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三枝成彰のモノオペラ「悲嘆」は大傑作だと改めて思った

 中丸三千繪のソプラノ、奥田瑛二演出、Yuki MORIMOTO指揮、シアターオーケストラトーキョーの「ひと夜にふたつのモノオペラ」を見てきた。プーランクの「人間の声」と三枝成彰の「悲嘆」。

 ザルツブルク音楽祭から戻って最初のコンサートがこれだった。ザルツブルクの後だと、レベルの差を感じるのではないかと心配していたが、まったくそのようなことはなかった。

「人間の声」が50分くらい。中丸さんは大熱演。モノオペラだから、当然のことながら、中丸さんは一人で歌う。一晩で二つのモノオペラはいくらなんでも無理だろうと思った。三枝さんにもお会いして、少しだけお話ししたが、三枝さんも心配しておられた。

が、中丸さんの声の力にびっくり。「悲嘆」は90分ほどだった。間違いなく、ワーグナーの大楽劇を歌う以上に長く歌ったはず。それなのに、最後までびくともしない声量と輝き。

 もしかしたら、「人間の声」がなかったら、「悲嘆」はもっともっと素晴らしかったのかもしれないが、これだけ歌ってくれれば、最高!! この二つのモノオペラを並べるのはあまりに無謀と思ったが、いやいや、この二つを一緒に聴いたのは、実に意味があった。

「人間の声」については、実は、不満がないでもない。プーランクはもっと違うように演奏するほうがよいのではないかという、私なりの意見がある。もちろん、素人の意見には違いないが、あまり単調に盛り上げずにひたひたと悲しみが盛り上がるようにするほうがよいと思った。それに、中丸さんのフランス語、とてもきれいなのだが、フランス人のフランス語とはやはりちょっと違うような気がした。フランス語を美しく歌うのは難しい!!

 が、もちろん、これは私の個人的な趣味を押し付けているだけの話であって、見事な演奏だったことに間違いない。

 が、私が何よりも感動したのは、「悲嘆」だった。初演は短縮版だったとのことで、今回はノーカット版。確かに、覚えのない個所がいくつかあった。

 それにしても、なんと素晴らしいオペラだろう!!

 私は三枝ファンなのだが、この「悲嘆」が一番好きだ。「忠臣蔵」も「最後の手紙」もいいが、「悲嘆」は、もっともっと素晴らしい。聴くたびに興奮するくらい素晴らしい。

私は、プーランクの「人間の声」も大好きなのだが、「悲嘆」はこの「人間の声」に勝るとも劣らぬ作品だと思う。少なくとも今日は「悲嘆」のほうにずっと感動した。

歌もさることながら、オーケストラが素晴らしい。とりわけ、クラリネットが本当にいい。死んだ夫の声のように響く。ソプラノと一緒にクラリネットが鳴るところは、まるで夫婦の二重唱のようだ。小規模であるだけに、一つ一つの楽器がとてもきれいに響く。そして、楽器の絡み合いがとてもよくわかる。一つ一つの楽器のメロディがとても美しい。「現代音楽」にたてつきながら調性のある音楽を作り続けるには、これほどの技術と音楽性が必要なのだろう。

ウェスカーの台本も本当によくできている。心の襞が伝わってくる。奥田瑛二の演出もおもしろかった。セミステージ形式の中で、十分に分かりやすく、しかも感動的だった。

もっと大喝采が起こるのかと思ったら、意外と静かだった。感動して家に帰った。

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