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プーランクとフォーレのCDのことなど

 金曜日、京都産業大学の集中講義を終えて東京に戻った。春学期の15回の講義を5日間で済ませてしまおうというのだから、かなり疲れる。とてもよい学生たちだったので、教えやすかったが、それでも、東京に戻ったときにはぐったり。

 京都にいる間、2度、贔屓の美濃吉(新阪急ホテル京都の地下)で夕食を取った。二度とも同じ「鴨川」という懐石膳。白みそ仕立てもいつもながら実においしい。秋刀魚の味噌柚庵焼きが絶品だった。これが絶品だったので、二度、そこに行き、同じものを食べたのだった。ここの料理のおかげで京都に来るのが楽しみだ。

 先日、このブログに書いたとおり、中丸三千繪の歌う三枝成彰作曲のモノオペラ「悲嘆」に圧倒されたものの、同時に上演されたプーランクの「人間の声」は少々不満だった。それをきっかけにして、プーランクを聞き返したい気持ちになった。新たに何枚かCDやBDを購入した。ついでに、フォーレなどのフランス音楽も聴いてみた。その感想を少し書いておく。

285  プーランク作曲『カルメル会修道女の対話』のバイエルン・シュターツオパーでの上演(BD)。指揮はケント・ナガノ、演出はチェルニャコフ。

修道女の姿ではなく、女性たちはみんな現代の平服。小さなカルト集団という感じ。女性たちはずっと小さなガラス張り(とはいえ、本当にガラスだったら声が通らないので、ほかの素材なのだろう)の小屋の中に閉じこもっている。小さな自分たちの宗教を必死に守ろうとしているが、現代から追い詰められていく。そのような様子がうまく描かれている。

最後、修道女たちはギロチンで死刑にされるのではなく、警察によって取り囲まれ、火に焼かれようとするが、ブランシュがそれを救い、自らは犠牲になってしまうという筋立て。このオペラを現代に舞台を移すとすれば、このように改変するしかないだろう。私には、これは十分に納得できる。

歌手はみんなよかった。とりわけ、リドワーヌ修道女を歌ったソイレ・イソコスキがやはり貫録を見せて圧倒的。ブランシュのスーザン・グリットンも存在感にあふれ、陽気なコンスタンスを歌ったエレーヌ・ギルメットも実にチャーミング。数人、フランス語の発音が変な人がいたが、全体的には発音も悪くない。

私が最も魅力を覚えたのはケント・ナガノの指揮。私が理想とする繊細でフランス的な演奏ではない。かなりダイナミックで切れがいい。演出のせいかもしれないが、マダム・ド・クロワシーの歌をドラマティックに描いていて、それはそれで非常に説得力があり、悲劇性が浮き彫りになる。

改めて、この曲は素晴らしい名オペラだと思った。

838 もう一枚は、メノッティ作曲のオペラ「電話」とプーランクのモノオペラ「人間の声」のDVD。ともに、ソプラノはキャロル・ファーレイ、「電話」ではテノールのラッセル・スミスが加わる。スコットランド室内管弦楽団、指揮はホセ・セレブリエ

メノッティの「電話」はかなりおもしろかった。喜劇調の30分ほどの作品で登場人物は二人きり。英語で歌われるが、十分にオペラ的に歌われる。ファーレイが実に魅力的。明るくてちょっとおっちょこちょいの女性を上手に描いている。

が、「人間の声」のほうは、ずっと違和感が去らなかった。フランス語を使っているが、フランス女性と立ち居振る舞いが違う気がする。発音もフランス人らしくない。そのため、おしゃれで孤独で見栄っ張りで、しかもかわいらしいフランス女性の姿が見えてこない。私は女性に共感できないままだった。指揮はまずまず。あまり素晴らしい演奏ではないと思った。

270_puranku プーランク室内楽全集のCD。これは実におもしろい。エマニュエル・パユのフルート、ポール・メイエのクラリネット、エリック・ルサージュのピアノによる。要するにフランスを代表する名手たちによる演奏だ。洒落ていて、時々ふまじめで、時々まじめ、そして、反時代的というプーランクの世界を満喫できる。ますますプーランクが好きになった。

374_fore フォーレ室内楽全集のCD。これは先ごろ発売になったばかりだが、これも素晴らしい。ルノーとゴーティエのキャプソン兄弟を中心にし、ミシェル・ダルベルト、ニコラ・アンゲリッシュのピアノ、エベーヌ弦楽四重奏団を加えた演奏だ。ルノー・キャプソンの繊細で透明な音、研ぎ澄まされており、しかもリリックな音楽性。本当に素晴らしい。私はこれまでジャン・ユボーが中心になって演奏しているCDを聞いてきたが、今回の新しい全集のほうにずっと魅力を感じた。しかも、私はこの5枚組CDを1500円で買った。何というお買い得! この演奏家たち、ラ・フォル・ジュルネでおなじみ。とりわけ、ナントのラ・フォル・ジュルネにはほとんど毎年のように出演している。改めて彼らの実力を実感することができた。

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