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ブロムシュテットとN響の素晴らしい「新世界」

 9月10日、NHKホールで、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮、NHK交響楽団の演奏を聴いてきた。前半は、竹澤恭子が加わって、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。後半、ドヴォルザークの「新世界から」。竹澤は、急遽、健康上の事情でキャンセルになったカヴァコスの代役。カヴァコスは聴いてことがないので、大いに期待していたのだったが、ちょっと残念。

 竹澤さんは、これまで何度か聴いて実力のほどはよく知っている。そして、間違いなく安定した実力を聴かせてくれた。が、あと一歩突き抜けたものを感じなかった。ブロムシュテットの指揮も、もちろんとてもよい音を出しているのだが、あくまでも「つけている」という印象をぬぐい切れなかった。ちょっと不完全燃焼気味。シベリウスはもっともっともりあがってほしい。

 後半の「新世界から」は、素晴らしい演奏。

 クリアな音で、リズムが実に決まっている。音楽の表情もみごと。一つ一つの音がしっかりと聞こえ、それぞれが実に生き生きとして、形はまったく崩れない。オーソドックスといえばオーソドックスで、何も変なことはしていないのだが、実に新鮮に聞こえる。細部まで神経が行き届いていて、音そのものが実にリアル。目の前で音楽が生きているという印象。これが80歳を超えた指揮者の音楽だとは信じられない。

N響の実力たるや、大したものだと思った。ブロムシュテットの指示に敏感に反応しているのがよくわかる。弦はもちろん、木管も金管も素晴らしい。金管楽器が素晴らしいと、日本のオケで感じたのは、もしかしたら初めてかもしれない。

ただ、素晴らしいと思い、何度も感動に震えたが、一昨年のチェコフィルと来日してこの曲を演奏したときほど感動しなかった気がする。あのときは、もっともっと感動したのを覚えている。第四楽章、もっと燃焼してほしかった。

もしかすると、ザルツブルク音楽祭であまりに凄い演奏を聴いてしまった後遺症かもしれない。それと、隣の席の男性が大きな身動きをする人で、しばしば手を大きく動かしたり、体をのけぞらせたりし、しかも時々指揮のまねごとをするために、集中できなかったせいもありそう。残念。もっと集中したかった。

とはいえ、素晴らしい演奏であることは間違いない。ブロムシュテットは凄い指揮者だとは、改めて思った。

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コメント

樋口さん

こんばんは。

ザルツブルクの後遺症は、私も当分直りそうにありません。

とりあえず、次はサントリーでN響のブルックナー7番。ブロムシュテットの十八番です!

投稿: ねこまる | 2011年9月12日 (月) 01時06分

久々にコメントをさせていただきます。ザルツブルクの様子や感想を、スケジュールの合間を縫って、又はお疲れのところ送って下さいまして、有難うございました。僕も樋口先生のおすすめ通り、ザルツブルク音楽祭には、いつか行ってみたいと思います。
さて、今回のN響定期は、僕も9/10の方に行きました。僕がN響を初めて聴いた時も『新世界』が演奏されました。1979年7月、大分の県立芸術会館にてです。初めてナマで聴くN響だったのでワクワクしながら臨みましたが、指揮者(名前を出すのは控えます)はアッサリ系がお好みの様で面白くない内容になり、ガッカリしながら帰りました。
N響でこの曲を聴いたのはそれ以来、実に32年ぶりです。ブロムシュテットの指揮も強烈な個性を全面に出すものではなくフツーではありますが、今回はN響の持ち味を引き出した味わい深い名演に感じられ、N響による『新世界』の、やっと本物に接した事に満足しました。しかし最後は静かに終わるのに、音が止んだ途端にすぐ拍手が起きたのには白けました。この曲がコードで賑やかに終わるのでなくコラールの様な余韻を残すのは、ドヴォルザークがボヘミアに帰れる日が来る事を神に祈っているからではないか?、ともとれますし、作曲者の才能を見出だしたブラームスの交響曲第3番がやはり静かに終わるので、そのオマージュも含まれているのではとも思われます。とにかく、みなさんせっかちにならず余韻も楽しんで欲しいですね。ただ、マナーの悪い人は随分減った様に感じます。完全にではありませんが。
今回僕は、シベリウスのソリストが竹澤恭子に変更されたので、急に行きたくなりました。竹澤さんの演奏は、今年のラ・フォル・ジュルネでブラームスのソナタを弾いた時初めて聴きました。ただ完璧な技術を誇るのではなく、音楽の内容そのものを大切にし、作曲者のメッセージを伝えようとする演奏に感動しました。竹澤さんの名前だけは昔から知っていただけに、今までこんな素晴らしいヴァイオリニストであるのを知らなかった事を恥ずかしく思いました。今回のシベリウスは、代役ソリストになったのはほんの少し前だったとか。あまり練習期間がなかったにも関わらず、やはり名演だったと思います。厚みのある響きがたっぷり楽しめ、豊かな精神性が感じられたのがよかったですね。しかし最初から竹澤さんが弾く事になっていれば、もっと素晴らしいものになっていたでしょう。ブロムシュテットの指揮は、やはり凄いと思わせるものではありませんが、第2楽章でのホルンの伴奏音を強調させたりした様に聞き取れた事から、シベリウスがベルリンで学んだ事により、ドイツ音楽の影響を受けた作曲家であるという事実を思い出させ、それなりに面白く思いました。

投稿: 崎田幸一 | 2011年9月12日 (月) 08時38分

ねこまる様
コメント、ありがとうございます。
ブルックナーの7番、私も楽しみにしております!

投稿: 樋口裕一 | 2011年9月13日 (火) 21時05分

崎田幸一様
私が聴いた日も、かなり早めの拍手が起こりました。どうして、もう少し音楽の余韻を味わおうとしないのか、理解に苦しみますね。
私が初めてオーケストラを聴いたのは、1960年代のはじめ、別府の国際観光会館でした。私は小学生か中学生でした。当時はまだ大分文化会館はありませんでした。今、国際観光会館なんて、なくなったでしょうね。
岩城宏之指揮で「悲愴」、そして堤剛が加わって、ドヴォコンでした。もっとも元気が有り余っていたころの岩城さんの指揮、若き堤さんのチェロは素晴らしいものでした。帰り、父のオートバイの後ろに乗りながら、感動にぼんやりしていたのを覚えています。(父は、コンサートは聴かず、どこかで時間をつぶしていました)
数年前、堤さんとお会いしたとき、その話をしたところ、別府でのコンサートのことをよく覚えておられました。
竹澤さんのシベリウス、もちろんよいのですが、まだ十分に完成されていないように思いました。竹澤さんでしたら、もっと感動的なシベリウスを演奏してくれると私は思うのです。

投稿: 樋口裕一 | 2011年9月13日 (火) 21時18分

お忙しい中、お返事を頂戴しまして有難うございました。別府の国際観光会館は、僕も何回か足を運んだ事がありますので、その名を伺うのは懐かしいですね。あの建物も、もうなくなってしまったでしょうか。アルゲリッチ音楽祭の最中に、また大分・別府を訪問したいとは思いますが、未だ実現出来ません。堤さんのドボコンは、去年のN響定期で聴きました。若い頃程完璧には弾けてはいませんが、やはり説得力の強い演奏でしたね。
堤さんにしても竹澤さんにしても、キャパシティの大きなNHKホールでの演奏という事も、マイナスに働いたかも知れません。ただ竹澤さんは、まだシベリウスのコンチェルトはレコーディングしていませんし、この曲のスタイルを確立していないかも知れませんね。そういえばこの曲は、昨秋に行われた、カリスマ性で人気のあるロシア人指揮者率いる海外メジャーオケの来日公演でも聴きました。その時のソリストは、美しい容姿と輝かしいコンクール歴を誇る日本人女性で、演奏は決して悪くはありませんでした。しかし、どうも真面目過ぎる印象が強く、全体的に硬い印象を受けました。もう少し、その美貌とモデル並のスタイルに相応しい艶っぽさや遊び心が欲しいですね。竹澤さんの方が、ずっと柔軟性に富んでいると思います。
先のコメントにも少し触れましたが、竹澤さんの名前だけはデビュー当初から知ってはいましたが、演奏を聴いたのは、実は今年のラ・フォル・ジュルネが初めてです。流石に米RCAが専属としていただけの、世界的な実力を持つプレイヤーと感心し、その深みのあるブラームスに感銘を受けました。この素晴らしいヴァイオリニストの存在を教えてくれたのはLFJですから、ルネ・マルタンさんにも、関係者である樋口先生にも感謝致します。
ちょっと補足するつもりが長文になりまして、すみませんでした。

投稿: 崎田幸一 | 2011年9月14日 (水) 06時49分

崎田幸一様
コメント、ありがとうございます。
そうでしたか、交際観光会館、ご存知でしたか。今となっては、ほとんど誰も知らない名前だと思っておりました。
私も、アルゲリッチ音楽祭にはぜひ行ってみたいと思っています。
私も竹澤さんにはずっと注目しています。昨年のラ・フォル・ジュルネでメンデルスゾーンのソナタを聞いて驚いたことがありました。ただ、今年のブラームスは、私はピアノ伴奏とうまく合っていなかったような印象を受けました。来年はロシア音楽ですが、プロコフィエフやショスタコのソナタをぜひ弾いてほしいですね。

投稿: 樋口裕一 | 2011年9月17日 (土) 09時11分

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