が黒服。ただし、ネトレプコだけ白いドレスで多少演技をする。相手がそれに対応するくらい。それで十分。それで大装置を作ったと同じだけの空想の世界が広がる。

最初のネトレプコのアリアはじっくりと情感がこもっている。そして強靭な声。まったく無理をしていないのにびんびんと響く。ピアニシモからフォルティシモまで、自然に声が伸びる。

ルネ王はジョン・レリエ。声量豊かなバス。すばらしかった。ロベールはアレクセイ・マルコフ。これもすばらしい。アリアの後で大拍手が起こった。このアリア、曲自体が主役のアリアを食ってしまうくらいすばらしいのだが、それを見事に歌ってのけた。ヴォドモン伯爵をピョートル・ベチャワ。高音もしっかりと伸びて、ピアニシモも完璧にコントロールしていた。現代の最高のテノールの一人であることがよくわかる。

イオランタが盲目に気づくときの、ネトレプコとベチャワの二重唱は圧巻。私は、たぶん、生まれた初めて、音楽が完全に終わる前に拍手した。周囲で大拍手が始まったときには、ぐっと我慢していたが、あまりに感動して、オケが終わるのを待ちきれなかった。

その後は、息を止めて音楽に聞き入るばかりだった。イオランタが目が見えることになった喜びを大勢で歌っているときも、ネトレプコの声がびんびんと響く。特に大声で歌っている様子ではないのに、聞えてくるのはネトレプコの声。しかも、ネトレプコがまるで、ピアニストが弾きながら指揮する感じで、ネトレプコが歌いながら全体を仕切っているかのよう。存在感があるといったレベルではなく、巨大な花というしかない。人気だけではない、美貌だけではない。まちがいなく、現代最高のソプラノだ。

終わった後は、もちろん大喝采。私が最初にザルツブルク浮きを考えた理由は、もちろんネトレプコがイオランタを歌うことだった。来た甲斐があった。メトロポリタンで来日しなかった分、少なくとも私は取り返すことができた。

眠くなったが、寝てしまうとこの感激が薄れそうで怖い。そんな思いをすることが、青年時代には良くあったが、今、久しぶりに感じている。

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